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第12話 翌日~テデファリゼ邸内での2つの反応~ オーガスティン&ザラ視点(1)

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「…………おい、ザラ……。なんなんだ、これは……!?」

 午前7時過ぎのことだった。突然ニーザリア卿夫妻と共にザラがやって来て、早朝の来訪を計4度謝罪したあと、コイツはおかしなものを差し出しおかしなことを言い出した。

「オーガスティン様、やっぱり貴方様とお姉様は相思相愛でございました。こちらがその証拠でございますわ」

 ザラが俺に手渡してきたのは、レナエルからの手紙で……。そこには、秘密裏に交際を行っていたと、記されていたのだ……。

「俺達が、ずっと交際をしていた……!? あの日はデートを行ったあと、お前達家族に関係を打ち明けるつもりもあっただと……!?」
「……どうしても気になり、お姉様に確認を行ってみましたら……。そのような内容のお手紙が、返ってまいりました」

 …………こいつを、レナエルが自ら書いただと…………!? あり得ない!!

『高級なネックレスやリング、イヤリング、なんだって与えてやる。おまけに侯爵夫人になって、伯爵以下の人間に威張れるようになるんだぞ? 最高だよな? 断るはずがないよな?』
『……申し訳ございません。私は現在どなたとも交際を行う予定はなく、オーガスティン様は大変魅力的な男性ではあるのですが、お断りをさせて――』

 アイツはあの夜、こんな風に拒否をしているんだぞ!! これが、レナエルの意思によって書かれた手紙であるはずがない!
 こいつは――


 〇〇


(やったな、ザラ)《やったわね、ザラ》
(ええ。これでやっと、今度こそ関係を絶てますわ)

 レナエルに書かせた手紙をお渡ししたわたくしは、オーガスティン様に気付かれないようにお父様お母様と胸を撫で下ろしていました。
 そこにあるのはレナエル直筆で、本人がしっかりとオーガスティン様の言い分を否定しているんですもの。これ以上否定を続けることはできませんわ。

((嘘を吐いてでも、わたくしと一緒に居たいと思っていただける。それはとても幸せなことなのだけれど…………ごめんなさい、オーガスティン様。貴方様の幼馴染は、危険人物なんですの))

 あの方の反感を買えば、悲惨な目に遭ってしまいますの。ですのでわたくしは不承不承、オーガスティン様とのご縁を――

「ふざけるな!! 貴様らどういうつもりだ!?」

 ――ご縁を絶ちますわ。そう思っていたら、オーガスティン様は顔を真っ赤にして大声を上げられた。
 …………え? え……?

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