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「さ、サーシャ……。どうして、ここに……」
あれから、どのくらい経ったでしょうか? まあ、時間なんてどうでもいいですよね。
とにかく、です。目的の馬車を見つけて進路に降り立つと、血相を変えたハルク様が出てきました。
「肉体の自由を、完全に奪っていたはずだ……。なのになぜ、ここにいる……」
「あれは自制していただけで、あの程度の魔法では私を縛れませんよ。力を開放すれば簡単に消えましたね、お城の皆さんと同じように」
「なっ……!? なっ……っ!? まさか、父上達は……」
「死にましたよ。私の心、もしくは身体を傷付けた方々は、一人残らず殺しました」
私はこう見えて、記憶力が異様にいいんですよね。そのため全員の顔をしっかり覚えていて、しっかりこの世から除去しました。
「私が殺したい相手は、残り一人。目の前にいる、ハルク様一人。覚悟、してくださいねえ?」
「く、来るな……っ。来るんじゃない……っっ! おっ、お前達っ! 俺を守れっ! 次期国王を守るんだっっ!!」
「??? ハルク様は、誰に向かって命令しているのですか? 護衛役の皆さんは、とっくに逃げ出して居ませんよ?」
全滅を聞いた瞬間、顔面蒼白で逃げていきました。あまりに驚きすぎていて、周りが全然見えていなかったようですね。
「あ、アイツら……っ! ぐぅぅぅ……っ」
「残念ながらお仲間は、0。もともと私の足元にも及ばない人達でしたが、そんな方々さえもいなくなった。もう、お・わ・り、ですよ」
「わっ、悪かった! 悪かったサーシャっ! 何もかも反省しているっ!! だから水に流してくれ!!」
どうしようもないと悟るや彼は地面に両膝をつき、顔の前で手を組みました。
はぁ。やはりあの国王様の子供、ですね。言動がほとんど一緒です。
「これはその場凌ぎのウソではないんだっ! 本心っっ! あの判断は間違っていたと、心からそう思っているんだ!」
「……………………」
「思い返せば、打ち明けてくれたのにああしたのは最低だった! キミを裏切る最悪の愚考だった! だけどっ、今は違う! サーシャがそんなにも怒っているのを目の当たりにして、ようやく目が覚めたんだ! 許してくれ!!」
ハルク様は喉が裂けそうなほど声を張り上げ、ブルーの瞳で私を見上げてきます。
「もちろん、婚約の破棄は撤回させてもらう! 俺はこの国の次期王、王なき今は国王だっっ! これから二人でこの国を、ゆくゆくはこの世界を変えていこうっ。いい方向に変えていこうっ!」
「……………………」
「俺ならキミを幸せにできるっ。キミが選んでくれた俺なら、サーシャを幸せにできるっっ。だからもう一度、やり直させて欲しいっっ。全てをなかったことにさせてもらって、また、二人で愛を育んでいこう!」
「……………………。ハルク様」
私はニコリと微笑み、ゆっくりとしゃがむ。両膝をついているハルク様の傍で、彼に目線を合わせました。
「分かりました。実を言うと私も、そう思っていたのですよ」
「サーシャ……っ。許してくれる、んだね……っ! ありがとう……!!」
「いえ、お礼なんて要りませんよ。だって私は、許すつもりなんてありませんから」
私は満面の笑みを浮かべ、彼の肩をポンと叩きます。そうすれば石化の魔法が発動し、ハルク様は足からじわじわと、石になりはじめました。
「ぃぃっ!? サーシャっっ!? どうしてなんだっ!? なっ、なななっ、なかったことにしてくれるんじゃなかったのかっ!?」
「ええ、全てなかったことにしますよ。ただしなかったことにするのは、貴方の魂ですけどね」
この魔法は完全に石になると身体が割れて弾け飛び、同時に魂も弾け飛んで消滅します。即ち輪廻の輪から外れ、完全に消えてしまうというわけですね。
「き、貴様……っ。俺を弄んだなっ! この悪女が!!」
「あらあら。助からないと分かると、本音が出ましたねえ。お顔も、随分と怖くなってますよお?」
「しまっっ……。さ、サーシャ、今のも冗談だよっ! 俺は本当に、心の奥底から反省しているんだっ! もう一度ヨリを戻して、二人で温かい家庭を築こう!!」
「うふふ。嫌、です」
お互いに、愛なんてないんですもの。無理、ですよね。
「さーしゃぁっ!! 頼むっ! 頼みますからっ! 助けてくださいっ! もう首まで石になってるんだ!!」
「はい、見れば分かりますよ。もうじきさようなら、ですね」
「ぁぁぁぁぁっ!! 死にたくない死にたくない死にたくない!! サーシャ様どうかお助けください!!」
「あらあらあら、様付けになりましたね。哀れな方です」
生きるために必死。涙まみれになって、なりふり構わず命乞いをする。
最期にいいものを見せてくれます。
「サーシャ様ぁぁっ!! ご慈悲をっっ! ご慈悲をぉっ!!」
「貴方が裏切らなければ、こんな未来にはなっていなかったのですよ。あの判断を何度も何度も後悔しながら、朽ちてください」
「サーシャ様っ!! サーシャさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! どうかぁっ!! どうかあと一度だけチャンスをくだ」
我武者羅に舌を動かしている最中に口が固まり、やがては全身が石化。そうして石像となったハルク様はやがて縦にヒビが入り、パンっという音を立てて砕け散ったのでした。
