【完結】それより俺は、もっとあなたとキスがしたい

佑々木(うさぎ)

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ep.04 それは次回の課題に

(1)

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 超高級ホテルも2回目になれば慣れると思っていたが、そんなことはなかった。
 やはり勝手がわからないし、部屋に入っても夜景に圧倒された。
 だが、それよりも今は他に気を取られている。

 今回は、前回とは違い、キングサイズのベッドが1つしかない。
 要するに、ダブルベッドのある部屋に、男二人で泊まるのだ。
 フロントのホテルスタッフは、眉一つ動かさずに対応してくれた。内心はどうであれ、それに救われる。
 それもこれも、美浜のせいだ。
 なぜ、前回と同じツインにしなかったのだろう。

 ちらりと横を見れば、入り口のウォークインクローゼットの中で、コートとジャケットを脱いでいる。
 こうして見ると、本当にいい男だ。

 ピンと伸びた背中に、上質のワイシャツがよく似合う。前回の経験から、そのシャツがネーム入りのオーダーメイドなのは知れた。このシャツのボタンを俺が外し、脱がせたのかと思うと、また違った感慨が湧く。
 俺の視線に気付いたようで、美浜は肩越しに振り返る。

「何か言いたいことでもあるのか?」

 言いたいことなら、山のようにある。
 だが、どれを言ったところで今更だ。

「別にありませんよ」

 俺はそう返して、同じようにコートとジャケットをハンガーにかけた。
 ウォークインクローゼットの向こうには、バスルームが見える。
 この間は、美浜だけあそこでシャワーを浴びていた。
 その視線に勘付いたのか、美浜はニヤリと笑う。

「一緒に入りたいのなら、湯を溜めるぞ」
「結構です」

 さっきのしおらしい態度はどこに行ったんだ。
 バーでは、こちらを気遣うような態度でいたくせに。
 あれが計算だったってことはないだろう。
 美浜は、俺がジャケットを脱ぐところをじっと眺めている。
 何か変なところがあるだろうか。
 まさか、クリーニングのタグがつけっぱなしだったとか?
 あまりに熱心に見つめられて、一瞬そんなことを思った。
 美浜は俺の方へと手を伸ばすと、胸元に手を当てる。

「君もジムに通っているのか?」
「いえ、そんなことはしていません」

 ジムに通う金なんてあるわけがない。

「それにしては、いい身体をしている」
「それは、どうも」

 面と向かって褒められて、そんな言葉しか出てこない。
 美浜は、少し考えるような表情を見せた後、いきなり俺のシャツのボタンを外しだした。驚いて固まっていると、吐息で笑う気配がする。
 そういえば、ホテルに来たのは、そういう目的だった。
 それなら、美浜が俺の服を脱がそうとしても問題はないはずで。
 だが、いつもあんな偉そうな態度を取っている男が、俺のシャツのボタンを外しているのはおかしな気分だ。
 長い指先を器用に動かして、美浜はボタンをすべて外し、俺のシャツをはだける。次いで、シャツの狭間から中に両手を入れて、胸元をまさぐってくる。

「手触りもいい。さすがに、若いだけはある」

 俺なんかよりも、よっぽど美浜の方が滑らかな肌をしている。
 だが、今はそれを言ってもどうしようもない。
 俺は黙って、好きなようにやらせていた。
 そうして、胸を撫で回していた手が、ふいに背中へと回る。感触を確かめるように素肌に触れられて、俺は思わず身をよじった。

「ここ、感じるのか?」
「違いますよ。くすぐったいんです」

 すると、美浜は笑みを深める。

「くすぐったいというのは、開発すれば感じるようになるということだ」
「そんなこと、聞いたことな──」

 そこで突然、唇が重なった。
 柔らかく弾力のある唇が押し当てられる。誘うように舌先で唇の狭間をなぞられて、俺も舌を出した。互いの舌を触れ合わせ、絡ませているうちに、身体が高ぶってくる。それでも、今はただキスを続けていたかった。
 それは、美浜も同じだったようで、背中を抱き寄せたままキスを続けている。

「ん……っふ……ぁ」
「は……んっ……ん」

 キスに夢中になり過ぎて、美浜が膝から崩れそうになったのに遅れて気付いた。身体を支えてやると、俺の背中にすがって尚もキスを続けている。薄目を開けて、俺はその表情を窺った。切なげに眉根を寄せ、目を閉じてキスに浸っている。こんな近距離で見ても、やっぱりきれいな顔だ。不意に顔の角度を変えられて、眼鏡が当たる。

「……っ痛」

 顎を引いて、眼鏡のフレームに触れると、気遣うように俺の目を覗き込んできた。

「大丈夫ですよ、怪我はしていない」

 すると、ホッとしたように息を吐き、俺の眼鏡に触る。そして、手前に引いて外すと、またキスを仕掛けてきた。
 こんなに長く熱いキスを人と交わしたのは初めてだ。
 まるで、前戯のようだと思ったところで、おかしくなる。
 間違いなく、これは前戯だ。俺はこれから、この人と抱き合うんだから。
 名残惜しく思いながらキスを解くと、美浜は濡れた唇を拭いもせずに俺を見つめた。瞬きも忘れたように、目の奥まで見通すように凝視する。
 何がそんなに気になるのだろうかと、こちらも見返した。

「本当に、いいのか?」
「あなたも疑り深い人ですね」

 俺はそう言って、音を立てて唇を啄んでから、腕を引いた。

「ほら、始めますよ」
「それでは、あまりにムードがない」

 ムードも何も、それこそ今更だ。
 そう言い返そうとしたところで、美浜は俺をベッドにトンと軽く突き飛ばした。
 受け身を取って倒れ込むと、俺に乗り上がってくる。

「今日は私が、サービスしてやる」
「いいですよ、そんなの」

 サービスと言われても、俺は前回サービスしたつもりはない。
 ただ、美浜に触りたくて、そうしただけだ。
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