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第一章 はじまり
破滅フラグなんて呼んでいません 1
しおりを挟むああ、こんな展開になるなんて聞いてないわ。
激しく落ち込んでいるとアニーが寄ってきた。
「お嬢様、お話がございます。……お嬢様?」
「は、はい! なんでしょう」
「実は洗濯担当のメイドからこのような物が服のポケットに入っていたと報告を受けたのですが」
アニーの手には小さい人形があった。
その人形に見覚えがある。
「あ、その人形」
それは孤児院にいたリリアという女の子がよく遊んでいたものだ。
リリアちゃんはその人形がないと上手く寝付けず、眠くなるとおもちゃ箱から引っ張り出して手に持っていたのだが。
なんでリリアちゃんのおもちゃが私の服に入っていたのだろう?
もしかして、別れ際のどさくさに紛れて服に入ってしまったのかしら。
この人形がないとリリアちゃんはヒステリーを起こすし、今頃リリアちゃんも修道女の皆も困っているんじゃないかしら。
「心当たりがおありですか」
「ええ。これは孤児院にいた子が大事にしていたおもちゃだわ」
「左様でございましたか」
うーん、何とか届けてあげたいな。
だけど、今日は家族が馬車を使っているから、行くなら徒歩か馬しかない。
徒歩で行くのは距離があるしなぁ。
うーん、ここは前世の乗馬体験を生かして馬を使ってみたらどうかしら。
丁度小言をいうお義母様もいないし、ちょっとだけならバレないよね?
「アニー、その人形を渡して。それと、服をもっと動きやすい簡素な物に着替えたいから手伝ってくれる? あと、これからの事はお義母様には黙っておいて欲しいの、お願い!」
「は、はぁ」
アニーは訳がわからないと言った様子でポカンとしていたが、私が食堂から出て行くと慌てて後を追ってきた。
アニーから出してもらった丈のやや短い町娘風の簡素な服に着替えた私は早足で馬小屋に向かうと、馬丁に馬を用意するよう頼んだ。
「よしよし、良い子ね。私を背に乗せてもらえるかしら?」
馬に向かって話しかけていると、アニーが動揺した様子で私に話しかけてきた。
「お、お嬢様? 一体何をされるおつもりですか」
「馬でネスメ女子修道院まで行って、人形を返しに行こうと思うの」
「ええ!? そ、そんなことしたら危ないですわ!」
「これくらい大丈夫よ」
左足を鐙にかけた時、背後から声がした。
「へぇ、イザベル嬢は乗馬が出来るのか」
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