ストライダーIKUMI~奴隷を助けたら求婚された。だが気にしない。

ゆっこ!

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 第十三話 開放者たちの動向。 

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 「みんな、丸太は持ったわね。何か問題はない?」」

 「はい。全員の調子は悪くありません。どの連装クロスボウも問題はなかったとのことです」

 とある拠点に集まった女忍者集団、月影の衆。その頭領KAGAMIが副官のスグリに、隊員たちの体調と、連装クロスボウの使い勝手はどうかと尋ねた。

 だが、それはKAGAMIの要らぬ心配であった。

 月影のメンバーたちは、今回の幼女たち奪還の襲撃に備え、体調管理を疎かにすることはなかった。
 当然、副頭領であるスグリは、新装備の状況も把握していた。
 副官スグリは、頭領であるKAGAMI、配下の下忍たち共に、新装備にも問題はないと伝える。

 なお、KAGAMIの言う丸太とは、忘れられた鉱山で製造された、先行量産型の連装クロスボウの隠語である。
 別にKAGAMIは、どこぞの吸血鬼相手に決戦を挑もうとしていた訳ではない。

 そんな時、女忍者の中の数人の者たちが、ある想いを晒け出し発言を始めた。

 「当たり前だよ頭領! 私たちが連日、この先行量産型を整備していたんだから!」

 「そうだよスグリ! 私たち5人で30丁もの整備と試し撃ちを繰り返していたのよ! 初期不良の問題なんてとっくに解決済みよ!」

 「使い込んで性能は高めて置いた。クソ仕事をして、本番で身内を困らせるなんてしないよ」

 「正直辛かったけど、お蔭でクロスボウの腕前は良くなったよ」

 「整備の腕前もね」

 そうKAGAMIとスグリに訴えたのは、森の館とは別の拠点へと詰めていた、新型武器の整備班だった。彼女たちの言いたいことを要約すると、「私たちはクソ仕事はしないよ。舐めんな!」という次第であった。
 実際、彼女たちの整備が素晴らしいものだったことは、副官のスグリが知っていた。
 襲撃までの長い時間を連装クロスボウの運用に費やした彼女たちは、これからの襲撃作戦でも中距離からの狙撃兵として、多くの活躍をすることだろう。

 「助かるわ。他の班のみんなも、サクメたちの様に頑張って頂戴」

 「はい。解りました頭領」

 「今回の襲撃では狙撃兵として活躍します」

 「凄いところ、見せますよ」

 「私たち、女を食い物にしている組織なんて一捻りですよ」

 「うん、簡単に倒して見せますよ」

 「私たちだって負けないもん!」

 「私たち前衛兼突撃班なめがいることもお忘れなく!」

 「やっと実力が発揮できる!」

 「もう子供じゃないって証明するもん!」

 整備班。そして、それ以外の面々もそう言って、腕をまくって見せたり、トンボを切るバク転、苦無を投げる動作などして見せた。頭領であるKAGAMIに、自分たちもやって見せますよとアピールしたのである。

 そのように、KAGAMIの許に集まった忍者少女たちは、みんな指揮が高かった。

 頭領であるKAGAMIの人柄もその理由の一つであったが、やはり、この世界全体の女の敵であると彼女たちに認識されている、ホーリーズ・クランに一泡吹かせるという作戦の意味が、彼女たちの指揮の高さに繋がっていた。

 この指揮の高さには、KAGAMIも内心にっこりであった。

 「結構です。でも、人質になっている幼女たちの安全も考慮するのよ?」

 「それは理解しています! 無事に幼い娘たちを助け出すことが、ホーリーズ・クランに一泡吹かすことになりますから! ねえ、みんな!」

 「うん! それは理解しているよ!」

 「そう言うフジこそ、下手撃たないでよね!」

 「なによ! ウメこそ!」

 「あははっ! 二人共大事の前に取っ組み合って体力消耗しないでね!」

 そんなニワ・フジ、ニワ・ウメ姉妹の様子と、的確にツッコミを入れるサクノ・マヤの言動に、どっと笑いが起こり、その場を和ませた。

 「ハイハイ、そこまでよ。みんな目的地の廃村に出発するわよ。いいですよね頭領?」

 まだ和やかな笑い顔が絶えないその場に、スグリがそこまでとストップを掛け、出発するから大人しく準備を終えろと声を掛けた。
 集まった拠点の外と言えば、すでに宵の口を過ぎて暗くなっている。忍びの者たちが行動を開始するのには、調度良い時刻となっていた。
 
