女王の後宮

六菖十菊

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前触れ

007

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「侍女をつけられては?」

鏡花の座る長椅子から遠く離れた場所に黒雨の為の椅子を置いている。
警護人として立っていられるのは居た堪れないから鏡花からお願いした。
声を張り上げたわけでもないがそれでも声が届く。そんな距離。

「要らないわ」

「今までとは違うます。万が一の事があってはならない」

「要らない。彼女たちは私が泣き叫ぼうとも感知しないのだから」

最初は鏡花にも専任の侍女がいた。
お世話をされるのはストレスだったけれど断れるほどの力は鏡花にはない。
彼女たちは前王の選んだ侍女達だ、
王女の鏡花よりも位が上なのかと錯覚するくらい高圧的で怖かった。
この世界に来たばかりの時期に受けたあの生活はトラウマでしかない。
今は髪を結うときや清掃などをお願いしているが黒雨との時間に邪魔だと最低限に留めている。
女王の仮面を被れるようになった自分を褒めてあげたい。

「黒雨、貴方がいる。万が一なんてあり得ない。そうでしょう?」

言葉は高圧的だが瞳は懇願している。

「──必ず」
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