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第5話 おねがい シブリアン視点
しおりを挟む「ロバートっ! 頼みたいことってなんなんだ!? なにをしたらいいんだ!?」
「シブリアン。お前の屋敷には、『ローレック記念硬貨』があるよな?」
7つ離れた国の開国を記念して作られたとされている、純銀製のコイン。世界に1000枚しかないと言われているなかなかに貴重なもので、父上が30年近く探して去年の春にやっと手に入ったものだ。
「…………まさか……」
「そう、そいつが欲しい。父上が欲しがっているものの中に『ローレック記念硬貨』があって、ソレをプレゼントして優遇してもらいたいんだよ」
ロバートには双子の兄がいて、要するに『どちらが誰が家督を継ぐか』を競い合っている。兄弟は能力がほぼ同じであとは印象で決まる状態のため、どうしてもここで喜ばせておく必要があるらしい……。
「もうそろそろ決定打を入れておかないと、マズイ状況なんだ。だからローレック記念硬貨に目をつけ、今回の計画を遂行したんだ」
「………………っ」
「そいつがあればオレが選ばれる。……言うことを聞いてくれたら将来の平穏が約束されるんだ。協力してくれるよな?」
「……………………わ、分かった。協力する」
父上にこの件を正直に話したら、捨てられる。だからコッソリ盗み出すしかないのだが……あのコインは父上の執務室に飾られていて、盗み出すのはとてつもなく難しい。
条件、状況は最悪だ。
でも、それでも……。やるしかない。
それしか、将来を守れる方法はないのだから……。
「けど、簡単に実行できるものじゃない。ある程度時間をくれ」
「もちろん、こっちだってすぐ出来るとは思ってはいない。どのくらい欲しい」
「……ちょっと待ってくれ。考える」
コインは執務室にあるから、やろうと思えばいつでも動ける。ただその際に精巧なレプリカを置いておかないと、すぐ気付かれて犯人探しが始まってしまう。
運悪くウチの使用人は全員が父上と付き合いが長くて、疑いの目が俺に向いてしまう可能性は充分にあるからな……。
対策はしっかりしておかないといけない。
「……ダミーのコインを用意する時間が欲しい。そういうツテは持っていないから、どのくらい時間がかかるか分からない」
「安心しろ、そのツテはこっちが持っている。2週間もあれば用意できる」
「そうか! それは助かる! レプリカがあればすぐ――実行は父上たちの動き次第で、それでも一週間以内には出来るはずだ」
「分かった。じゃあそれでいこう。頼んだぞシブリアン」
「俺の未来がかかってるんだ。必ず成功させるさ」
ロバートとクロエを痛い目に遭わせてやりたいが、それはあと。写真を回収してからだ。
俺は一旦怒気を頭の隅に追いやり、秘密裏に準備を始め――。やがて2週間が経ち俺の手元にレプリカが到着し、
「双子の兄のヤツも同じことを考えていて、賄賂を贈りやがった。もう時間がない。大至急行ってくれ」
「わ、分かった。すぐ始める」
即日、入れ替え作戦の決行が決まったのだった。
((頼むぞ。上手くいってくれ……!!))
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