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第5話 2人目の王子様 アリス視点(1)
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「アリス、落ち着いて聞いて欲しい……。こちらの方――オーレリアン・マナリスド様も、お前と約束をしたと仰られているのだよ……」
「久しぶりだね、アリス。あの日の約束通り、君を迎えに来たよ」
占い師のような真白のローブを纏われた、長い金色の髪と緑色の瞳を持つ長背の男性。お父様に続いてそんな方が現れ、エメラルドのような瞳が柔らかく細まりました。
……王子様と同じ特徴を持たれた人が、『約束を』と口にしていらっしゃった……。モアメッドお父様がそうなってしまわれるのは、当然でした。
「リーエンデルア卿から、状況は伺っているよ。なかなかに面白いことになっているね」
品と気さくさを兼ね備えた、白馬の王子様。そんなお顔がアルチュール様へと動き、呆れまじりの笑みが浮かびました。
「まさかすでに、約束の人が現れていただなんて。……ファズエルス公爵家の、アルチュール様と伺いました。ファズエルス様。悪質ななりすましは至急、止めていただきたく思います」
「……お前は、何を言っているんだ? その言葉はそっくりそのまま返す。アリスと約束した『王子様』は、貴様ではない。この俺だ!」
視線を受け止めたアルチュール様は即座に椅子から立ち上がり、声を荒らげてローブの方――オーレリアン様へと歩み寄られました。
「あの日偶然出会い、約束をしたのは俺。……貴様は一体、何者なんだ。そもそも所属の国は、身分はなんだ? 貴族なのか? 平民なのか?」
「申し訳ありませんが、僕の身分は無関係者には――貴方がいるこの場では、明かせないのですよ。とはいえそうなると、喋りにくいでしょうしね。格下の貴族と認識していただいて構いません」
アリスには、あとで伝えるからね――。オーレリアン様はそう仰られ、もう一言二言発しようとされていました。ですがそちらは、アルチュール様のお声によって止められてしまいました。
「ふ。低身分故に、堂々と明かせないんだな。実に偽者らしい」
「ええ、そうなのかもしれませんね。けれどそちらは、本物偽者の判断材料とはなりませんよ。どちらが、本物なのか? そちらをこれより、瞭然とさせまし」
「そんな必要はない! 俺達はすでに2時間以上もの間あの時を楽しく振り返り、俺達の間には確固たる絆が生まれているんだっ。……ね、アリス。そんなものは要らないよね? 俺こそが王子様なのだと、信じてくれるよね?」
アルチュール様は身体ごと振り返り、優しい笑顔と共に首を傾げられました。
そう、ですね。わたし達は楽しく振り返り、絆が生まれていました。
ですが――
「両方の言い分を、聞きたく思います。オーレリアン様のお話を伺いたいと、強く思っております」
疑問が2つ、生まれていましたので。わたしは首を、左右に振らせていただきました。
「久しぶりだね、アリス。あの日の約束通り、君を迎えに来たよ」
占い師のような真白のローブを纏われた、長い金色の髪と緑色の瞳を持つ長背の男性。お父様に続いてそんな方が現れ、エメラルドのような瞳が柔らかく細まりました。
……王子様と同じ特徴を持たれた人が、『約束を』と口にしていらっしゃった……。モアメッドお父様がそうなってしまわれるのは、当然でした。
「リーエンデルア卿から、状況は伺っているよ。なかなかに面白いことになっているね」
品と気さくさを兼ね備えた、白馬の王子様。そんなお顔がアルチュール様へと動き、呆れまじりの笑みが浮かびました。
「まさかすでに、約束の人が現れていただなんて。……ファズエルス公爵家の、アルチュール様と伺いました。ファズエルス様。悪質ななりすましは至急、止めていただきたく思います」
「……お前は、何を言っているんだ? その言葉はそっくりそのまま返す。アリスと約束した『王子様』は、貴様ではない。この俺だ!」
視線を受け止めたアルチュール様は即座に椅子から立ち上がり、声を荒らげてローブの方――オーレリアン様へと歩み寄られました。
「あの日偶然出会い、約束をしたのは俺。……貴様は一体、何者なんだ。そもそも所属の国は、身分はなんだ? 貴族なのか? 平民なのか?」
「申し訳ありませんが、僕の身分は無関係者には――貴方がいるこの場では、明かせないのですよ。とはいえそうなると、喋りにくいでしょうしね。格下の貴族と認識していただいて構いません」
アリスには、あとで伝えるからね――。オーレリアン様はそう仰られ、もう一言二言発しようとされていました。ですがそちらは、アルチュール様のお声によって止められてしまいました。
「ふ。低身分故に、堂々と明かせないんだな。実に偽者らしい」
「ええ、そうなのかもしれませんね。けれどそちらは、本物偽者の判断材料とはなりませんよ。どちらが、本物なのか? そちらをこれより、瞭然とさせまし」
「そんな必要はない! 俺達はすでに2時間以上もの間あの時を楽しく振り返り、俺達の間には確固たる絆が生まれているんだっ。……ね、アリス。そんなものは要らないよね? 俺こそが王子様なのだと、信じてくれるよね?」
アルチュール様は身体ごと振り返り、優しい笑顔と共に首を傾げられました。
そう、ですね。わたし達は楽しく振り返り、絆が生まれていました。
ですが――
「両方の言い分を、聞きたく思います。オーレリアン様のお話を伺いたいと、強く思っております」
疑問が2つ、生まれていましたので。わたしは首を、左右に振らせていただきました。
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