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第12話 昼休みに潜む、罠 アメリ視点(2)

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「ごめんなさ~い。すっかり忘れていて、さっき思い出したんですよぉ~」

 怒りを爆発させるぞ作戦、その第1弾っ。わたしはニヤニヤしながら、ペコリッと頭を下げた。

「……は? 忘れた!? 今、そう言いましたの!?」
「はい、そう言いました。教室内で楽しいコトがあって、ついつい頭の中から消えちゃってたんですよ~。反省してま~す」

 ワザと軽い口調で言い放って、顔を上げると――あはっ。目が見開かれていて、すごい勢いで睨んでくるようになってましたっ。

「わたくし生まれて初めて、反省の色が微塵もない反省を見ましたわ。……貴方。自分の立場を分かっていますの?」
「わたしは子爵家の娘で、そっちは侯爵家の娘。ですよね? ちゃんと分かってますから、このお話は終わりで、ええっと……そうそう。新しいアイディアについてのお話を始めますね」

 作戦第2弾の『そっち&娘呼ばわり』を使って、セレステ様の目が充血するようになった。だけどなんにも怖くないから、わたしのペースで進めていく。

「一昨日――じゃなくってその前、3日前でしたっけ。新しいのを提示して、添削をしてもらうコトになってましたよね? 確か」
「確かじゃなくて間違いなくそうだったでしょ!! 貴方と話しているとイライラしてたまらないわ!! ペチャクチャ喋っていないでさっさと出しなさい!!」
「……………………。……………………」
「どうしたのよ!? 黙っていないで早く出しなさい!!」
「……………………もう一度、ごめんなさ~い。実を言うと、アイディアを持って来てないんです~っ」

 ここで、作戦第3弾を使用っ。たっぷりと焦らしておいて、さっきより慇懃無礼にお辞儀をした。

「その日も入れてたった3日じゃ浮かびませんよ~。一生懸命考えたんですけど、期間が短すぎるせいで思い浮かばなかったんです。なので半分は、セレステ様の責任ですよね?」
「……は? はあ!? 貴方っ、本気で言ってますの!? 急にどうしてしまった――」
「ふざけて言っているように、見えますか? 見えませんよね? もう、無駄な時間を使わせないでくださいよ。ハッキリ言って迷惑なので」

 冷静にさせたら、ダメ。とにかく、怒りで一杯にさせないといけないから――。わたしはオーバーに肩を竦めて、そうしたら、セレステ様のお顔がトマトみたいになっちゃった。
 こういうのは、思っていた以上に効果覿面。上手い具合に一杯になって、あと少しで爆発しそう。

「時間は有限なんですよ? もっと賢く使いましょう。ね? セレステ様」
「………………」
「あれ? お返事がありませんね? 聞こえていないんですか? ねえ、お返事をしてくださいよ。ねえねえねえ」

 第4弾、トドメの作戦。わたしは首を大きく傾げながら歩み寄り、煽りつつ目の前に――すぐに手を出せる位置に立って、ぐいっと顔を覗き込む。

((圧倒的な格下があんな風に言い出して、こんな態度を取ってるんだもん。ムカつきますよね? もう、我慢の限界、ですよね?))

 その予想は、的中っ。更にニマニマを追加すると絶叫が響き渡って、

 バシン!!

 わたしの頬に、鋭い痛みが走ったのでしたっ。

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