 「ええ。それでは出発します。スグリ、サンとスイとの連絡は頼むわ」

 「お任せください」

 そんな会話の後、それぞれに新兵器を背負った女忍者たちの一団は、闇夜に紛れて忍んでいった。
 
 黒装束にその身を包んだ彼女等がまず向かったのは、敵組織が奴隷の収容所として使っている廃村を狙撃できるポイントである。


 ◇ ◇ ◇


 「ん?」

 暗黒街にある、とある館の護衛任務で周辺の警戒に当たっていた屈強の男ジエル・ビーンは、裏路地で蠢く二つの影に気付いて、そちらへと向かう。

 ジエルは、サイ・カシンの呼び掛けによって集まった売国組織の上級幹部たちの護衛である。館へと集まった彼等の会合が終了するまで、ジエルはこの場に留まらなければいけない立場だ。
 この裏門周辺に異常がないかを延、々と見回り続けねばならないのである。

 そんな、まったく面白みのない仕事の途中、裏門近くの路地裏で、何者かが蠢いたのだ。

 (クソッ!何だってんだ!)

 ジエルは嫌々ながら荒々しい足取りで、その確認へと向かった。ただの小物なら、その足音を聞いただけで逃げ出す。それがジエルにとって、一番良い展開なのである。

 (逃げんな? 何者だ?)

 ジエルは少し緊張して、裏路地を覗き込む。

 すると―――

 「…んっ、サン、そこもっと…吸って」

 「可愛いよ…スイ」

 ―――そこには、レズっぽい少女が二人、絡み合っていた。

 さすがにジエルも言葉がない。

 (おいおい…何やってんだよ、って、この娘ども、女同士で何をしてやがる。場所を考えろって!)

 「…おい」

 「…次はぁ…キスして」

 「…解った」

 「…おい」

 「…息が苦しくなるまで…して」

 「うん、私にも…」

 「…」

 ジエルに見付かったことも気にせずに、商売女風の恰好をしたサンとスイは、瞼を閉じて濃厚な接吻をする。そして、互いの舌を絡め合わせて数十秒の時を過ごす。
 その時、お互いの掌は、お互いの性感帯を刺激し合っていた。

 「おいっ!!!」

 「ひゃうっ!」

 「なんっ!」

 痺れを切らしたジエルの大声に、吃驚したと短く悲鳴を上げるサンとスイ。拗ねた表情をして、屈強な男を見上げてくる。

 「…何よ…イイところだったのに…」

 「…少しくらい、見えない振りしてくれたってイイじゃない」

 「そうよ、無粋な人ね」

 二人とも、涙目になって文句を言った。これにはジエルも心底呆れる。

 (見られた方が感じるって、変態か?………いや、間違いなく変態だな)

 「おい、お前たちはこんな場所で何をしている? ここは俺たち組織の縄張りだぞ。大抵の奴は近付きもしねえぞ!」

 「…何って、もちろんナニよ。だって、あなたみたいな怖いお兄さんの近くにいるほど、スリルがあって気持ちよくなれるって思ったの」

 「…それに、ここなら古い倫理観の大人たちに、何も言われないからと思ったのよ…」

 (駄目だこいつら。早く何とかしないと…いや、万が一にも、こいつら間抜けのレズ娘たちが刺客ってことはないだろう。恫喝して話を聞いても意味がねえ。とにかく追っ払うのが先だ)
 
