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ビースト共和国
不眠の原因
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「いやあー、途中から記憶が無いけど、ぐっすり眠れたー」
「はぁー。ニクスさんの手でやっちゃうなんて……。でも気持ちよかった……」
映画は二時間あり、すでにおやつ時になっていた。
僕達はケーキを食し、僕はブラックコーヒーを飲む。今日の情報誌が置かれており、どうやって運んだのか疑問だが、読んでみた。
「六月六日、水の都、アクアテルムで大規模な戦闘が起こった。多くの兎が行進し、シルクハットをかぶった黒服の男が拳銃を乱射していたと戦闘を目撃した者が証言している。六月一五日現在、水の都は何事もなかったかのように人々が生活していた」
「兎とシルクハットをかぶった男……。なんとも嫌な予感しかしないな……」
神獣同士が鉢あい、殺し合いをしていると思われる。出来るのなら戦いたくないな。
騎士団、内部改革……。歴代の重鎮を軒並み解雇。能力の無い者を容赦なく排除する政策に賞賛と悲惨の声が殺到した。若者に有利な国になることを恐れた老人や、喜ぶ若者たちの声などが、記事に書かれていた。騎士団の重鎮が解雇されたと言うことはディアさんのお父さんも解雇されたのかな……。でも、いきなり全員辞めさせたら、誰が騎士団を動かすんだ。
僕は記事を読み終わり、コーヒーも飲み終わった。室内の運動場で剣を振り、訛りそうな体をしっかりとほぐす。
体を動かしたあとは夕食を得て部屋に戻り、お風呂に入る。
「お、お休み、ニクス……」
ルパは僕の頬にキスして僕も彼女の頬にお返しをする。
「おやすみなさい、ニクスさん」
ミアは僕の唇に口づけをしていきた。皆で並び、眠る。
ミアの寝起きの悪さを解消するべく、ぐっすりと眠れるように配慮した。
温度、湿度、目覚まし時計の音、服装なども出来る限り眠りやすいようにした。彼女が朝起きられないのは何かしら理由があるはずだ。なんせ、家では起きられている。なのに、外だと寝られないと言うのは気持ちの問題か、何かほかに原因があるのかのどちらかだ。
ミアが眠りについてから一時間。僕は眠らずにおきていた。寝苦しそうにしており、何度も寝返りを打っている。この時点で何かしら問題がありそうだが……、もう少し様子を見た。少しすると寝返りが落ち着き、じっと眠る。だが、また少しすると動きだした。午後九時から一二時までの間に、何度寝返りを打っただろうか。すでに八〇回は動いていると思う。
眠りが相当浅いのだろう。一番長くじっとしていた時間は一五分も無い。だが、寝返りが悪い訳ではない。しっかりと眠れていればそれでいいのだ。でも、ミアの眠りがとても浅い。
僕は家と外出先の違いを考えた。
「硬い床の方が寝やすいとかかな」
僕はミアを柔らかくふわふわのベッドの上から、シーツを敷いた床に枕と共に寝かせた。すると、表情が穏やかになり、寝返りの回数も落ち着いた。
「やっぱり、ミアは硬い床の方がよく眠れるんだ。よく考えれば、外出先で寝る時のベッドや布団はとても柔らかい品ばかりだったな。だから、ミアに合わなかったのか」
僕は安らかに眠るミアの頭を撫で、少し広くなったベッドに寝ころび、熟睡しているルパの顔を見る。ルパはどこでもしっかりと眠られるようだ。なんともまあ、ずぼらなこった。
次の日の朝……。
「ん……、んん……」
ミアは僕に口づけをしながら起こしてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。ニクスさん、おはようございます。今日は、早く起きられました」
「ミアは硬い床の方がよく眠れるみたいんだ。いつも柔らかい場所で眠っていたから、起きられなかったんだよ」
「ああ、なるほど。そう言うことだったんですね。じゃあ、今日からは毎日ニクスさんを起こせますね」
ミアは微笑み、尻尾をうねらせる。
「思考もしっかりとしているし、ほんとにぐっすりと眠れたんだね。よかったよかった」
