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新年になり、心が入れ替わる。暖かくなったら、旅に行こう。
たまには徹夜するのも悪くない
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「ルパ、骨を別の方向に投げるんだ!」
「や、やだぁ! この骨は私のだもん! こんな奴らにあげたくない!」
「そんなことを言っていたら、食べられちゃうよ。骨ならいっぱいあるでしょ」
「この骨が良い! ニクスの投げてくれたこの骨じゃないといや~!」
「たく……。仕方ないな」
僕はヌータウロスの凍っている肉を掴み、ルパのいる方向に投げる。
ルパの周りにいたグラクタの群れは僕の投げた肉の方に向かい、ルパの周りからいなくなる。ルパの持っている骨よりも僕の投げた肉の方が美味しそうだったのか、どんどん移動していった。
その間にルパは骨を咥えながら僕の方向に走ってくる。僕の体に抱き着き、ぷるぷると震えていた。先ほどは勇ましく戦っていたのに、今ではおびえる子供そのもの。ルパの中でヌータウロスとグラクタで何が違うのだろうか。大きさで言えばヌータウロスの方が大きいのに……。
「ルパ、なんで戦わなかったの?」
「食べ過ぎて動けなかった……。お腹が重くて走っても追いつかれると思ったの」
「食べ物の食べ過ぎって……。そんなんで死んでいたらどうするの……。あのまま食べられちゃっていたかもしれないんだよ」
「そ、そうだけど……」
「食べても動けるくらいにはしておかないといけないってわかったね。あと、武器を置いて行くのも危ないよ」
「わ、わかった……。今度からは気をつける」
僕はルパの頭を撫でて、少し叱った。
僕の方にも少々問題があったので謝る。その後、ルパは口に加えている骨をボリボリと食べ始め、幸せそうな顔をする。骨くらい、いくらでもあるのに……。と言うか、さっき歯を磨いたのに……。
僕はルパに口を濯がせて馬車の中に入るよう言う。
僕はグラクタの群れがいるので追っ払うために、凍った肉を何個か投げつける。凍った肉が体に当たり、拉げてしまった個体は死に、恐怖したグラクタ達は肉を持って逃走した。
「よし。近づかなければ怖くないぞ。このまま火を絶やさずに夜を過ごそう。プルス……、って寝てるし……」
プルスは僕の頭の上で眠っていた。本来、プルスは眠らなくてもいいはずなのに、安心しきっているのか眠りすぎな気がする。
安心なのは僕もそうだが、今日は僕一人で見張りをしなければならないようだ。話し相手くらい欲しかったなと思いながら、ルパの剣を綺麗に磨いたあと、磨いている途中の石を取り出して時間をかけて綺麗にしていく。
焚火が弱まってきたら、枯れ木をくべていく。何度も何度も、枯れ木を入れていき、石を磨く。何度か繰り返していると地平線が白くなり始め、どんどん明るくなってくる。この時間が僕は結構好きだ。一日の活力になってくれる、そんな気がするのだ。
「ふぐぐ~。久しぶりに徹夜したけど、たまにはいいな~。朝焼けの景色を見られるのは今だけだし、こんな広い土地で見れるのもまたいいな……」
僕はルパの要望通り、朝から焼肉を作る。肉の焼ける匂いにつられて、ルパは起きてきた。
「ん……。肉ぅ……」
ルパは眼を擦り、鼻を鳴らしている。僕はルパに水を飲ませた。朝は水分が不足しがちなので、起きてからすぐに水を飲むと健康にいいと、騎士養成学校で教わった。
「ビチャビチャ……」
「あぁあぁ……。ルパ、しっかり口を付けて水を飲まないとこぼれちゃってるよ」
「ん……」
ルパは寝ぼけているのか、僕の体に抱き着いて寝息を立てる。まだ眠たいのか、尻尾を大きく振りながら、肉の匂いを嗅ぎ、嬉しそうな顔で寝ている。
「全く……」
僕はルパの頭を優しく撫でながら、地べたの座り、ルパに膝枕をしてあげた。
膝枕をしながら肉を焼き、途中で宝石を磨くと言った、工程を行っていると、肉がいい具合に焼け、ミートさんとルパが眼をしっかりと覚まし、石も削り終わった。
「あれ、私は何でニクスのところで寝てるの……」
ルパは僕の顔を見ながら言う。
「ルパがさっき起きて来たんだよ。覚えてないの?」
「ん~、記憶にない……。でも、頭を撫でられて嬉しかった気がする……」
