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第二章 西の国の花の祭り編
やっぱり精霊なんだな
食事を終えた三人はしっかりと食後のドリンクまで堪能した。会計を済ませて店を出る際、初老の紳士がステラを呼び止めた。
「もしお時間あるようでしたら、フロレ・シェリという場所にいかれると良いですよ。元々遺跡だった場所が森になったところですが、今丁度花が見頃ですから」
「そうなのですか?」
「ええ、ええ。祭り用に切り取って来るような花ではないので、現地に行かねば見られない花でして。よろしければ」
「ご親切にありがとうございます。行ってみますね」
「ああでも市壁から離れた場所にあるのでモンスターたちが出てきてしまうかもしれません。始めに言っておくべきでしたな、申し訳ない」
言葉通り眉を下げ慌てて告げる紳士にステラも体の前で手を振った。
「そんな、謝らないでください。あとお気遣いありがとうございます。私たちはこれでも冒険者で、体の大きな彼はとびきり強いのでご心配には及ばないかと」
「なんと、そうでしたか。いやはや差し出がましい真似を」
「とんでもない。滞在中にまた来ますね、ごちそうさまでした」
ステラは軽く頭を下げてから店を後にした。外には先に出ていた二人が待っていて、出て来るのが遅れたステラを見て、リヴィウスに当然のように抱き上げられたてぷが首を傾げている。
『何かあったのか?』
「お店の方がおすすめの場所を教えてくれたんです。フロレ・シェリという森なんですが、行ってみませんか?」
「そこに何かあるのか?」
「丁度見頃の花があるそうです。花祭りには持って来るのが難しい花みたいで、ちょっと見てみたくないですか?」
ステラの問いにリヴィウスは黙った。それに首を傾げるとてぷが口を開く。
『リヴィは花がよく分かってないんだぞ』
「え?」
「おいトカゲ」
『ホントのことだぞ。だって反転世界に花なんてないし、リヴィもわざわざ花をどうこうって性格じゃないしな。コイツ基本的に色んな物に興味ないし!』
てぷの言葉にリヴィウスは反論せず、ただ少し居心地悪そうにステラから顔ごと背ける。ステラは別に怒っているわけでも悲しんでいるわけでもないのだが、リヴィウスは気まずくなるとすぐにこんな態度を取るのだ。
「そうですか。…ではとりあえず行ってみましょう」
「…おい」
「はいなんでしょうか?」
なんの迷いもなかったステラの行動にリヴィウスが驚いたように顔を元の位置に戻した。ルビーが困惑に揺れているのをみながらステラは次の言葉を待つ。
「…俺は花はわからないぞ」
やはり気まずそうに小さく告げられた言葉に緩く口角が上がる。
「はい、構いません。でも私は見たいのでお二人を連れて行きます。私のわがままに付き合ってください」
『ボクは最初から賛成だぞ! 自然は大好きだ!』
「…それでいいのか、お前たちは」
「もちろん。今回は無理矢理連れて行っちゃいますけど、嫌なら嫌って言っていいですからね? ノーと言えることも大切です」
『リヴィはノーばっかりじゃないか?』
「………そうでしょうか?」
『うん。やっぱりボクはリヴィも甘やかされてるって思うぞ』
リヴィウスとステラが同じような顔で眉間に皺を寄せるとてぷは笑った。
『ボクたちはこれでいいと思う。今が楽しいしボクは好きだ。ステラは違う?』
「……いえ、私も今がとても好きです」
心からの言葉だった。穏やかで優しくてひだまりのようなこの時間がステラはとても好きだ。
『ならそれでいいんだぞ。よし、森に行くぞー! あ、でも森に行く前に屋台にも寄りたいぞ! 不思議な飴を売ってるのをボクは見たんだ!』
てぷの見た目はどう見ても子供で、それは精霊の姿に戻ったとしても抱く印象は変わらない。けれどたまに、全てを見透かしたような深い紫の目で見てくることがある。別にそれは不快だとか恐怖だとかというものではなくただ純粋に“この方は精霊なのだ”と思い出させてくれるものだ。
深く、どこまで手を伸ばしても届かない空のような目で見つめられると己の悩みなど取るに足らないものなのかもしれないと思わせられる。それはそれでどうなのだと思わなくもないが、今実際ステラの心は軽くなった。
「…はい、行きましょう。リヴィも飴を食べますか?」
「……食う」
「はい。じゃあ三人分買いましょうね」
てぷを抱き上げたリヴィウスの隣に並び、二人は歩き出した。ただでさえ大きなリヴィウスに抱き上げられいるからかてぷの視線は高く、周りからの視線も貰う。けれど本人は高い視点が楽しいようできゃっきゃとやはり子供のようにはしゃいでいたのだった。
