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第1話 出会い(1)
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「うえぇん……っ。うぇぇん……っ」
約6年前。10歳になったばかりの頃。わたしは、見知らぬ路地で独り泣いていました。
『なあメリッサ。父さんや伯父さん達に内緒で、冒険をしてみようよ。2人きりでさ』
『え……。2人だけで……? わたしたちだけでお外は、危ないよ……』
『大丈夫だってっ。怖くなんて全然ないっ! オレがついてるから平気だよ!』
2歳年上の従弟、ライグ兄さんたち――叔父一家がお屋敷に遊びに来た時。お人形で遊んでいたわたしは腕を引っ張られ、コッソリお家を抜け出した。
子どもだけで出かけるなんて、あまりにも不安で……。すぐに帰りたくなったけど、独りで戻るのは怖いくでできず……。ライグ兄さんの傍を離れられなくなって、そうしたくないのに、どんどん2人で進んでいくことになってしまったのです。
『ライグくん……。そろそろ、帰ろうよ……』
『まだ出発して30分くらいだろ。もうちょっと冒険しよう』
『ね、ライグくん。そろそろ、帰ろうよ……』
『まだ1時間くらいだし、多分ここから面白くなってくる。進もうぜ』
『ね、ねえライグくん。もうそろそろ、帰ろうよ……。わたし、もう嫌……』
『分かった分かった、もう帰るよ。その前にちょっとトイレしてくるから、ここで待ってるんだぞ』
『ぇ……。わ、わたしも、一緒に、行く……っ』
『足が遅いメリッサが一緒だと、漏れちゃうんだよ。行ってくる!』
そうしてライグ兄さんは、駆け足で角を曲がって…………それっきり帰ってこなくなった。10分待っても20分待っても、戻ってこなくて。勇気を振り絞って探しに行ったら、迷ってしまって……わたしは迷い込んだ路地で、わんわん泣いてしまったのです。
「ライグくん……どこぉ……っ? どこにいっちゃったのぉ……っ?」
この頃にはもう、夕方になっていて。暗くなっていることが本当に怖くて、わたしは必死に声を上げる。
「わたしは、ここだよ……っ。ここに、いるから……っ。もどって、きてぇ……っ。たすけてぇぇ……っ!」
何度も何度も大声を出して、でも、来てくれなくて。
あの頃は子どもだから、『このまま死んじゃうんだ』と思うようになって……。怖くて悲しくて、座り込んでしまって……。顔を涙まみれにして震えていた、そんな時でした。
「ライグ君って子の代わりに、このエリー君が助けてあげるよ。だからもう泣かないで」
同い年くらいの男の子が来て、白のハンカチと甘い匂いがするワッフルを差し出してくれたんです。
「ふぇ……?」
「こっちは涙を拭く用で、そっちは元気になる用。ちょうど買い食いをしていて、一つおすそ分けだよ」
「ぁ、ありがとう……。ありがとう、ございます……っ」
わたしはハンカチを受け取って、フキフキ。ワッフルを受け取って、モグモグ。涙はなくなってお腹は一杯になって、不安な気持ちはあっという間になくなってしまいました。
「うん、元気が出たみたいだね。じゃあ迷子みたいだし、家に戻ろっか。お屋敷の住所、分かるかな?」
「住所は、分かりません。でもね、わたしはハンナ家の子どもなの。伯爵家の、ハンナ家の長女、メリッサなの」
「……ハンナ家……。ぅーん。こっちの国のことはよく知らないから、通行人に尋ねてみようか」
男の子はお父さんのお仕事についてきて、暇になったから散策をしていた隣国の人。わたしより知らない土地のはずなのに堂々としていて、テキパキとハンナ家の場所を把握して、お屋敷まで連れて行ってくれることになったのでした。
約6年前。10歳になったばかりの頃。わたしは、見知らぬ路地で独り泣いていました。
『なあメリッサ。父さんや伯父さん達に内緒で、冒険をしてみようよ。2人きりでさ』
『え……。2人だけで……? わたしたちだけでお外は、危ないよ……』
『大丈夫だってっ。怖くなんて全然ないっ! オレがついてるから平気だよ!』
2歳年上の従弟、ライグ兄さんたち――叔父一家がお屋敷に遊びに来た時。お人形で遊んでいたわたしは腕を引っ張られ、コッソリお家を抜け出した。
子どもだけで出かけるなんて、あまりにも不安で……。すぐに帰りたくなったけど、独りで戻るのは怖いくでできず……。ライグ兄さんの傍を離れられなくなって、そうしたくないのに、どんどん2人で進んでいくことになってしまったのです。
『ライグくん……。そろそろ、帰ろうよ……』
『まだ出発して30分くらいだろ。もうちょっと冒険しよう』
『ね、ライグくん。そろそろ、帰ろうよ……』
『まだ1時間くらいだし、多分ここから面白くなってくる。進もうぜ』
『ね、ねえライグくん。もうそろそろ、帰ろうよ……。わたし、もう嫌……』
『分かった分かった、もう帰るよ。その前にちょっとトイレしてくるから、ここで待ってるんだぞ』
『ぇ……。わ、わたしも、一緒に、行く……っ』
『足が遅いメリッサが一緒だと、漏れちゃうんだよ。行ってくる!』
そうしてライグ兄さんは、駆け足で角を曲がって…………それっきり帰ってこなくなった。10分待っても20分待っても、戻ってこなくて。勇気を振り絞って探しに行ったら、迷ってしまって……わたしは迷い込んだ路地で、わんわん泣いてしまったのです。
「ライグくん……どこぉ……っ? どこにいっちゃったのぉ……っ?」
この頃にはもう、夕方になっていて。暗くなっていることが本当に怖くて、わたしは必死に声を上げる。
「わたしは、ここだよ……っ。ここに、いるから……っ。もどって、きてぇ……っ。たすけてぇぇ……っ!」
何度も何度も大声を出して、でも、来てくれなくて。
あの頃は子どもだから、『このまま死んじゃうんだ』と思うようになって……。怖くて悲しくて、座り込んでしまって……。顔を涙まみれにして震えていた、そんな時でした。
「ライグ君って子の代わりに、このエリー君が助けてあげるよ。だからもう泣かないで」
同い年くらいの男の子が来て、白のハンカチと甘い匂いがするワッフルを差し出してくれたんです。
「ふぇ……?」
「こっちは涙を拭く用で、そっちは元気になる用。ちょうど買い食いをしていて、一つおすそ分けだよ」
「ぁ、ありがとう……。ありがとう、ございます……っ」
わたしはハンカチを受け取って、フキフキ。ワッフルを受け取って、モグモグ。涙はなくなってお腹は一杯になって、不安な気持ちはあっという間になくなってしまいました。
「うん、元気が出たみたいだね。じゃあ迷子みたいだし、家に戻ろっか。お屋敷の住所、分かるかな?」
「住所は、分かりません。でもね、わたしはハンナ家の子どもなの。伯爵家の、ハンナ家の長女、メリッサなの」
「……ハンナ家……。ぅーん。こっちの国のことはよく知らないから、通行人に尋ねてみようか」
男の子はお父さんのお仕事についてきて、暇になったから散策をしていた隣国の人。わたしより知らない土地のはずなのに堂々としていて、テキパキとハンナ家の場所を把握して、お屋敷まで連れて行ってくれることになったのでした。
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