195 / 358
第九章 グンマー連合王国
第195話 父上と、兄上と――新年を言祝ぐ宴
しおりを挟む
――一月十五日。フリージア王国王都。
新年を言祝ぐ宴が王宮で開催された。
開催されたのだが……。
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
謁見の間では、乾杯のかけ声の代わりに、みんな『グンマー』と叫んでいる。
俺は広間の一段高い所に設えられた玉座に座り、頭を抱えた。
どうして、こうなった!?
*
話は、今日の朝までさかのぼる。
俺はアンジェロ領の主立ったメンバーを連れて、王都へ転移した。
新年を言祝ぐ宴は、王宮の一番大きい部屋『謁見の間』で催される。
フリージア王国中から貴族が参加する年始の重要イベントだ。
今年はメロビクス王大国を併呑した事もあり、アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵、フォーワ辺境伯、マカロン男爵、ブリーフィー伯爵らメロビクス人貴族も参加している。
俺、アルドギスル兄上、国王である父上は、謁見の間から少し離れた部屋で出番を待っていた。
アルドギスル兄上が俺の服装を見て、遠回しにツッコミを入れる。
「ねえ、アンジェロ。そのイカしたファッションは、誰のコーディネートかなあ?」
「アルドギスル兄上……。何も言わないでください……。みんなが、よってたかって……」
今日は、俺が国王と総長になる晴れの舞台だ。
それで……みんなが……、あれを着ろ、これを着ろと……。
アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵から贈られた立派な赤い服。
獣人三族から贈られた魔物の毛皮で出来たマント。
シメイ伯爵から贈られた先がクルリと曲がってとんがった金色のブーツ。
欧州貴族+蛮族+アラビアンナイト=今の俺……。
統一性の欠片もないファッションに仕上がってしまった。
もう、俺にどうしろと……。
これで人前に出るのかと思うと、正直、恥ずかしい。
「ププ……。みんなのプレゼントなのかな!? 愛されているね! 良かったね!」
「俺は、アルドギスル兄上の引き立て役ですよ……」
アルドギスル兄上は、長い髪を後ろになでつけ、青い服に青いマントだ。
青はフリージア王国の旗の色なので、合わせてきたな。
フォーマルかつシックに仕上がっている。
元がイケメンなだけに、小憎たらしい。
父上は椅子に座り、俺とアルドギスル兄上の様子を穏やかな笑顔で眺めている。
「アルドギスル、アンジェロ。こちらへ」
父上が俺とアルドギスル兄上を呼ぶ。
俺とアルドギスル兄上が、父上の座る椅子の前に立つと、父上は俺とアルドギスル兄上の手を取った。
「ありがとう……。二人とも、本当にありがとう……」
父上は目に涙を浮かべて、俺とアルドギスル兄上にありがとうと言った。
「父上……」
俺は父上の手を握り返した。
ここ数年の心労で痩せてしまったのだろう。
父上の手は、細く、女性のような手になっていた。
(父上は長くない……。こうして手をつなぐのは、最後かもしれない……)
俺は、漠然とそんなことを考えてしまった。
父上が、ゆっくりと絞り出すように話す。
「二人が争わなくて良かった……。本当に良かった……。あの世で父上や祖父に叱られずに済む……」
俺は父上をジッと見つめるだけで、どうして良いかわからず、何も言えなかった。
アルドギスル兄上が、落ち着いた声で父上に声をかける。
「父上。後の事は、このアルドギスルとアンジェロにお任せください。兄弟で力を合わせて、立派な国を作ってみせましょう」
「うむ……うむ……」
「まあ、主にアンジェロが頑張ると思うのですけどね! 僕はそれなりに!」
「アルドギスル兄上……。イイ感じにまとまっていたのが、台無しじゃないですか! アルドギスル兄上もしっかり頼みますよ!」
「ハッハー! ウチはヒューガルデンたちが、頑張るから大丈夫! 大丈夫!」
俺とアルドギスル兄上の掛け合いを見た父上が、笑い声を上げる。
部屋の雰囲気が明るくなった。
三人で笑い合っていると、部屋の扉が開き赤い服を着た侍従が入ってきた。
「準備が整いました! 謁見の間へお越しください!」
新年を言祝ぐ宴が王宮で開催された。
開催されたのだが……。
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
「グンマー!」
謁見の間では、乾杯のかけ声の代わりに、みんな『グンマー』と叫んでいる。
俺は広間の一段高い所に設えられた玉座に座り、頭を抱えた。
どうして、こうなった!?
