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第109話 奴隷解放

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エマは地下へと降りて行くと金属の扉に鍵が掛かっている。
それをモーニングスターでぶっ叩く!!
『ふん!!』

がごぉぉぉぉーーん!!!

カラン・・・と鍵が破壊され転がる。

扉を開けると不衛生と分かる匂いが鼻を突く。
中には12人の反応がある。
すると中から女の子の悲痛な声が聞こえる。

『お姉ちゃん!!嫌よ!死んじゃ嫌ぁぁぁぁぁぁ!!!』

咄嗟にエマが声の元に走る!!
そこには鉄格子の向こうで姉の死体に縋って泣きじゃくる妹の姿だった。

『いけない!!』
エマはモーニングスターで鉄格子の鍵をフルスイングでぶっ叩く!鉄格子の扉が吹っ飛ぶ!!

女の子はびっくりして振り向くと銀色に光る女性が飛び込んで来る!!

『まだ逝かないでぇぇぇ!!【リザレクション】!!

女の子の身体が光に包まれる・・・・。

『戻って来てぇぇぇぇぇぇ!!!!』

祈る様に全力で魔力を注ぎ込む・・・。

すると真っ青だった顔色が生気を帯びてくる。
傷だらけだった身体が綺麗に治っていく。

すると、瞼が震え目が少しずつ開いた。

『わ、私は・・・い、生きてr・・・』
『お姉ちゃあんんんんんん!!!!』
目を開けた姉に妹が嬉しさの余りしがみつき泣きじゃくる。

エマは姉妹の健気な姿を見て目頭を熱くする。
『よかった・・・間に合った・・・本当によかった・・・』

気持ちを切り替えてエマは立ち上がる。
『2人共!皆んなでここを出るわよ!!』

姉妹はエマに振り向き涙を拭いて頷く。
エマは鉄格子を粉砕して皆を外へ出し地上へ出る。

するとジルバ達が跪いて待っていた。
『エマ様!この度の多大なる恩義!生涯忘れませぬ!!
是非!旅のお供に!!』

エマは突然の事でポカンとする。
『駄目よ!私は修行と師匠の理想を叶える為に旅をしているの!
それに、あんた達にはやってもらいたい事があるのよ!』

ジルバ達は目を輝かせる。
『はっ!何なりとお申し付けください!!』

『その前に!あなた達!ここに集まって!奴隷紋を消すわよ!』

助け出した子共達に手招きする。
皆、戸惑っていたがエマの所へ集まる。

エマはセシルの奴隷紋を必死で消したあの日から、もっと多くの人を助けたいとハヤトの背中を追う様に毎日【パーフェクトヒール】に磨きをかけていた。
今では1度に30人の奴隷紋を消す事が出来るまでに成長しているのだ。

『いくわよ!【パーフェクトヒール】!!』
子供達が優しい魔力に包まれる。
更に出力を上げて行く。
銀色に輝く女性司祭が子供達を光で包む光景はまるで女神のようだった。
ジルバ達は自然に教会で祈りを捧げる様に手を合わせその光景に見惚れるのであった。

『神だ・・・神が降臨された・・・俺達は神の御業を見ているんだ・・・』
ジルバはうわ言の様に呟く。

そして光が晴れると子供達の傷や疲労も消え去り奴隷紋も消えていた。

『身体が軽い!痛くない!凄い!!!
エマお姉ちゃん!!!』

子供達がエマに駆け寄りしがみつく!
『エマお姉ちゃん!ありがとう!助けてくれてありがとう!』

『もう駄目だと何度も何度も思ったのぉぉぉ!!!

『きっと、きっと、誰かが助けに来てくれるって、皆んなで信じてたのぉぉぉぉ!!!』

『あぁぁぁぁぁぁーーーーん!!!』

子供達がエマにしがみつき泣きじゃくっている。

魔人である男達も目頭を押さえて俯いていた。
『まさに神だ・・・神々しくて直視出来ない・・・』

子供達の頭を撫でながら
『さあ!お腹空いたでしょう?ご飯を食べに行きましょう!!
その後は服も買いに行くわよ!!』

子供達の目が輝きコクコクと首を縦に振る。

『ジルバ!ネルバが貯め込んでたお金を持ってきて!この子達の為に使うわ!!』

『はっ!かしこまりました!!お前達!行くぞ!!』

『『『はっ!!!』』』


エマが号令をかける!!
『さあ皆んな!お腹一杯食べなさい!!』
子供達は一斉に目の前の料理に襲いかかる!!

『おいひぃ!おいひぃよ!』
『う、うん!うぅぅ・・美味しいよぉぉぉ!!』

涙も鼻水も一緒になって必死で食べている姿に目頭が熱くなる。
『子供にこんな思いをさせるなんて・・・許せないわ・・・王様は何をしているの?!』

するとエマの気を逆撫でする言葉が聞こえてくる。
『おいおい!小汚いガキを連れてくるんじゃねーよ!!』
酔っ払いが近付いてくる。

子供たちの手が止まり固まる。

ジルバがいち早く立ち上がるがエマが手を出して制する。そして魔力を溢れさせて笑顔を作る。
『皆んな!大丈夫だから食べなさい。私はこの人と、お・は・な・ししてくるから・・』

『ジルバ、子供達を見てね。』
『か、かしこまりました。』

ジルバはエマの迫力に背筋に冷たい物が走った。そしてゆっくりと座る。

そしてエマは立ち上がり酔っ払いを見据えると酔っ払いは調子に乗る。
『お!いいねぇー!嬢ちゃんが相手をしてくれるのか?』

『えぇ、良いわよ。人気のない所へ行きましょうか・・・』

エマが歩き出すと男がニヤニヤしながらついて行き店を出て行った。

子供達が心配そうにジルバに聞く。
『ねぇ、ジルバさんエマお姉ちゃん大丈夫かな?』

ジルバは子共達に笑顔を作る。
『エマ様は大丈夫。この街の人間が全員掛かっても3秒持たない。
一緒に出て行った男がこの世から消滅するだけだ・・・』

すると外から声が聞こえてくる。

『ぎやぁぁぁぁぁ!!!!悪かった!!俺が悪かっt・・・ごぶぁぁぁぁぁ!!!た、助けt・・・ぐっばぁぁぁぁぁ!!!』

どがらがっしゃぁぁぁぁーーん!!

店で一部始終を見ていたお客が顔を見合わせる。
そしてエマが入り口から姿を現し、テーブルに着いた。

『お・は・な・ししたら分かってくれたわ!』
子供達に笑顔を作る。

店に居た全員が思う。
(決してそれはお話しではない!!!!)
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