「もしお時間あるようでしたら、フロレ・シェリという場所にいかれると良いですよ。元々遺跡だった場所が森になったところですが、今丁度花が見頃ですから」
「そうなのですか?」
「ええ、ええ。祭り用に切り取って来るような花ではないので、現地に行かねば見られない花でして。よろしければ」
「ご親切にありがとうございます。行ってみますね」
「ああでも市壁から離れた場所にあるのでモンスターたちが出てきてしまうかもしれません。始めに言っておくべきでしたな、申し訳ない」
言葉通り眉を下げ慌てて告げる紳士にステラも体の前で手を振った。
「そんな、謝らないでください。あとお気遣いありがとうございます。私たちはこれでも冒険者で、体の大きな彼はとびきり強いのでご心配には及ばないかと」
「なんと、そうでしたか。いやはや差し出がましい真似を」
「とんでもない。滞在中にまた来ますね、ごちそうさまでした」
ステラは軽く頭を下げてから店を後にした。外には先に出ていた二人が待っていて、出て来るのが遅れたステラを見て、リヴィウスに当然のように抱き上げられたてぷが首を傾げている。
『何かあったのか?』
「お店の方がおすすめの場所を教えてくれたんです。フロレ・シェリという森なんですが、行ってみませんか?」
「そこに何かあるのか?」
「丁度見頃の花があるそうです。花祭りには持って来るのが難しい花みたいで、ちょっと見てみたくないですか?」
ステラの問いにリヴィウスは黙った。それに首を傾げるとてぷが口を開く。
『リヴィは花がよく分かってないんだぞ』
「え?」
「おいトカゲ」
『ホントのことだぞ。だって反転世界に花なんてないし、リヴィもわざわざ花をどうこうって性格じゃないしな。コイツ基本的に色んな物に興味ないし!』
てぷの言葉にリヴィウスは反論せず、ただ少し居心地悪そうにステラから顔ごと背ける。ステラは別に怒っているわけでも悲しんでいるわけでもないのだが、リヴィウスは気まずくなるとすぐにこんな態度を取るのだ。
「そうですか。…ではとりあえず行ってみましょう」
「…おい」
「はいなんでしょうか?」
なんの迷いもなかったステラの行動にリヴィウスが驚いたように顔を元の位置に戻した。ルビーが困惑に揺れているのをみながらステラは次の言葉を待つ。
「…俺は花はわからないぞ」
やはり気まずそうに小さく告げられた言葉に緩く口角が上がる。
「はい、構いません。でも私は見たいのでお二人を連れて行きます。私のわがままに付き合ってください」
『ボクは最初から賛成だぞ! 自然は大好きだ!』
「…それでいいのか、お前たちは」
「もちろん。今回は無理矢理連れて行っちゃいますけど、嫌なら嫌って言っていいですからね? ノーと言えることも大切です」
『リヴィはノーばっかりじゃないか?』
「………そうでしょうか?」
『うん。やっぱりボクはリヴィも甘やかされてるって思うぞ』
リヴィウスとステラが同じような顔で眉間に皺を寄せるとてぷは笑った。
『ボクたちはこれでいいと思う。今が楽しいしボクは好きだ。ステラは違う?』
「……いえ、私も今がとても好きです」
心からの言葉だった。穏やかで優しくてひだまりのようなこの時間がステラはとても好きだ。
『ならそれでいいんだぞ。よし、森に行くぞー! あ、でも森に行く前に屋台にも寄りたいぞ! 不思議な飴を売ってるのをボクは見たんだ!』
てぷの見た目はどう見ても子供で、それは精霊の姿に戻ったとしても抱く印象は変わらない。けれどたまに、全てを見透かしたような深い紫の目で見てくることがある。別にそれは不快だとか恐怖だとかというものではなくただ純粋に“この方は精霊なのだ”と思い出させてくれるものだ。
深く、どこまで手を伸ばしても届かない空のような目で見つめられると己の悩みなど取るに足らないものなのかもしれないと思わせられる。それはそれでどうなのだと思わなくもないが、今実際ステラの心は軽くなった。
「…はい、行きましょう。リヴィも飴を食べますか?」
「……食う」
「はい。じゃあ三人分買いましょうね」
てぷを抱き上げたリヴィウスの隣に並び、二人は歩き出した。ただでさえ大きなリヴィウスに抱き上げられいるからかてぷの視線は高く、周りからの視線も貰う。けれど本人は高い視点が楽しいようできゃっきゃとやはり子供のようにはしゃいでいたのだった。
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