*
話は、今日の朝までさかのぼる。
俺はアンジェロ領の主立ったメンバーを連れて、王都へ転移した。
新年を言祝ぐ宴は、王宮の一番大きい部屋『謁見の間』で催される。
フリージア王国中から貴族が参加する年始の重要イベントだ。
今年はメロビクス王大国を併呑した事もあり、アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵、フォーワ辺境伯、マカロン男爵、ブリーフィー伯爵らメロビクス人貴族も参加している。
俺、アルドギスル兄上、国王である父上は、謁見の間から少し離れた部屋で出番を待っていた。
アルドギスル兄上が俺の服装を見て、遠回しにツッコミを入れる。
「ねえ、アンジェロ。そのイカしたファッションは、誰のコーディネートかなあ?」
「アルドギスル兄上……。何も言わないでください……。みんなが、よってたかって……」
今日は、俺が国王と総長になる晴れの舞台だ。
それで……みんなが……、あれを着ろ、これを着ろと……。
アリーさんの祖父ギュイーズ侯爵から贈られた立派な赤い服。
獣人三族から贈られた魔物の毛皮で出来たマント。
シメイ伯爵から贈られた先がクルリと曲がってとんがった金色のブーツ。
欧州貴族+蛮族+アラビアンナイト=今の俺……。
統一性の欠片もないファッションに仕上がってしまった。
もう、俺にどうしろと……。
これで人前に出るのかと思うと、正直、恥ずかしい。
「ププ……。みんなのプレゼントなのかな!? 愛されているね! 良かったね!」
「俺は、アルドギスル兄上の引き立て役ですよ……」
アルドギスル兄上は、長い髪を後ろになでつけ、青い服に青いマントだ。
青はフリージア王国の旗の色なので、合わせてきたな。
フォーマルかつシックに仕上がっている。
元がイケメンなだけに、小憎たらしい。
父上は椅子に座り、俺とアルドギスル兄上の様子を穏やかな笑顔で眺めている。
「アルドギスル、アンジェロ。こちらへ」
父上が俺とアルドギスル兄上を呼ぶ。
俺とアルドギスル兄上が、父上の座る椅子の前に立つと、父上は俺とアルドギスル兄上の手を取った。
「ありがとう……。二人とも、本当にありがとう……」
父上は目に涙を浮かべて、俺とアルドギスル兄上にありがとうと言った。
「父上……」
俺は父上の手を握り返した。
ここ数年の心労で痩せてしまったのだろう。
父上の手は、細く、女性のような手になっていた。
(父上は長くない……。こうして手をつなぐのは、最後かもしれない……)
俺は、漠然とそんなことを考えてしまった。
父上が、ゆっくりと絞り出すように話す。
「二人が争わなくて良かった……。本当に良かった……。あの世で父上や祖父に叱られずに済む……」
俺は父上をジッと見つめるだけで、どうして良いかわからず、何も言えなかった。
アルドギスル兄上が、落ち着いた声で父上に声をかける。
「父上。後の事は、このアルドギスルとアンジェロにお任せください。兄弟で力を合わせて、立派な国を作ってみせましょう」
「うむ……うむ……」
「まあ、主にアンジェロが頑張ると思うのですけどね! 僕はそれなりに!」
「アルドギスル兄上……。イイ感じにまとまっていたのが、台無しじゃないですか! アルドギスル兄上もしっかり頼みますよ!」
「ハッハー! ウチはヒューガルデンたちが、頑張るから大丈夫! 大丈夫!」
俺とアルドギスル兄上の掛け合いを見た父上が、笑い声を上げる。
部屋の雰囲気が明るくなった。
三人で笑い合っていると、部屋の扉が開き赤い服を着た侍従が入ってきた。
「準備が整いました! 謁見の間へお越しください!」
23
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる