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エピローグ 少し前の出来事~奇跡?~ 俯瞰視点
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「? レオ様? どうかされましたか?」
それは、アンジェリーヌとストロベリーブロンドの美男子が――モイトル子爵家の次男レオが、フォルート邸のガーデンテーブルでお喋りをしていた時でした。にこやかな笑みを浮かべてアンジェリーヌの話を聞いていた彼の顔が、突然固まったのです。
「……アンジェリーヌ様の御姿が、元に戻りました……。こ、こちらをご覧くださいっ」
「え? そ、そんなことが――!! わたし、です……。わたしが居ます……!」
レオが懐から取り出した手鏡を覗き込んでみると、そこにあったのは1か月前までの自分の姿。肌も目も鼻も口も髪の毛も、何もかもが戻っていたのです。
「わたしはラヴェール様と、契約を交わしました……。なのに、なぜ……? このような――っ!!」
《遅くなってごめんなさいね。様子を見に来てあの男の裏切りを知り、たった今契約はなかったことにしたわ。実は裏切りが発生した場合は神が契約を取り消すというルールがあって、これは規則なのよ。だから気に病む必要はないわ。……アンジェリーヌ、貴方に幸あらんことを》
「??? アンジェリーヌ様……?」
「…………理由は立った今、ラヴェール様が教えてくださりました。神様のルールによって、ラヴェール様が契約を白紙にされたそうです」
本来、そんな決まりは存在していません。
これは、アンジェリーヌのような人間が罪悪感を覚えないための嘘。これまでもラヴェールはそうやって、契約を交わし裏切られた者達を慮ってきたのです。
「そうでしたか。……あんなにも懸命になられた人が、辛い思いをする……。そんな未来は納得できるはずがなく、ホッとしております」
かつてマズトが言っていた、『祈祷の目撃者』。それこそがレオ。
体調不良の祖父の回復を願って湖を訪れた際に、偶然アンジェリーヌの姿を――変わり果てる瞬間を目撃し、彼は深く尊敬の念を抱くようになりました。そのためその後の様子が気になってフォルート邸を訪ね――
『解消だなんて、信じられない……。あまりに愚かだ……!』
『醜い? とんでもない。僕の目には高貴な姿に映っていますよ。だってそのお姿は、思い遣りの結晶なのですから』
『人前に出られていないと、仰っていましたよね? よろしければ僕を話し相手にしてはいただけませんか? 貴方様のような御心を持った人と話す時間はとても心地よいのですよ』
――レオは強く尊敬の念を抱いているため外見で態度が変わることはなく、そんな提案があり2人は週末に会ってお喋りをするようになっていました。
レオは心からアンジェリーヌの幸せを願っており、目尻がふわりと下がりました。
「おめでとうございます。これからはまた、世界が広がりますね」
「はい……! ありがとうございます……!! でも……」
「え?」
「どんなに世界が広がっても、レオ様との時間は……大切にしたい、と思っておりまして……。これからも、お喋りをしていただけませんか?」
「よろこんで。これからも是非、末永くよろしくお願い致します」
ふたり仲良く微笑み合って、幸せそうに握手を交わす。
そんな彼女達はまだ、知りません。
それから2年後にふたりは結婚し、この国レファルでも有名なおしどり夫婦になることを――。
それは、アンジェリーヌとストロベリーブロンドの美男子が――モイトル子爵家の次男レオが、フォルート邸のガーデンテーブルでお喋りをしていた時でした。にこやかな笑みを浮かべてアンジェリーヌの話を聞いていた彼の顔が、突然固まったのです。
「……アンジェリーヌ様の御姿が、元に戻りました……。こ、こちらをご覧くださいっ」
「え? そ、そんなことが――!! わたし、です……。わたしが居ます……!」
レオが懐から取り出した手鏡を覗き込んでみると、そこにあったのは1か月前までの自分の姿。肌も目も鼻も口も髪の毛も、何もかもが戻っていたのです。
「わたしはラヴェール様と、契約を交わしました……。なのに、なぜ……? このような――っ!!」
《遅くなってごめんなさいね。様子を見に来てあの男の裏切りを知り、たった今契約はなかったことにしたわ。実は裏切りが発生した場合は神が契約を取り消すというルールがあって、これは規則なのよ。だから気に病む必要はないわ。……アンジェリーヌ、貴方に幸あらんことを》
「??? アンジェリーヌ様……?」
「…………理由は立った今、ラヴェール様が教えてくださりました。神様のルールによって、ラヴェール様が契約を白紙にされたそうです」
本来、そんな決まりは存在していません。
これは、アンジェリーヌのような人間が罪悪感を覚えないための嘘。これまでもラヴェールはそうやって、契約を交わし裏切られた者達を慮ってきたのです。
「そうでしたか。……あんなにも懸命になられた人が、辛い思いをする……。そんな未来は納得できるはずがなく、ホッとしております」
かつてマズトが言っていた、『祈祷の目撃者』。それこそがレオ。
体調不良の祖父の回復を願って湖を訪れた際に、偶然アンジェリーヌの姿を――変わり果てる瞬間を目撃し、彼は深く尊敬の念を抱くようになりました。そのためその後の様子が気になってフォルート邸を訪ね――
『解消だなんて、信じられない……。あまりに愚かだ……!』
『醜い? とんでもない。僕の目には高貴な姿に映っていますよ。だってそのお姿は、思い遣りの結晶なのですから』
『人前に出られていないと、仰っていましたよね? よろしければ僕を話し相手にしてはいただけませんか? 貴方様のような御心を持った人と話す時間はとても心地よいのですよ』
――レオは強く尊敬の念を抱いているため外見で態度が変わることはなく、そんな提案があり2人は週末に会ってお喋りをするようになっていました。
レオは心からアンジェリーヌの幸せを願っており、目尻がふわりと下がりました。
「おめでとうございます。これからはまた、世界が広がりますね」
「はい……! ありがとうございます……!! でも……」
「え?」
「どんなに世界が広がっても、レオ様との時間は……大切にしたい、と思っておりまして……。これからも、お喋りをしていただけませんか?」
「よろこんで。これからも是非、末永くよろしくお願い致します」
ふたり仲良く微笑み合って、幸せそうに握手を交わす。
そんな彼女達はまだ、知りません。
それから2年後にふたりは結婚し、この国レファルでも有名なおしどり夫婦になることを――。
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