殿下、妃殿下。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ

柚木ゆず

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13(1) エリル・ハーマ視点

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「侯爵家当主アルズ・エサト、その婚約者エリル・ハーマ。ライナス・カウスズおよびサーヤ・ルリタの暗殺未遂など4つの罪により、極刑を言い渡す」

 王都にある裁判所。わたくしとアルド様は後ろ手に拘束され、涙を流しながら宣告を聞いていました。
 この涙は懺悔の涙ではなく、悔し涙。
 今言い渡された内容は、全てが嘘――。わたくし達は冤罪を背負わされ、それを証明できなかったため、このような涙を流しているのです。

『俺達に殺意などない!! やったのは他の参加者だ!!』
『そもそも賄賂なんて受け取っていませんわっ!! 何かの間違いですわっ!!』

 連行されてから何度も、何百何千回も言い続けた。わたくし達は声が枯れるくらい、必死に訴えた。
 なのに、誰も信じてくれない。

『証拠がある』
『見苦しい』
『うるさい』
『黙っていろ』

 いくら叫んでも数文字でさらっと返され、わたくし達の処遇が確定してしまった……。

「まっ、待ってくれ!! 待ってください裁判長!! 一度だけっ、一分だけでもいいですからっっ!! 俺達の言い分を聞いてくださいっっっ!!」
「それは、許されぬ事だ。棄却する」
「でっ、でしたらっ! わたくし達が駄目というのであればっ、カウスズ様とサーヤ様に話を聞いてくださいっ!! お願い致しますっ!!」

 わたくしとサーヤ様は、付き合いの長い友人。お互いを理解しています。
 きっとあの方は、困惑してくれている。よく分からない証拠があっても、濡れ衣だと信じてくれています! だから……っ。被害者から待ったがかかれば、再捜査をして疑いを晴らせるはず……!

「サーヤ様は物証があっても、わたくし達を信じ味方をしてくれますわっ!! 最後のお願いとして、この言葉をお伝えくださいましっ!!」

 ロドリグ陛下の暗殺未遂事件以降、裁判では精神面を考慮して被害者は同席しない。直接謝罪や懺悔をする機会も、与えられないようになっている。
 けれどあの方は間違いなく、この疑惑を怪しんでくれていますから……っ。声さえ届けば、即座に応じてくれますわ……っっ。

「どうかご慈悲をっ!! せめてこの懇願を叶えて――」
「よかろう。丁度両者も、お主達との再会を望んでおったのだ。特例として、この場に呼び寄せてやろうではないか」

 突然扉が開き、法廷に国王陛下がいらっしゃった。
 こんなことは、本来は有り得ない。思っていた通り、サーヤ様はわたくしを信じてくださっていて……っ。陛下に掛け合ってくれて、この狂った裁判を停めようとしてくれていたのですわ……!

(アルズ様、大丈夫ですわっ。サーヤ様達が来てくだされば、状況は変わりますわっ!)
(そっ、そうだな……! 持つべきものは友人……っ。有難い……!)

 お互いに隣を見合って大きく頷き、あっという間に心境は一転。心には希望が生まれ、光が差し込むようになりました。

「ありがとうございますわ、サーヤ様……っ。早く、お会いしたい……っ」

 嬉し涙を流しながら扉を見ていると、陛下に促されて裁判の関係者が次々に退室していきます。
 え……? あれ……?
 どうして、法廷を出ていくんですの……?

「これから起こる事は、内密、が望ましいのだよ。では、お招きするとしよう」

 戸惑っていると陛下は敬意を払って扉を開け、陛下と入れ替わる形でサーヤ様とカウスズ様が現れました。
 そうしてお二人はそのままわたくし達の前までやってきて、開口一番サーヤ様が――。更にわたくし達を戸惑わせる言葉を、穏やかな顔のまま口にしたのでした。

「エリル・ハーマ様、アルズ・エサト様。お久しぶりですね。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ」

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