「はい、ありがとうございます!」
ミアは僕に抱き着いて来て感謝してきた。
ルパには悪いけど、睡眠の質は生きる上でとても大切だから、治させてもらったよ。
ルパはミアに朝、早く起きられると言う有利な点を持っていたが、互角になった。まあ、競い合うことなんて無いんだけど……。
「ふわぁー、ん? ええ、ミアが私より先に起きてる!」
「えへへー、ニクスさんが私の不眠の原因を突き止めてくれたの。だから、外出先でもルパちゃんよりも早く起きられるようになっちゃった」
「ぐぬぬ……。まあ、ミアがよく眠れるようになってくれて良かった」
ルパは怒りだすかと思えば、穏やかな表情になり、呟いた。
僕とミアはルパの成長に感心し、たくさん撫でた。ルパと頬にキスし合い、気分を高めた後、一番寝坊助に成り下がったプルスを頭にのせ、服を着替える。同じような日々が続き、六月から、七月に入る。
七月一日はルパの誕生日だ。なので、今日で一五歳になり、成人になったわけだ。お酒が飲めるようになり、ミアは一緒に飲めると言って嬉しそうにしていた。
早朝、僕が目を覚ました時にルパはすでに起きており、何かを考えていた。
「ルパ、おはよう。どうしたの? 何かかんがえごと?」
「うん……。どうやったら、ニクスに勝てるかなと思って……。一年前に掲げた目標が達成できないまま、誕生日になっちゃった。何としてでもニクスに勝ちたくて、どうやったら勝てるか考えてるの」
「べ、別に勝てなくてもいいじゃないか。ルパが僕に勝ったら出て行くつもりなんでしょ。そうなったら、僕は嫌だから、ルパに負けられないんだ」
「昔は出て行きたいと思っていたけど、最近は違う。もっと別の願いが出来た」
「え? じゃあ、ルパが僕に勝っても離れて行かないってこと」
「うん。でも、本気じゃないニクスに勝っても嬉しくないから、今まで通り、本気で戦って」
「わ、わかった」
「あと、いつもは剣や体術での闘いだけど、誕生日だけはどんな対決でもありにして」
「まあ、ルパの誕生日だし、いいよ」
「よし! じゃあ、今日は試合以外の戦いで勝負! 全部勝って、いくつもお願いを聞いてもらうぞ!」
「はぁー。ニクスさんの手でやっちゃうなんて……。でも気持ちよかった……」
映画は二時間あり、すでにおやつ時になっていた。
僕達はケーキを食し、僕はブラックコーヒーを飲む。今日の情報誌が置かれており、どうやって運んだのか疑問だが、読んでみた。
「六月六日、水の都、アクアテルムで大規模な戦闘が起こった。多くの兎が行進し、シルクハットをかぶった黒服の男が拳銃を乱射していたと戦闘を目撃した者が証言している。六月一五日現在、水の都は何事もなかったかのように人々が生活していた」
「兎とシルクハットをかぶった男……。なんとも嫌な予感しかしないな……」
神獣同士が鉢あい、殺し合いをしていると思われる。出来るのなら戦いたくないな。
騎士団、内部改革……。歴代の重鎮を軒並み解雇。能力の無い者を容赦なく排除する政策に賞賛と悲惨の声が殺到した。若者に有利な国になることを恐れた老人や、喜ぶ若者たちの声などが、記事に書かれていた。騎士団の重鎮が解雇されたと言うことはディアさんのお父さんも解雇されたのかな……。でも、いきなり全員辞めさせたら、誰が騎士団を動かすんだ。
僕は記事を読み終わり、コーヒーも飲み終わった。室内の運動場で剣を振り、訛りそうな体をしっかりとほぐす。
体を動かしたあとは夕食を得て部屋に戻り、お風呂に入る。
「お、お休み、ニクス……」
ルパは僕の頬にキスして僕も彼女の頬にお返しをする。
「おやすみなさい、ニクスさん」
ミアは僕の唇に口づけをしていきた。皆で並び、眠る。
ミアの寝起きの悪さを解消するべく、ぐっすりと眠れるように配慮した。
温度、湿度、目覚まし時計の音、服装なども出来る限り眠りやすいようにした。彼女が朝起きられないのは何かしら理由があるはずだ。なんせ、家では起きられている。なのに、外だと寝られないと言うのは気持ちの問題か、何かほかに原因があるのかのどちらかだ。
