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第10話 シモンのその後 俯瞰視点(1)

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 シモンがロティナに捨てられてしまってから、1か月後。シモンの実家である、ハヌエ邸内。そこに設けられていたパーティー会場では、シモン、父・ジャン、母・ファニーが呆然と立っていました。

「……………………」
「……………………」
「……………………」

 今日は、シモンの誕生日を祝うパーティー。去年までは友人知人で賑わっていたパーティーに人はおらず、開始時刻を過ぎても家族3人だけしかいません。
 なぜ、このようになっているのか? その理由は、シモンの言動にありました。

『…………羨ましいからと、非難をして止めようとするのか。なんということだ』
『マクシム、モリス。身近なものが『上』に行くことが、そんなにも面白くないのか?』
『素直に羨ましいと言えないどころか、忠告の皮を被った妨害までしてくる。嫉妬は見苦しいよ』

 親身になって忠告をしてくれた親友を、嘲ったり。

『うん? なんだい、その態度は。俺をあまり怒らせない方がいいぞ?』
『謝るなら、今のうちだ。あとで後悔しても知らないぞ?』
『なあ、君らは「上」の景色を見たことがあるかい? ない? ああ、それもそうか。君達と俺の間には、越えられない壁があるのだからね』

 因縁をつけて迫ったり、他の知人たちを集めて驕ったり。
 ロティナと縁を切られるまでに、シモンは様々な場所で偉そうな振る舞いを取っていました。
 そしてマクシムとモリスは、温情で口外はしませんでしたが――他の知人はシモンの発言や態度を広めており、それらはあっという間に拡散。その結果シモンの評判は地に落ち、

『分かったぞ。婚約解消の理由は、これだな……』

 更にはシルヴィーに関する悪評も広まって、まるでスタンピードの如く周囲から人が消えていってしまったのでした。

「…………なんてことだ……。これでは、もう……」
「ええ、あなた……。シモンの相手は、見つからないわね……」

 招待状を送っても参加の返事は一つもなかったけど、きっと。誰かは来てくれるはず。そう思っていた父と母は天を仰ぎ、

「ぁぁあ……! こんなことになるなんて……!!」

 シモンは、髪を掻きむしって嘆きます。

「「ぁぁ……っ。ぁぁ……っっ」」
「ぅぁぁぁぁ……! ぁぁぁぁぁ……!!」

 父、母、息子。3人はすでに、大きなショックを受けていますが――。残念ながら、まだ終わってはくれません。
 その夜から1週間後。父ジャンのもとを、弁護士たちを伴った彼の弟・ライナックが訪ねてきて――

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