追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平

文字の大きさ
196 / 358
第九章 グンマー連合王国

第196話 脳内ピンク色の兄上――新年を言祝ぐ宴

しおりを挟む
 ――謁見の間。

 謁見の間の扉が開くと、沢山の貴族がこちらを見ていた。
 父上を先頭に、俺とアルドギスル兄上が少し下がって左右を固め、正面の玉座のある壇へ向かって進む。

 俺たちが一歩進むごとに、貴族たちが道を空ける。
 波紋が伝わるように、人混みが割れた。

 隣を歩くアルドギスル兄上をチラリとみると、のほほんとして緊張感は微塵も無い。
 それどころか、小声で話しかけてきた。

「アンジェロ。結局、練習をできなかったね」

「ええ、アルドギスル兄上。ぶっつけ本番です。お互いフォローしあうようにしましょう」

「そうだね! そうしよう!」

 これから父上の退位が行われる。
 そして、俺とアルドギスル兄上の戴冠が行われるのだ。

 だが、俺もアルドギスル兄上も忙しく、じいやヒューガルデン伯爵ら家臣も忙しい。
 王都へ移動してリハーサルを行う時間は、まったく取れなかった。

(普通、戴冠式とか重要イベントは、念入りに準備して行うモノじゃないのかなあ……)

 などと思うが、国として政務を滞らせるわけにも行かない。
 特に旧メロビクス王大国エリアは、戦争で勝って得た新領土だ。
 うかうかしていたら反乱の可能性もある。

 権力の空白を、時勢は待ってくれないのだ。

 俺がこんなコントをやるような――ベンジャミン伊東と言われそうな恰好であっても、時勢は待ってくれないのだ!

 謁見の間の一番奥、壇の上にある玉座に父上が座った。
 俺とアルドギスル兄上は、まだ戴冠前の王子なので、段の下に控える。

 謁見の間には、貴族家当主はもちろんだが、夫人や子弟を伴って出席している貴族も多い。
 老若男女沢山の貴族が詰めかけている。

 俺の立つ左側には、シメイ伯爵たちアンジェロ派の貴族が多い。
 ルーナ先生、黒丸師匠、ホレックのおっちゃん、白狼族のサラたち獣人三族もいる。

 サラがVサインをしてみせた。
 俺は少し笑みを返した。

 母上はサラとすっかり仲良くなっており、サラの隣で穏やかな笑顔を見せていた。

 右側には、アルドギスル兄上派閥の貴族たちがグループをつくる。
 そして、会場の後ろの方にメロビクス人貴族のギュイーズ侯爵、フォーワ辺境伯、ブリーフィー伯爵、マカロン男爵らがいる。

 アリーさんは、ギュイーズ侯爵の側にいる。
 今日、俺との婚約発表を行われるので、清楚なドレス姿で、すっかり綺麗なお姉さんだ。

(俺の婚約発表は、三人同時だよな……)

 そう考えると、居心地の悪さを感じる。
 異世界の王族に転生したけれど、小市民的な感覚はいまだに抜けない。

 美人三人と同時に婚約とか許されるのかね?

『リア充死ね!』

 とか、罵倒されそう。

 会場には、外国の大使や有力な大店商人も招待されている。
 今年は、参加希望者が殺到したそうだ。
 昨年よりも人数が多い。

 これだけ沢山の人々から視線を浴びると、さすがに緊張をしてしまう。

(さっさと初めて、さっさと終わってくれ!)

 などと考えていたら、侍従長が進み出た。

「それでは、これより新年を言祝ぐ宴を開催いたします!」

 会場から盛大な拍手が湧き上がる。
 会場の雰囲気が明るいのは、戦争に勝った後だからだろう。
 参加者の表情も明るい。

 地域大国であるメロビクス王大国からケンカを吹っかけられ、戦った後も和平も結べず、再度戦争になったのだ。
 国境近くに領地を持つ貴族たちは、生きた心地がしない一年だっただろう。

 最初にヒューガルデン伯爵が進み出て、国王退位を告げた。

「国王レッドボット三世陛下は、ご体調不良により、本日退位されます」

 ヒューガルデン伯爵が、父上の退位を告げると、会場から驚きの声が上がった。

「えっ!?」
「そんな、急に!?」
「陛下は、いかがされた!?」

 だが、驚いているのは、派閥に属していない貴族や派閥でも末端の貴族だ。
 フリージア王国貴族の半分は、既に知っているので動揺していない。

 俺もアルドギスル兄上も、自派閥の主立った貴族たちには、直接会って事前に根回しを済ませてある。

 そして、俺やアルドギスル兄上が話したことは、派閥の主立った貴族から他の貴族へと伝わっていく。

 だが、電話もネットもないこの異世界だ。
 全ての貴族に話が伝わるわけじゃない。
 いわゆる田舎男爵や泡沫騎士爵には、話が伝わっていないのだろう。
 スマンな。

 続いて、今後の統治体制について、じいが説明を行った。

 占領地域も含めて、四つの王国に再編成し、一つの連合王国とする。
 俺とアルドギスル兄上が国王となり、メロビクス貴族のギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯が代官として現地で政務を執り行う。

 会場後ろのギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯に視線が集中する。
 無理もない。
 二人は国王の代官、担当する地域の中では、王に次ぐ大きな権力を持つのだ。
 特に商人たちの目の色が変わっている。

 もちろん、ギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯には、事前に話をして同意を得ているので、二人が動じることはない。
 堂々と会場の視線を受け止めている。

 さすが大物貴族だ。
 頼りにしているぞ。

 アルドギスル兄上が、小声で話しかけてきた。
 今度は真顔だ。

「アンジェロ。外国大使たちを見てご覧よ」

 アルドギスル兄上に言われ、外国大使たちに視線を移す。
 なるほど……アルドギスル兄上が真顔になるのもうなずける。

 大使たちは、いかにも計算高そうな人たちばかりだ。
 笑顔の下で何を考えているのやら。

 メロビクス王大国よりも大きな地域大国の出現に警戒をし、和を結ぶか、敵対するか、したたかに計算しているのだろう。

「色々考えているのでしょうね。油断できません」

「そうだね……。きっと『我が国の姫を、アンジェロ陛下の妃に!』とか言ってくるよ。アンジェロは、ハーレムをどれくらいの規模にするの?」

「そっちの話ですか……」

 なんだよ!
 アルドギスル兄上が真顔だから、てっきり外交の話かと思った!
 そしたら、ハーレム話か!

「僕の所は、何人くらいにしようかな……」

「アルドギスル兄上……。そんな真顔でする話ではありませんよ」

「いや、だってさ、こういう場でしょ? 真顔を崩したらダメでしょ?」

 と言いつつ、アルドギスル兄上は右手をアゴにあてた。

 これ、他の人が見たら、国の将来を真剣に考える真面目な王子に見えるだろうな。
 本当は、脳内ピンク色なのに!

「俺は婚約者が、もう、三人おりますので……。そっちの方は、アルドギスル兄上にお任せしますよ」

「よりどりみどりだね!」

 アルドギスル兄上は、顔色一つ変えずに喜んでみせた。

 少し離れた場所に立つヒューガルデン伯爵が、ニッコリ笑顔でアルドギスル兄上をにらんでいたのは黙っておこう。
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...