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エピローグ(2)

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「あの時すでに、伝えてしまっているが――。俺はあの日、君に恋をした。メリッサの瞳の澄んだ瞳、裏表のない笑い顔、真っすぐな心に惹かれ、生まれて初めて恋をしたんだ」
「わたしはまだお伝えできていませんでしたが、こちらもそうです。あの日エリー君に、恋をしました。優しくて頼りになる、そんな貴方に惹かれて、生まれて初めて恋をしました」

 あの時から今までずっと。私が好きなのは、エリー君だけ。
 あれから何人もの異性と出会いましたが、その気持ちは揺らぐ事は僅かもありませんでした。

「ずっと貴方が大好きで、エリー君と恋人になる事が夢だったんです」「ずっと君が大好きで、メリッサと恋人になる事が夢だった」

 だから。

「喜んで、受け取らせていただきます」「勿論、有難く受け取らせてもらう」

 わたしは種を、エリー君はクッキーを手に取り、『宝物』を握ったまま抱き締め合います。

「…………メリッサ、愛してる。これからも俺は、君を守り続けると誓うよ」
「はい……っ。これからも……っ。昔も、あの時も、これからも、よろしくお願い致します……っ」

 周りには多くの人々がいますが、込み上げてくるこの気持ちは抑えられません。私達はキスを交わし、言葉と体で愛を確かめ合います。
 ファーストキスは、柑橘系の香りをした媚薬。温かくって、柔らかくて、気持ちよくって。一度だけじゃ物足りなくて、何度も何度もキスをしたくなります。
 でも――。

「流石に、かなり注目され始めたな。これ以上続けると、大騒ぎになりそうだ」
「ですね。この続きは、ウチのお屋敷で行いましょう」

 何年間も空き家となっていた、お父様とお母様とわたしのお家。そこには使用人さん達が全員戻ってきてくださっていて、今日からは再び使用できるようになっています。
 これからは週に1度は帰宅するようになり、今夜はその1回目。それを最愛の人と共に行えるなんて、こんなに幸せな事はありません。

「ああ、そうだな。メリッサ、行こうか」
「はいっ。行きましょうっ」

 そうしてわたし達は馬車に乗り込み、ハンナ家の専属御者ケベックさんの運転でお家に到着。敷地内で揃って降りると、エリー君は後方にある門を見つめました。

「前回はあそこまでだったが、今回は違う。今度こそ、君の家にお邪魔させてもらおう」
「はいっ、たっぷりとお邪魔してください。エリー君、どうぞ」

 私達は笑い合い、一緒に歩き出します。
 あの時はお別れでしたが、今日は違います。このあと生まれてくる感情は、悲しみではなく喜び。
 わたし達は正反対ではなく同じ方向に進んで、皆さんにご挨拶をしたあとは、わたしのお部屋に行って――。

「メリッサ。大好きだ」
「エリー君。大好きです」

 愛する人と朝まで、幸せな時間を過ごしたのでした――。


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