私がずっと幸せだと思っていたことは、幸せではなかったようです

柚木ゆず

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第1話 突然の来訪者 ジゼル視点(3)

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「リヴェド様……?」
「魅了は、結構厄介な呪術でね。外部から干渉するだけじゃ、解けないんだよ」

 次のステップ。そちらの意味が分からず首を傾げていると、私にも理解できるように説明をしてくださりました。

 魅了というものの存在を、認識する。
 かけられた人間が、現状に違和感を覚え始める。

 その2点がないと、何をやっても無意味だそうです。

「そこでああやって喋っていて、無事その条件を満たした。だから、次のステップに進めると言ったんだよ」
「……………………」
「今の君の状態なら、この説明を受けても納得できない。それどころか、俺と自分に対して怒りを覚えてきているよね?」
「……………………はい。仰る通りです」

 まだコルベット様を疑うの――。失礼な人――。私も私です――。どうして最愛の方を信用できないの――。そんな感情が、湧き上がってきています。

「それも魅了によるもので、魅了が消えたら一緒に全てが消えてくれる。……これからそれを、目に見える形で証明してあげるよ」

 部屋の中央にいらっしゃったリヴェド様は、ゆっくりと前進。引き続きニコニコとした表情を携えられたまま近づかれ、私の目の前で――30センチほどの距離で、立ち止まりました。

「俺は呪術の除去、つまり魅了の除去が可能なんだ。そこで今から解呪を行うんだけど、作業中に動かれたら最悪二度と消せなくなってしまう。俺が『OK』と言うまで、絶対に動かないでね」
「…………承知いたしました」

 この方を信用する気持ちと信用しない気持ちがあって、後者の感情の方が多くありました。ですがそのバランスは続けて仰られた『効果がなかったらすぐに去ると約束するよ』によって変動し、私は静かに頷きを返しました。

「うん、じゃあ始めるね。――――。――――。――――――」

 私の額に右の手のひらを当てた状態で、不可思議な言語が紡がれてゆきます。

「――――。――――。――――――。――――――――。『解』」

 そんな時が1分ほど続いたあと、初めて私にも理解できる言葉が出てきました。そして――その瞬間、でした。

 ごぽり、と。

 身体から何かが抜け出るような感覚があり、直後に「OK」というお声がやってきました。

「解呪作業は、以上で終わりだよ。……さて、改めて振り返ってみよう。あの夜の判断は、おかしい? それとも、おかしくない?」
「……………………おか、しい。おかしいですっ!」

 ほぼ初対面の方に対し、あのようなお返事をするなんてありえません。
 それに、それに……!

『ジゼル、お前を気に入った。俺のものになれ』

『どうだ、この景色は! こんな絶景、俺が連れてきてやらなかったら絶対に目にはできなかったんだぞ。感謝しろよ』

『はぁ、なんなんだこの誕生日プレゼントは。手編みのマフラーなんて要らないんだよ。今度からはもっとマシなものにしろ、いいな?』

 このようなことを仰る方を好きになって、大喜びしていた。それも、あり得ないこと。

「これまでずっと、気が付きませんでしたが……。私は1年間、異様なことを繰り返していましたっ!」

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