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第2話 はじまり アラン視点(3)

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「アラン様。先ほどわたくしたちの婚約を正式に成立させた、あの書類。あちらには、双方の同意がないと破棄できない旨が追加されていることを覚えていらっしゃいますよね?」

 常識? モラル?
 頭の中で多数クエスチョンマークが浮かび上がっていたら、目の前にいるシャルロットがコクリと首を傾けた。
 あ、ああ。そうだね。覚えている。

『わたくしはそんな未来は訪れないと信じておりますが、お父様とお母様はアラン様の新たな心変わりを不安視されるはず。お父様たちを安心させるために、破棄および解消の条件を付け加えていただきたいのでございます』

 そんなシャルロットからの心優しい提案で、父上に頼んでプラスしてもらった。

「実を言いますと、あの言い分はすべて嘘。万が一ザックルス伯爵家が違和感を覚えた際に、この婚約を白紙にできないようにするための方便なのですわ」
「なんだって!? しゃ、シャルロットっ。どういうことなんだっ!? 本当の理由はなんなんだ!?」

 ウチが違和感を覚える!? 婚約を白紙にする!?
 またワケの分からないことが出た!
 なっ、なんなんだ!?

「もちろん、そちらも詳しくお伝えいたしますわ。……でも、残念。今この場ではできないみたいですわ」
「なっ、なぜだ!? どうしてできないんだ――え……。なん、だ……。こ、れ…………は…………?」

 見開いていた目、瞼が、ひとりでに下がり始めた。
 それだけ、じゃない……。
 意識も、だ……。朦朧と、し始めた……。

「こんな、とき、なの……に……。どう、なって……る……ん、だ……?」
「安心してくださいまし、そちらは病の類ではありませんわ。アラン様が先ほど召し上がった、アールグレイとクッキー。それらに入っていた睡眠薬の影響で、眠たくなってしまっているだけですわ」

 なんだって!?
 睡眠薬!? あの茶と菓子に!?

「これから行うことを円滑に進めるには、一旦貴方様を無力化させないといけませんの。そのためにしばらく、夢の中を彷徨っていただきますわ」
「お、俺に、なにを……する、つもりだ……! や、やめ……。やめ、ろ……!」
「そちらは応えれないご提案ですわ。それではアラン様。夢の世界にいってらっしゃいませ」
「い、いやだ……! いやだぁああ……! くっ、くるなぁ! しゃる、ろっとぉ! おっ、俺にっ、近づくなぁ――………………。すぅ……。すぅ……。すぅ……」

 死に物狂いで抗おうとしたが、駄目だった……。
 俺の意識は、ぷつりと途切れてしまい――


 〇〇〇

「すぅ……。すぅ……。すぅ……。すぅ……。すぅ……」
「ふふ、よく眠ってくれていますわね。では夢の中にいる間に、あちらに運びましょうか」




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