 「…お前らな…早くどっか行っちまえ。そうしないと捕まえて叩き売るぞ!」
 
 「…うう…解ったわよ。出て行けばいいんでしょう、出て行けば」

 「…仕方ないよ…もっと刺激があることを探そう…行こうサン」

 「…スイがそう言うなら…」

 そんなこんなで、乱れた衣服を直して立ち上がるサンとスイであった。ジエルが裏路地を塞ぐ位置から退いたので、二人は並んで大路へと出るくる。

 「兄貴? その二人は何ですかい?」

 場違いな登場をしたサンとスイのことを訝しみ、そうジエルへと質問してくる組織の若い衆。彼も裏口の警戒に回された口である。

 「…裏路地でイチャついていた女同士のカップルだ。邪魔だから退去させている」

 「女同士って、妖しくないんすか、そいつら?」

 「ただの変態だな。こいつらは」

 そんなジエルの言葉に、サンとスイが頬を膨らませ、抗議する表情となる。

 「えー、酷いよおじさん! 私たち、ちょっと人に見られてスルの好きなだけだもん!」

 「そうだよ! 酷いよ、おじさん! プンプンだよ!」

 「おじっ…俺はまだ27だ。それにガタガタ言ってねぇで、とっとと何処か行きやがれっ! このメスガキ共!」

 予想外の反撃となる言葉を受けて、ジエルが怒鳴る。「あ…これ正真正銘の関わっちゃ駄目なヤツらだわ」と、若い衆も困り顔になった。

「ふんだ、解りましたよ! スイ、行こう!」

「んー、ねえ、おじさん? ここの偉い人は出てこないの? スイはね、偉い人にしてる所を見て貰いたかったの」

「だから俺はおじさんじゃねえ! それに親父たちはそんな趣味なんてねぇし、話は長引くって聞いてる。遅くまで出てこねえよ!」

 「ふーん、そうなんだ。行こうサン。今夜は別の場所で気持ち良くなりましょう」

 「うーん、でも郊外はスリルって言うか、冗談抜きで危ないからね…何処に行こう?」

 「そうねぇ、酒場に行く? そこなら見世物になって、お金も貰えそうだし…?」

 「いや、知らないおじさんとかに襲われて、子供を妊娠する事態になったらマズイよ。どこか安い部屋を取ろうよ」
 
 「そっか、それが無難だねぇ。今夜はそれで妥協するよ…」

 「じゃあ、行こう」

 を聞き終えたサンとスイのコンビは、そこでクルリと踵を返して歩き出した。どうすれば気持ち良い思いができるのかと会話しながら、仁王立ちのジエルのいる館の裏門近くから離れていく。

 そして。

 「バイバーイ、おじさーん!」
  
 振り返って手を振ったスイとサン。そのまま手を振りながら前を向いて、大路の先の闇の中へと消えていった。

 「…俺はおじさんじゃねえ」

 そんなジエルの呟きも、夜の闇の中へと紛れ、誰にも省みられることなく消えていった。


 ◇ ◇ ◇


 [どうやら上級幹部たちは、しばらくの間は会合中らしいです。増援の心配はなさそうです]

 「御苦労。二人はもう街を離れて。郊外の仮の拠点で後ほど合流しましょう」

 [了解です。それでは!]

 暗闇の中、伝話符での情報共有を終え、スグリが伝信を終える。

 早速、そのことをKAGAMIに伝える副官のスグリ。

 「では、もう心配することはないようね」

 「はい」

 報告を終え、KAGAMIがスグリとの短い会話を終えた。

 この時、すでに月影の構成員すべてが、「ここがあの女のハウスね!」と、廃村の狙撃ポイントへと到着していた。

 すでに闇夜の中での長時間の行軍で、全員が暗い場所で使用される瞳の稈体細胞が活性化し、闇夜をある程度見通すことが可能になっている。
 また、狙撃担当複数人には特性のゴーグルが行き渡っており、常に敵側より有利な状況で戦闘を続行する態勢を整えていた。

 「…行くわよ」

 KAGAMIの号令一下、奴隷収容所のある廃村へと向かい、月影の女忍者たちが動き出した。


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