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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。

究極の美

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「うぅ、ニクス、嫌い、嫌い、嫌い……。何であんなに撫でるのぉ。縛っておいておけばいいのに……」

「そんなことできないよ。僕はルパを少しでも苦しまないように直してあげたかったんだ。ルパが苦しんでいるところなんて僕は見たくないんだよ」

「うぅ……」

 ルパは泣き出し、僕にくっ付いてくる。ルパはまだ子供なのだ。あと一年で大人の仲間入りだが、精神が安定しておらず、子供のように行動してしまうのだ。きっとそれが鬱憤を晴らせない原因になっているのだろう。

「よしよし。夜食も得たし、宿に戻ろうか。いっぱい動いたから疲れちゃったよね」

「うん……。行く……」

 僕はルパを抱き上げ、宿のある街中にまで戻る。宿に戻り、店主に大きな桶にお湯を入れてもらい、銀貨一枚で購入した。乾いた布を貰い、桶を持って部屋まで戻る。

「さてと、お湯を買ったから体を拭こうか。煙臭し、汗も掻いたでしょ」

「わかった」

 ルパは服を脱ぎ、全裸になる。そのまま背中を僕に向け、座った。

 僕は乾いた布をお湯につけ、硬く絞った。ルパの顔をさっと拭いたあと髪を拭く。髪をくしゃくしゃと掻き、汗や皮脂を拭き取る。汚れた布をお湯につけ、綺麗に洗ったあと体を拭いていく。

 背中、腕、脇、前側の汚れを取っていく。ルパが触られたくない部分は自分自身で洗っていた。

 僕も全裸になり、体を拭いていく。背中だけは拭きにくいのでルパに洗ってもらった。背中を洗ってもらうのは家族以外だとルパだけだ。僕とルパは体を綺麗にしたあとの残り湯で煙臭い服を洗い、しっかりと搾ってから服掛けに通し、風通しのいい窓際に掛けておく。革袋から新しい下着を取り出して着る。下着と内着だけを着て一つのベッドにルパは飛び込んだ。

「ふぅ……。やっとすっきりした……。もう、ニクスの拭き方が毎回、体がぞわぞわして仕方ないんだけど、もっと普通に拭いてよ」

「普通に拭いているつもりなんだけど……。ルパが嫌な思いをしてるのなら謝るよ。ごめん」

「べ、別に嫌ってわけじゃないからいいんだけど……。変な声が出ちゃいそうだから、我慢してるの」

「そうなんだ。って、ルパ。髪が濡れたままだと朝がボサボサになるよ。しっかりと乾かしてからじゃないと枕に寝ころんだらいけないよ」

「え~。もう、起き上がれないぃ~。プルス~、乾かして~」

 ルパは手足をばたつかせ、起き上がるのも面倒といった声を出す。

「はぁ……。プルス、ルパの髪についている余分な水分だけ乾かして」

「了解です」

 プルスはチョコチョコと跳ね、ルパの髪の近くによると炎を噴き、水に濡れた髪を乾かした。

「はぁ~、もっとすっきりした。ニクス、早く寝よ~」

「まだ駄目だよ。歯を磨いてないでしょ。歯を磨かないと歯が悪くなってしまうんだ。磨かないのと磨くのでは雲泥の差だよ。ルパはまだ美味しいものを食べたいでしょ」

「うぅ~。もう、磨けばいいんでしょ。わかったよ、磨くよ」

 ルパは起き上がり、革袋に入っていたお手製の歯ブラシを手に取り、備え付けの水につけ、シャカシャカと歯を磨いていく。ルパが適当に歯を磨くので見ていられず、磨き終わった素振りを見せたあと、ルパのもとに近づいて行った。

「ルパ、僕がもう一度磨くよ。もう少し丁寧に磨かないと汚れが残っているままになっちゃう。口は食べ物が通るんだから、清潔にしておかないと」

「むぅ……。私も頑張って磨いたのにぃ……」

「磨いた行為自体は偉いよ。あともう少しだけ丁寧に行えばもっと偉い。せめて歯の側面と上面下面二回ずつ磨いてほしいけど、面倒なら一回でもいい。出来るだけ丁寧にね」

「面倒……。奴隷商にいた時、歯なんて磨かなかったのに……」

「僕の知り合いが教えてくれたんだよ。歯は磨いておいた方がいいって。それだけで清潔感が違うんだ。清潔感があった方が料理も美味しく感じるんだって」

「へぇ……。なら、磨くしかないか……」

 僕はルパの歯ブラシを受け取り、ルパの歯を磨いていった。

 僕の肩を食いちぎった歯はとても綺麗に並び、全く乱れていない。

 ここまで歯並びがいいのも珍しいが、僕も同じくらい歯並びが良いので、似た者同士だ。

 シャカシャカと磨き、満遍なく綺麗にしたあと、備え付けの水を口に含み、桶に吐き出す。食べかすなどが取れ、ルパも驚いていた。

 僕たちは歯を磨き終わり、ベッドに寝転がる。寝る準備がとうとう整った。汚れた水は出ていくときに回収してくれるそうだ。

 僕がベッドに寝転がると、素肌が多いルパが寄ってくる。寝間着は持って来ていないので僕とルパは下着同士。全裸を見せ合える仲なのだからどおってことはない。だがまぁ、全裸の時には堂々と見れなかったお尻を、下着を履いていれば堂々と見れるという点に関してはとても嬉しい……。

「むぅ……。ニクス、またお尻見てる~。ほんと何がいいのかわけわかんない」

「なんて言うのかな。曲線が美しいんだよね。あと、張りのある艶やかな肌にもっちりとした重量感、青いショーツに彩られ、ふっくらとした太ももに繋がる線。うん……、綺麗だ」

「ふ、不愉快が過ぎる……。人間はそんなこと普通言わないよ。奴隷商にいた時、男はだいたい可愛いか、抱かせろとしか言わないって。ニクスの感性、どうなってるの?」

「僕は芸術的なものが好きなんだよ。石とか、体とか、景色とか。僕が石を磨いているのはその美しさに魅入られたから。ルパの体もそれと同じでもう、言葉に表せないほど美しいんだよ。触れてはいけない神秘的な造形。人の体には全く同じというわけじゃない。ルパのお尻は僕の理想の美の極限値なんだよ」

「うぅ……、よくわかんない……」

「簡単に言えばルパのお尻はとんでもなくエロいってこと」

「た、ただの変態じゃん!」

「だから、簡単に行ったらそう言う反応になっちゃうでしょ。僕はルパを性的な眼で見ている訳じゃなくて、ルパという美しい絵画を見ているような感じなんだよ。今日、ルパも外の景色をみて綺麗だな~って思ったでしょ。それと同じだよ」

「そ、そう言うことか……。なるほど。じゃ、じゃあ。私がニクスの体を見てしまうのも綺麗な景色を眺めているのと同じ感じなのか……。でも、ニクスの体の方が景色より惹かれる……気がする」

「そうなんだ。まぁ、性別が違うからね。そう思うのも無理はないかも。一応言っておくけど、ルパは凄く可愛いよ」

「むぅ……、遅い……。今更言われても嬉しくないし。気持ち悪いだけだから言わなくていい。可愛いって言っていればひょいひょいと寄っていく雌じゃないんだから」
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