あれから、どのくらい経ったでしょうか? まあ、時間なんてどうでもいいですよね。
とにかく、です。目的の馬車を見つけて進路に降り立つと、血相を変えたハルク様が出てきました。
「肉体の自由を、完全に奪っていたはずだ……。なのになぜ、ここにいる……」
「あれは自制していただけで、あの程度の魔法では私を縛れませんよ。力を開放すれば簡単に消えましたね、お城の皆さんと同じように」
「なっ……!? なっ……っ!? まさか、父上達は……」
「死にましたよ。私の心、もしくは身体を傷付けた方々は、一人残らず殺しました」
私はこう見えて、記憶力が異様にいいんですよね。そのため全員の顔をしっかり覚えていて、しっかりこの世から除去しました。
「私が殺したい相手は、残り一人。目の前にいる、ハルク様一人。覚悟、してくださいねえ?」
「く、来るな……っ。来るんじゃない……っっ! おっ、お前達っ! 俺を守れっ! 次期国王を守るんだっっ!!」
「??? ハルク様は、誰に向かって命令しているのですか? 護衛役の皆さんは、とっくに逃げ出して居ませんよ?」
全滅を聞いた瞬間、顔面蒼白で逃げていきました。あまりに驚きすぎていて、周りが全然見えていなかったようですね。
「あ、アイツら……っ! ぐぅぅぅ……っ」
「残念ながらお仲間は、0。もともと私の足元にも及ばない人達でしたが、そんな方々さえもいなくなった。もう、お・わ・り、ですよ」
「わっ、悪かった! 悪かったサーシャっ! 何もかも反省しているっ!! だから水に流してくれ!!」
どうしようもないと悟るや彼は地面に両膝をつき、顔の前で手を組みました。
はぁ。やはりあの国王様の子供、ですね。言動がほとんど一緒です。
「これはその場凌ぎのウソではないんだっ! 本心っっ! あの判断は間違っていたと、心からそう思っているんだ!」
「……………………」
「思い返せば、打ち明けてくれたのにああしたのは最低だった! キミを裏切る最悪の愚考だった! だけどっ、今は違う! サーシャがそんなにも怒っているのを目の当たりにして、ようやく目が覚めたんだ! 許してくれ!!」
ハルク様は喉が裂けそうなほど声を張り上げ、ブルーの瞳で私を見上げてきます。
「もちろん、婚約の破棄は撤回させてもらう! 俺はこの国の次期王、王なき今は国王だっっ! これから二人でこの国を、ゆくゆくはこの世界を変えていこうっ。いい方向に変えていこうっ!」
「……………………」
「俺ならキミを幸せにできるっ。キミが選んでくれた俺なら、サーシャを幸せにできるっっ。だからもう一度、やり直させて欲しいっっ。全てをなかったことにさせてもらって、また、二人で愛を育んでいこう!」
「……………………。ハルク様」
私はニコリと微笑み、ゆっくりとしゃがむ。両膝をついているハルク様の傍で、彼に目線を合わせました。
「分かりました。実を言うと私も、そう思っていたのですよ」
「サーシャ……っ。許してくれる、んだね……っ! ありがとう……!!」
「いえ、お礼なんて要りませんよ。だって私は、許すつもりなんてありませんから」
私は満面の笑みを浮かべ、彼の肩をポンと叩きます。そうすれば石化の魔法が発動し、ハルク様は足からじわじわと、石になりはじめました。
「ぃぃっ!? サーシャっっ!? どうしてなんだっ!? なっ、なななっ、なかったことにしてくれるんじゃなかったのかっ!?」
「ええ、全てなかったことにしますよ。ただしなかったことにするのは、貴方の魂ですけどね」
この魔法は完全に石になると身体が割れて弾け飛び、同時に魂も弾け飛んで消滅します。即ち輪廻の輪から外れ、完全に消えてしまうというわけですね。
「き、貴様……っ。俺を弄んだなっ! この悪女が!!」
「あらあら。助からないと分かると、本音が出ましたねえ。お顔も、随分と怖くなってますよお?」
「しまっっ……。さ、サーシャ、今のも冗談だよっ! 俺は本当に、心の奥底から反省しているんだっ! もう一度ヨリを戻して、二人で温かい家庭を築こう!!」
「うふふ。嫌、です」
お互いに、愛なんてないんですもの。無理、ですよね。
「さーしゃぁっ!! 頼むっ! 頼みますからっ! 助けてくださいっ! もう首まで石になってるんだ!!」
「はい、見れば分かりますよ。もうじきさようなら、ですね」
「ぁぁぁぁぁっ!! 死にたくない死にたくない死にたくない!! サーシャ様どうかお助けください!!」
「あらあらあら、様付けになりましたね。哀れな方です」
生きるために必死。涙まみれになって、なりふり構わず命乞いをする。
最期にいいものを見せてくれます。
「サーシャ様ぁぁっ!! ご慈悲をっっ! ご慈悲をぉっ!!」
「貴方が裏切らなければ、こんな未来にはなっていなかったのですよ。あの判断を何度も何度も後悔しながら、朽ちてください」
「サーシャ様っ!! サーシャさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! どうかぁっ!! どうかあと一度だけチャンスをくだ」
我武者羅に舌を動かしている最中に口が固まり、やがては全身が石化。そうして石像となったハルク様はやがて縦にヒビが入り、パンっという音を立てて砕け散ったのでした。
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