ミアが眠りについてから一時間。僕は眠らずにおきていた。寝苦しそうにしており、何度も寝返りを打っている。この時点で何かしら問題がありそうだが……、もう少し様子を見た。少しすると寝返りが落ち着き、じっと眠る。だが、また少しすると動きだした。午後九時から一二時までの間に、何度寝返りを打っただろうか。すでに八〇回は動いていると思う。
眠りが相当浅いのだろう。一番長くじっとしていた時間は一五分も無い。だが、寝返りが悪い訳ではない。しっかりと眠れていればそれでいいのだ。でも、ミアの眠りがとても浅い。
僕は家と外出先の違いを考えた。
「硬い床の方が寝やすいとかかな」
僕はミアを柔らかくふわふわのベッドの上から、シーツを敷いた床に枕と共に寝かせた。すると、表情が穏やかになり、寝返りの回数も落ち着いた。
「やっぱり、ミアは硬い床の方がよく眠れるんだ。よく考えれば、外出先で寝る時のベッドや布団はとても柔らかい品ばかりだったな。だから、ミアに合わなかったのか」
僕は安らかに眠るミアの頭を撫で、少し広くなったベッドに寝ころび、熟睡しているルパの顔を見る。ルパはどこでもしっかりと眠られるようだ。なんともまあ、ずぼらなこった。
次の日の朝……。
「ん……、んん……」
ミアは僕に口づけをしながら起こしてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。ニクスさん、おはようございます。今日は、早く起きられました」
「ミアは硬い床の方がよく眠れるみたいんだ。いつも柔らかい場所で眠っていたから、起きられなかったんだよ」
「ああ、なるほど。そう言うことだったんですね。じゃあ、今日からは毎日ニクスさんを起こせますね」
ミアは微笑み、尻尾をうねらせる。
「思考もしっかりとしているし、ほんとにぐっすりと眠れたんだね。よかったよかった」
「はい、ありがとうございます!」
ミアは僕に抱き着いて来て感謝してきた。
ルパには悪いけど、睡眠の質は生きる上でとても大切だから、治させてもらったよ。
ルパはミアに朝、早く起きられると言う有利な点を持っていたが、互角になった。まあ、競い合うことなんて無いんだけど……。
「ふわぁー、ん? ええ、ミアが私より先に起きてる!」
「えへへー、ニクスさんが私の不眠の原因を突き止めてくれたの。だから、外出先でもルパちゃんよりも早く起きられるようになっちゃった」
「ぐぬぬ……。まあ、ミアがよく眠れるようになってくれて良かった」
ルパは怒りだすかと思えば、穏やかな表情になり、呟いた。
僕とミアはルパの成長に感心し、たくさん撫でた。ルパと頬にキスし合い、気分を高めた後、一番寝坊助に成り下がったプルスを頭にのせ、服を着替える。同じような日々が続き、六月から、七月に入る。
七月一日はルパの誕生日だ。なので、今日で一五歳になり、成人になったわけだ。お酒が飲めるようになり、ミアは一緒に飲めると言って嬉しそうにしていた。
早朝、僕が目を覚ました時にルパはすでに起きており、何かを考えていた。
「ルパ、おはよう。どうしたの? 何かかんがえごと?」
「うん……。どうやったら、ニクスに勝てるかなと思って……。一年前に掲げた目標が達成できないまま、誕生日になっちゃった。何としてでもニクスに勝ちたくて、どうやったら勝てるか考えてるの」
「べ、別に勝てなくてもいいじゃないか。ルパが僕に勝ったら出て行くつもりなんでしょ。そうなったら、僕は嫌だから、ルパに負けられないんだ」
「昔は出て行きたいと思っていたけど、最近は違う。もっと別の願いが出来た」
「え? じゃあ、ルパが僕に勝っても離れて行かないってこと」
「うん。でも、本気じゃないニクスに勝っても嬉しくないから、今まで通り、本気で戦って」
「わ、わかった」
「あと、いつもは剣や体術での闘いだけど、誕生日だけはどんな対決でもありにして」
「まあ、ルパの誕生日だし、いいよ」
「よし! じゃあ、今日は試合以外の戦いで勝負! 全部勝って、いくつもお願いを聞いてもらうぞ!」
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