裏切られた令嬢と裏切った令息の、その後の人生

柚木ゆず

文字の大きさ
15 / 15

エピローグ 少し前の出来事~奇跡?~ 俯瞰視点

しおりを挟む
「? レオ様? どうかされましたか?」

 それは、アンジェリーヌとストロベリーブロンドの美男子が――モイトル子爵家の次男レオが、フォルート邸のガーデンテーブルでお喋りをしていた時でした。にこやかな笑みを浮かべてアンジェリーヌの話を聞いていた彼の顔が、突然固まったのです。

「……アンジェリーヌ様の御姿が、元に戻りました……。こ、こちらをご覧くださいっ」
「え? そ、そんなことが――!! わたし、です……。わたしが居ます……!」

 レオが懐から取り出した手鏡を覗き込んでみると、そこにあったのは1か月前までの自分の姿。肌も目も鼻も口も髪の毛も、何もかもが戻っていたのです。

「わたしはラヴェール様と、契約を交わしました……。なのに、なぜ……? このような――っ!!」

《遅くなってごめんなさいね。様子を見に来てあの男の裏切りを知り、たった今契約はなかったことにしたわ。実は裏切りが発生した場合は神が契約を取り消す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というルールがあって、これは規則なのよ。だから気に病む必要はないわ。……アンジェリーヌ、貴方に幸あらんことを》

「??? アンジェリーヌ様……?」
「…………理由は立った今、ラヴェール様が教えてくださりました。神様のルールによって、ラヴェール様が契約を白紙にされたそうです」

 本来、そんな決まりは存在していません。
 これは、アンジェリーヌのような人間が罪悪感を覚えないための嘘。これまでもラヴェールはそうやって、契約を交わし裏切られた者達を慮ってきたのです。

「そうでしたか。……あんなにも懸命になられた人が、辛い思いをする……。そんな未来は納得できるはずがなく、ホッとしております」

 かつてマズトが言っていた、『祈祷の目撃者』。それこそがレオ。
 体調不良の祖父の回復を願って湖を訪れた際に、偶然アンジェリーヌの姿を――変わり果てる瞬間を目撃し、彼は深く尊敬の念を抱くようになりました。そのためその後の様子が気になってフォルート邸を訪ね――

『解消だなんて、信じられない……。あまりに愚かだ……!』

『醜い? とんでもない。僕の目には高貴な姿に映っていますよ。だってそのお姿は、思い遣りの結晶なのですから』

『人前に出られていないと、仰っていましたよね? よろしければ僕を話し相手にしてはいただけませんか? 貴方様のような御心を持った人と話す時間はとても心地よいのですよ』

 ――レオは強く尊敬の念を抱いているため外見で態度が変わることはなく、そんな提案があり2人は週末に会ってお喋りをするようになっていました。
 レオは心からアンジェリーヌの幸せを願っており、目尻がふわりと下がりました。

「おめでとうございます。これからはまた、世界が広がりますね」
「はい……! ありがとうございます……!! でも……」
「え?」
「どんなに世界が広がっても、レオ様との時間は……大切にしたい、と思っておりまして……。これからも、お喋りをしていただけませんか?」
「よろこんで。これからも是非、末永くよろしくお願い致します」

 ふたり仲良く微笑み合って、幸せそうに握手を交わす。
 そんな彼女達はまだ、知りません。


 それから2年後にふたりは結婚し、この国レファルでも有名なおしどり夫婦になることを――。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

蓮
2024.12.12
ネタバレ含む
2024.12.20 柚木ゆず

蓮様。わざわざ感想をくださりありがとうございます(20日、改めてお礼をさせていただいております)。

あんな風にしてもらっていたのに、このような態度。仰る通りですよね。
あまりにも酷い、ありえないことでした。
でもそれは、彼にとっては最悪の選択、なようでして……?



いつもお気遣いのお言葉をくださり、本当にありがとうございます。
おかげさまである程度回復いたしまして、今日からしっかりと活動させていただきます。

解除
蓮
2024.12.11
ネタバレ含む
2024.12.20 柚木ゆず

蓮様。わざわざ感想をくださりありがとうございます(12月20日、改めてお礼をさせていただいております)。

彼、そして父親。腹立つことばかりですよね……。
信じられない反応の連続……。
こんなことをして、許されるのでしょうかね……?

解除
彼方向井
2024.12.10 彼方向井
ネタバレ含む
2024.12.20 柚木ゆず

彼方向井様。わざわざ感想をくださりありがとうございます(20日、改めてお礼をさせていただいております)。

はい……。最悪、な対応でした。
あんなにも必死になったのに、これ。本当に、ひどいと思います。
こんなことをしたら、バチが当たりそうなきがしますが……??

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。

reva
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。 けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。 ​絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。 「君は決して平凡なんかじゃない」 誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。 ​政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。 玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。 「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」 ――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。 結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに 「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。