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第1話 突然の来訪者 ジゼル視点(2)
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「オーラ……? みりょう……?」
「魅了とは、相手を夢中にさせる効果を持つ一種の呪術。そんなものがかけられてしまっているから、君は全てに対して幸せに感じてしまっているんだよ」
それによって私は、コルベット様に対して従順になっていて……。実際はまるで幸せな状況ではないにもかかわらず、そのように感じている……そうです。
「そ、そんなことはありませんっ。私が、幸せに感じているのはっ。実際に幸せな状況だからです!」
「というのは、間違っている。ソレは自分だけが感じているもの。君は思い当たる節があるはずだよ」
左右に首を降ると同じように首振りが返ってきて、? リヴェド様は床へと視線を向けました。
「この下にいる当主夫妻、つまり君の両親。彼らはコルベット・バフェテンスが絡む時、いつも不安げな顔をしていたはずだよ。違うかな?」
「…………ちがい、ません。ですがっ、その理由は違いますっ。きっと別の理由でそうなっていて、コルベット様は無関係ですっ」
なぜならあの方は、あんなにもお優しくて立派な御方なのですから。お二人が心配、不安視をされる事由はありません。
「そっか、じゃあ一つ質問をしようか。あの日のことを――コルベットに告白されて、彼を受け入れた日のことを思い出してみて。……ちゃんと、思い出せたかな?」
「…………はい。思い出しました」
コルベット様にとってはお父様のご友人で、私にとってはお父様の恩人である、ワヤニック公爵者様主催の舞踏会。そちらに参加した夜のことを、しっかりと思い返しました。
「なら、そんな君に尋ねたい。どうして君は、ほぼ面識がなかった相手の告白を即座に受け入れたのかな? よく知らない相手なのに『即答』は、おかしいと思わないかい?」
「……おかしいとは、思いません。きっと本能的に、コルベット様のお人柄に惹かれたのだと思います」
「ああ、そう。でもさ、いくら本能的に惹かれても、いきなり結婚を約束はしないんじゃないかな? だって相手のことを、相手の『家』のことを、何も知らないんだよ? いくら興味を持ち始めていても、そこを飛ばすなんてあり得ないことだとは思わないかい? 伯爵令嬢なら、猶更だとは思わないかい?」
君も貴族なら、結婚がどういう意味を持つか分かっているはずだよ――。どんな事情があれ、今日まで貴族教育を受けてきた者がこんな形で飛びつくかな?――などなど。続いて計7つの疑問が出てきて…………確かに、そう、ですね。
今まで、まったく気が付きませんでしたが…………。改めて考えてみれば、リスキーな選択をしていました。
でも……。
やっぱり、私の選択は間違っていないような気がします。
けど――。
やっぱり、間違っているような気がします。
((どっち? どちらが正しいのでしょうか?))
自分のことなのに、自分の考えが分からなくて……。そんな状況に陥って――いた、その時でした。
「よし。これなら次にステップに進めるね」
そんな姿を静かに眺められていたリヴェド様が、パチンと指を鳴らしたのでした。
「魅了とは、相手を夢中にさせる効果を持つ一種の呪術。そんなものがかけられてしまっているから、君は全てに対して幸せに感じてしまっているんだよ」
それによって私は、コルベット様に対して従順になっていて……。実際はまるで幸せな状況ではないにもかかわらず、そのように感じている……そうです。
「そ、そんなことはありませんっ。私が、幸せに感じているのはっ。実際に幸せな状況だからです!」
「というのは、間違っている。ソレは自分だけが感じているもの。君は思い当たる節があるはずだよ」
左右に首を降ると同じように首振りが返ってきて、? リヴェド様は床へと視線を向けました。
「この下にいる当主夫妻、つまり君の両親。彼らはコルベット・バフェテンスが絡む時、いつも不安げな顔をしていたはずだよ。違うかな?」
「…………ちがい、ません。ですがっ、その理由は違いますっ。きっと別の理由でそうなっていて、コルベット様は無関係ですっ」
なぜならあの方は、あんなにもお優しくて立派な御方なのですから。お二人が心配、不安視をされる事由はありません。
「そっか、じゃあ一つ質問をしようか。あの日のことを――コルベットに告白されて、彼を受け入れた日のことを思い出してみて。……ちゃんと、思い出せたかな?」
「…………はい。思い出しました」
コルベット様にとってはお父様のご友人で、私にとってはお父様の恩人である、ワヤニック公爵者様主催の舞踏会。そちらに参加した夜のことを、しっかりと思い返しました。
「なら、そんな君に尋ねたい。どうして君は、ほぼ面識がなかった相手の告白を即座に受け入れたのかな? よく知らない相手なのに『即答』は、おかしいと思わないかい?」
「……おかしいとは、思いません。きっと本能的に、コルベット様のお人柄に惹かれたのだと思います」
「ああ、そう。でもさ、いくら本能的に惹かれても、いきなり結婚を約束はしないんじゃないかな? だって相手のことを、相手の『家』のことを、何も知らないんだよ? いくら興味を持ち始めていても、そこを飛ばすなんてあり得ないことだとは思わないかい? 伯爵令嬢なら、猶更だとは思わないかい?」
君も貴族なら、結婚がどういう意味を持つか分かっているはずだよ――。どんな事情があれ、今日まで貴族教育を受けてきた者がこんな形で飛びつくかな?――などなど。続いて計7つの疑問が出てきて…………確かに、そう、ですね。
今まで、まったく気が付きませんでしたが…………。改めて考えてみれば、リスキーな選択をしていました。
でも……。
やっぱり、私の選択は間違っていないような気がします。
けど――。
やっぱり、間違っているような気がします。
((どっち? どちらが正しいのでしょうか?))
自分のことなのに、自分の考えが分からなくて……。そんな状況に陥って――いた、その時でした。
「よし。これなら次にステップに進めるね」
そんな姿を静かに眺められていたリヴェド様が、パチンと指を鳴らしたのでした。
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