「そうなんだ。じゃあ、こうやって撫でてあげたら喜ぶのかな?」
僕はルパの頭を優しく撫でた。綺麗な水晶を撫でるように優しくゆっくりと。
「ちょ、止めてよ……。朝っぱらから撫でないで……」
頭を撫でられただけでルパは尻尾を振り、耳をピコピコと動かしてしまう。口では止めてほしいと言っているのに、本当はもっとしてほしいのか、僕の方に体を近づけ、擦り寄ってくる。ほんと、素直じゃない子だ。
「ふわぁ~あ。おはよう、ニクス君、ルパちゃん」
ミートさんはあくびをしながら起きてきた。ぐぐ~っと伸びをして、体を解している。
「朝から肉とは、なかなか重いね~」
ミートさんは苦笑いしつつも、美味しそうに焼けている肉を見て、ジュルリと唾液を吸い、まだか、まだかと待っている。
ルパは既に唾液を地面にポタポタと落としながら肉が焼けるのを待っていた。
「よし、良いかな~。塩コショウを振ってと……」
僕は塩胡椒を肉に掛けて、ルパに手渡す。骨付きの肉なので、ルパにとって食べがいのある朝食だ。
「いただきます! ハグハグハグ! ハグハグハグ! んん~! 美味い!」
ルパは肉に齧り付き、尻尾を大きく振る。肉を焼いて塩をまいているだけなのだが、美味しいと言ってもらえると、僕も嬉しくなる。
僕はルパの頭を撫でながら、ミートさんの分も焼いていく。一時間ほどで朝食を終え、朝のひんやりとした空気に温かい焚火と肉で活力を得たルパとミートさんは元気いっぱいで僕は少々疲れ気味と言った具合だ。
「じゃあ、ミートさん。僕は少し寝ますから、移動はよろしくお願いします」
「うん、任せといて。距離を考えると、レイト領まであと六時間くらいだと思うから、昼頃にはつくと思う」
「そうですか。僕は六時間も寝ないと思いますけど、寝ている間はルパをお願いします」
僕が眼を瞑ると、ミートさんは馬車を動かした。馬車の中はヌータウロスの皮と角、魔石が置いてあり、肉は一頭分しかなかった。他のヌータウロスの肉は食べきれなかったので、プルスが灰にして全て食べてしまった。
プルスが大食いで本当に助かった。皮だけはぎとられて捨てられるなんて可哀そうすぎる。どうせなら食べて燃やし尽くしてあげたい。その方が魂も世界に戻りやすいはずだ。ルパは少々不服そうだったけどね……。
「や、やだぁ! この骨は私のだもん! こんな奴らにあげたくない!」
「そんなことを言っていたら、食べられちゃうよ。骨ならいっぱいあるでしょ」
「この骨が良い! ニクスの投げてくれたこの骨じゃないといや~!」
「たく……。仕方ないな」
僕はヌータウロスの凍っている肉を掴み、ルパのいる方向に投げる。
ルパの周りにいたグラクタの群れは僕の投げた肉の方に向かい、ルパの周りからいなくなる。ルパの持っている骨よりも僕の投げた肉の方が美味しそうだったのか、どんどん移動していった。
その間にルパは骨を咥えながら僕の方向に走ってくる。僕の体に抱き着き、ぷるぷると震えていた。先ほどは勇ましく戦っていたのに、今ではおびえる子供そのもの。ルパの中でヌータウロスとグラクタで何が違うのだろうか。大きさで言えばヌータウロスの方が大きいのに……。
「ルパ、なんで戦わなかったの?」
「食べ過ぎて動けなかった……。お腹が重くて走っても追いつかれると思ったの」
「食べ物の食べ過ぎって……。そんなんで死んでいたらどうするの……。あのまま食べられちゃっていたかもしれないんだよ」
「そ、そうだけど……」
「食べても動けるくらいにはしておかないといけないってわかったね。あと、武器を置いて行くのも危ないよ」
「わ、わかった……。今度からは気をつける」
僕はルパの頭を撫でて、少し叱った。
僕の方にも少々問題があったので謝る。その後、ルパは口に加えている骨をボリボリと食べ始め、幸せそうな顔をする。骨くらい、いくらでもあるのに……。と言うか、さっき歯を磨いたのに……。
僕はルパに口を濯がせて馬車の中に入るよう言う。
僕はグラクタの群れがいるので追っ払うために、凍った肉を何個か投げつける。凍った肉が体に当たり、拉げてしまった個体は死に、恐怖したグラクタ達は肉を持って逃走した。
「よし。近づかなければ怖くないぞ。このまま火を絶やさずに夜を過ごそう。プルス……、って寝てるし……」
