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04:日に日に愛しく
それは、反則だと思う
しおりを挟む「わっ、やったなー!」
「姉ちゃん、こっちこっち!」
「きゃー!!」
「……なるほど」
カラフさんの牧場に行くと、いつも通り笑顔で出迎えてくださった。レオンハルト様を紹介したら少し驚いていたけど、なぜか泣きそうになって「良かった、良かった」と言われたわ。
今の今まで結構緊張していたレオンハルト様は、カラフさん一家を紹介すると肩の力が抜けたように見えた。やっぱり、新しい方に会う時は緊張するものね。わかるわ、その気持ち。
でね、今は子供たちと一緒に水浴びしてるところ! いつものように、スカートの裾を縛って足首まで川に浸かって……気持ち良い! 男の子は、上半身裸でバシャバシャしてるの。
最初はカラフさんのところのお子さん……メイくんとリーンちゃんと3人だったのだけど、今は近所の子も集まってきて6人になった。とても賑やかで楽しいわ。
「ステラ嬢、あまり濡れると風邪をひきますよ。それに、お足が見え……いえ、冷えますから、その……」
「今日はすぐ乾くわ、大丈夫!」
「でも……」
「ははは! ステラ様はああなったら止まりませんよ。いつも、こうしてうちの子と遊んでくださるのです。お金がなくて買ってやれないのを見て、子供にぬいぐるみの洋服を作ってくださったり……本当に、お優しい方です」
「はい、存じ上げております」
「良かったです、侯爵様が彼女を見つけてくださって。本当に……あの子は……」
「あ、そうだ! カラフさん、ドライフルーツの状態どうですか? レオンハルト様に召し上がっていただきたくって」
「はいはい、見てきますよ! ……では、何もないところですがごゆっくり」
「ありがとうございます。……ステラ嬢、私も混ぜてください」
あら? もしかして、カラフさんと何かお話していたのかしら? よく見ずに声をかけてしまったわ。大丈夫かな。
と思いきや、次の瞬間彼に目が釘付けになってしまう。
「!?」
「みなさん、お手柔らかに」
「え、あ……」
「兄ちゃん、筋肉すげー!」
「格好良い!」
「触る!」
「うちの父ちゃん腹が出てるのに、どうして兄ちゃんは出てないの?」
レオンハルト様は、着ていたワイシャツとTシャツを脱いでこちらにやってくる。綺麗に畳むあたり、彼らしいわ。……って、そうじゃなくて!
初めて見るそれに、心臓が口から出そうなほどびっくりしたわ。びっくりしすぎて、今の今までどうやって遊んでいたのかが思い出せない。
なのに、他の子たちはそんな彼に向かって近づき、身体をチョンチョンと突いたりぺたぺた触ったり……。自由すぎるわ。私には無理! というか、直視できない!! どこを見れば良いの!?
「軍人だから、毎日鍛えてるんだよ」
「軍人さん!?」
「えー、すごい!」
「僕、将来騎士団に入るのが夢!」
「いつでもお待ちしてます」
「わあ! 嬉しい!」
でも、とても楽しそうな声に、そちらを見ないという選択肢はない。私は、全身が沸騰しそうなほど熱くなるのを感じつつも、その光景に微笑んだ。
足だけでも、お水の中に入っていて良かった。本当は、全身に被りたいけど。
にしても、レオンハルト様は子供がお好きなのかしら?
私のお父様は、いつもお屋敷で「裏の領民どもの子がうるさい」と文句を言っていたな。今もそうなのかな。
私は、それが嫌だった。だって、子供には元気に外で遊んでいて欲しいもの。それって、自然なことでしょう?
「ふびゃっ!?」
「あはは、可愛い」
「もう、レオンハルト様ったら! お返し!」
「わっ、結構冷たいですね。でも、気持ち良い」
「僕らも!」
「えーい!」
ボーッと見ていたら、前から水飛沫が来た。レオンハルト様ってば、結構お茶目だわ。
でも、すぐに「可愛い」って言うのやめてほしい。しかも、そのお姿で言われたら心臓が……あ、ダメ。やっぱり、直視できない。
ああ、楽しいな。
いつも楽しいけど、こうして彼が加わるとさらに楽しいわ。
レオンハルト様。
私を見つけてくださり、ありがとうございます。終わったら、みんなでドライフルーツを召し上がりましょう。……出来れば、その時はお洋服を着ていただきたいわ。じゃないと、ちゃんと目を見て栞のプレゼントも渡せないし。
応援ありがとうございます!
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