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第16話 ハトの知人さんへ 伝えたい2つの言葉(2)
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「改めて、ありがとうございます。これまでも、これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ、ソフィーさん。今後も、末永くよろしくお願いします」
しばらくの間、両手を握り合っていた――お互いを感じ合っていた私達は、その手が離れると揃ってお辞儀。タイミングがピッタリな、再出発の挨拶を行いました。
「……何度もお会いしているので、ヘンテコになっちゃうんですけど……。ずっと『ハトの知人』さんと、直接お喋りをしてみたかったんです。夢だったんです」
「僕も、同じです。一度だけでもいいから、貴方とお話しをしてみたかった。夢でした」
「ですので、お喋りをしましょう。これまでのお礼とか、手紙では伝えられなかったこととか。沢山沢山、お伝えさせてくださいっ」
封筒に入れられる便箋の数には限りがあるし、多すぎると迷惑になってしまう。そんな理由で、書けなかったことがどっさりある。
――知人さんも同じ太陽を見ているんだよね。と、よく空を見上げていたこと――。
――知人さんの住所を知らないから、お礼のお料理やケーキを贈りたいけど送れなかったこと――。
――いつかそうできた時のために練習を始めて、大失敗。あまりのまずさに、味見をしてくれたお父様が寝込んでしまったこと――。
などなど。
今日は相手が目の前にいて、意思の疎通に制限はない。8年間で泣く泣く削っていたものを、伝えたい。知って欲しい。
「ソフィーさん。僕も書き足りない日が多々あったし、もっとソフィーさんについて知りたいと毎回感じていました」
――今日は特に機嫌が良いな。書いている以外に何かあったのかな?――。
――気になる。けれどそれを尋ねていたら、スペースが不足してしまうな――。
などなど。
頻繁に感じていたことを、教えてくれました。
「ですので、たっぷり聞かせてください。僕も、伝えさせてください」
「はい……っ。お互いに一杯喋って、一杯聞きましょう……っ」
私が破顔で頷くとおんなじ反応が返ってきて、私達は室内にある椅子へと――向かおうとしていたら、コンコンとノックが3回。そのあとガチャリと扉が開いて、そこにはワゴンをつくアリス様がいらっしゃいました。
「お二人とも、忘れ物よ。折角用意したのだから、放置なんて勿体ないわ」
苦笑まじりでアップルパイと紅茶を載せたワゴンを押して、そのワゴンはテーブルに添える形で停止。わざわざ運んで来てくださったアリス様は、身を翻しながらイタズラっぽくウィンクをされました。
「お兄様。ワタシが口にしていた『芽』の意味、理解できたようね?」
「ああ。僕は、見誤っていたよ。ありがとう、アリス」
「ふふっ、ワタシは何もしていませんわよ。それではよいお時間を」
マリユさんには狡猾っぽくクスリ、私には明るくニコッとした笑みを向けつつ退室され、そうして私達の――『ハトの知人』さんと私の時間が始まりました。
「実はあの日機嫌がよかったのは、日を間違えていたからなんです。御用事があって手紙が届くのは明日だと思っていたら今日届いたので、喜んでいたんですよ」
「そっか。そうだったんだね」
「僕の趣味? 君にお伝えした情報は、どれも本物だよ。料理、読書、長風呂などなど。女性っぽいものが多いけれど、どれも本当の趣味なんだ」
「そうなんですね……っ。じゃあ、私がお勧めした入浴剤は」
「すぐ購入して、実際に自分で使用しているよ。中でもローズマリーは心地よくて、一昨日も使ったね」
その時間はお互いにとって夢のため、盛り上がらないわけがない。私達はアップルパイと紅茶をお供にたっぷり――その後なんと4時間もお喋りをしてしまい、明日を考慮して一泊させてもらうことになりました。
「ソフィーさん、いよいよ明日で片が付くね。おやすみなさい」
「はい。マリユさんのおかげで、終わります。おやすみなさい」
そうして楽しい一日が終わり、翌日の朝。私はマリユさんと共に朝食をいただいたあとジョンピス家の馬車に乗り、この騒動に終止符を打つ場所――裁判所へと向かったのでした。
「こちらこそ、ソフィーさん。今後も、末永くよろしくお願いします」
しばらくの間、両手を握り合っていた――お互いを感じ合っていた私達は、その手が離れると揃ってお辞儀。タイミングがピッタリな、再出発の挨拶を行いました。
「……何度もお会いしているので、ヘンテコになっちゃうんですけど……。ずっと『ハトの知人』さんと、直接お喋りをしてみたかったんです。夢だったんです」
「僕も、同じです。一度だけでもいいから、貴方とお話しをしてみたかった。夢でした」
「ですので、お喋りをしましょう。これまでのお礼とか、手紙では伝えられなかったこととか。沢山沢山、お伝えさせてくださいっ」
封筒に入れられる便箋の数には限りがあるし、多すぎると迷惑になってしまう。そんな理由で、書けなかったことがどっさりある。
――知人さんも同じ太陽を見ているんだよね。と、よく空を見上げていたこと――。
――知人さんの住所を知らないから、お礼のお料理やケーキを贈りたいけど送れなかったこと――。
――いつかそうできた時のために練習を始めて、大失敗。あまりのまずさに、味見をしてくれたお父様が寝込んでしまったこと――。
などなど。
今日は相手が目の前にいて、意思の疎通に制限はない。8年間で泣く泣く削っていたものを、伝えたい。知って欲しい。
「ソフィーさん。僕も書き足りない日が多々あったし、もっとソフィーさんについて知りたいと毎回感じていました」
――今日は特に機嫌が良いな。書いている以外に何かあったのかな?――。
――気になる。けれどそれを尋ねていたら、スペースが不足してしまうな――。
などなど。
頻繁に感じていたことを、教えてくれました。
「ですので、たっぷり聞かせてください。僕も、伝えさせてください」
「はい……っ。お互いに一杯喋って、一杯聞きましょう……っ」
私が破顔で頷くとおんなじ反応が返ってきて、私達は室内にある椅子へと――向かおうとしていたら、コンコンとノックが3回。そのあとガチャリと扉が開いて、そこにはワゴンをつくアリス様がいらっしゃいました。
「お二人とも、忘れ物よ。折角用意したのだから、放置なんて勿体ないわ」
苦笑まじりでアップルパイと紅茶を載せたワゴンを押して、そのワゴンはテーブルに添える形で停止。わざわざ運んで来てくださったアリス様は、身を翻しながらイタズラっぽくウィンクをされました。
「お兄様。ワタシが口にしていた『芽』の意味、理解できたようね?」
「ああ。僕は、見誤っていたよ。ありがとう、アリス」
「ふふっ、ワタシは何もしていませんわよ。それではよいお時間を」
マリユさんには狡猾っぽくクスリ、私には明るくニコッとした笑みを向けつつ退室され、そうして私達の――『ハトの知人』さんと私の時間が始まりました。
「実はあの日機嫌がよかったのは、日を間違えていたからなんです。御用事があって手紙が届くのは明日だと思っていたら今日届いたので、喜んでいたんですよ」
「そっか。そうだったんだね」
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「そうなんですね……っ。じゃあ、私がお勧めした入浴剤は」
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「はい。マリユさんのおかげで、終わります。おやすみなさい」
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