プルスは僕の頭の上で眠っていた。本来、プルスは眠らなくてもいいはずなのに、安心しきっているのか眠りすぎな気がする。
安心なのは僕もそうだが、今日は僕一人で見張りをしなければならないようだ。話し相手くらい欲しかったなと思いながら、ルパの剣を綺麗に磨いたあと、磨いている途中の石を取り出して時間をかけて綺麗にしていく。
焚火が弱まってきたら、枯れ木をくべていく。何度も何度も、枯れ木を入れていき、石を磨く。何度か繰り返していると地平線が白くなり始め、どんどん明るくなってくる。この時間が僕は結構好きだ。一日の活力になってくれる、そんな気がするのだ。
「ふぐぐ~。久しぶりに徹夜したけど、たまにはいいな~。朝焼けの景色を見られるのは今だけだし、こんな広い土地で見れるのもまたいいな……」
僕はルパの要望通り、朝から焼肉を作る。肉の焼ける匂いにつられて、ルパは起きてきた。
「ん……。肉ぅ……」
ルパは眼を擦り、鼻を鳴らしている。僕はルパに水を飲ませた。朝は水分が不足しがちなので、起きてからすぐに水を飲むと健康にいいと、騎士養成学校で教わった。
「ビチャビチャ……」
「あぁあぁ……。ルパ、しっかり口を付けて水を飲まないとこぼれちゃってるよ」
「ん……」
ルパは寝ぼけているのか、僕の体に抱き着いて寝息を立てる。まだ眠たいのか、尻尾を大きく振りながら、肉の匂いを嗅ぎ、嬉しそうな顔で寝ている。
「全く……」
僕はルパの頭を優しく撫でながら、地べたの座り、ルパに膝枕をしてあげた。
膝枕をしながら肉を焼き、途中で宝石を磨くと言った、工程を行っていると、肉がいい具合に焼け、ミートさんとルパが眼をしっかりと覚まし、石も削り終わった。
「あれ、私は何でニクスのところで寝てるの……」
ルパは僕の顔を見ながら言う。
「ルパがさっき起きて来たんだよ。覚えてないの?」
「ん~、記憶にない……。でも、頭を撫でられて嬉しかった気がする……」
「そうなんだ。じゃあ、こうやって撫でてあげたら喜ぶのかな?」
僕はルパの頭を優しく撫でた。綺麗な水晶を撫でるように優しくゆっくりと。
「ちょ、止めてよ……。朝っぱらから撫でないで……」
頭を撫でられただけでルパは尻尾を振り、耳をピコピコと動かしてしまう。口では止めてほしいと言っているのに、本当はもっとしてほしいのか、僕の方に体を近づけ、擦り寄ってくる。ほんと、素直じゃない子だ。
「ふわぁ~あ。おはよう、ニクス君、ルパちゃん」
ミートさんはあくびをしながら起きてきた。ぐぐ~っと伸びをして、体を解している。
「朝から肉とは、なかなか重いね~」
ミートさんは苦笑いしつつも、美味しそうに焼けている肉を見て、ジュルリと唾液を吸い、まだか、まだかと待っている。
ルパは既に唾液を地面にポタポタと落としながら肉が焼けるのを待っていた。
「よし、良いかな~。塩コショウを振ってと……」
僕は塩胡椒を肉に掛けて、ルパに手渡す。骨付きの肉なので、ルパにとって食べがいのある朝食だ。
「いただきます! ハグハグハグ! ハグハグハグ! んん~! 美味い!」
ルパは肉に齧り付き、尻尾を大きく振る。肉を焼いて塩をまいているだけなのだが、美味しいと言ってもらえると、僕も嬉しくなる。
僕はルパの頭を撫でながら、ミートさんの分も焼いていく。一時間ほどで朝食を終え、朝のひんやりとした空気に温かい焚火と肉で活力を得たルパとミートさんは元気いっぱいで僕は少々疲れ気味と言った具合だ。
「じゃあ、ミートさん。僕は少し寝ますから、移動はよろしくお願いします」
「うん、任せといて。距離を考えると、レイト領まであと六時間くらいだと思うから、昼頃にはつくと思う」
「そうですか。僕は六時間も寝ないと思いますけど、寝ている間はルパをお願いします」
僕が眼を瞑ると、ミートさんは馬車を動かした。馬車の中はヌータウロスの皮と角、魔石が置いてあり、肉は一頭分しかなかった。他のヌータウロスの肉は食べきれなかったので、プルスが灰にして全て食べてしまった。
プルスが大食いで本当に助かった。皮だけはぎとられて捨てられるなんて可哀そうすぎる。どうせなら食べて燃やし尽くしてあげたい。その方が魂も世界に戻りやすいはずだ。ルパは少々不服そうだったけどね……。
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