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第12話 クロエの一年間 俯瞰視点(1)

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「なんですって!? 報酬は渡さない!?」

 とある建物の中――成功報酬の受け渡しが行われる場所では、クロエの大声が響き渡っていました。

「渡せないって、どういうこと!? なんで渡せないのよ!?」
「決まってるだろうが! 計画が失敗したからだ!!」

 シブリアンが持ってきたコインは、鑑定の結果偽物だと判定された。それによって偽物を渡し騙そうとしたと思われ、激しい怒りを買ってしまった。
 全ての資格と権利は、忌々しい兄に渡ってしまった。
 だからここに来る前に、あの写真と浮気の件をばら撒いてやった。
 それらをロバートは、目を血走らせながら伝えました。

「そんな……。偽物を渡した……!? なんで……!? あの男、何を考えているの――そんなことはどうだっていいわ!! 作戦の失敗はシブリアンのせいでっ、わたしは関係ないじゃないのよ!! わたしは上手くやったんだから報酬を寄こしなさいよ!!」
「報酬は成功したら渡す約束だ!! 渡すわけがないだろう!! 事情がどうであれ失敗したんだから渡せるか!!」
「わたしが関わってる部分は成功してるんだからっ、ちゃんと渡しなさいよ!! そのためにわたしは好きでもない男とずっと一緒に居てっ、何度もキスしたんだからね!?」

 クロエにとってシブリアンは全くタイプではなく、ふたりで過ごす時間はこの上ない苦痛でした。
 そのためクロエはロバートに詰め寄り、目を剥きました。

「支払わないなんて認めないわ!! 出しなさいよ!! 早く!!」
「出すつもりはないと言っただろうが!! 俺はなあ、今は虫の居所が悪いんだ!! ここに報告に来てやっただけでもありがたいと思え!!」
「そんなの知らないわよ!! 反故にするなんて許さないわよ!! 払いなさい!! 払え――」
「これ以上逆らうと貴族の力を使って叩き潰すぞ!? いいだな!? 無残に殺されてもいいんだな!?」
「っっ!!」

 ふざけるな!! 逆ギレするな!!
 そう思いましたが、『貴族の力』を出されてはどうにもできませんでした。
 しぶしぶ、本当にしぶしぶ。心の中で血の涙を流しながら、クロエは受け入れ――クロエの受難は、まだ終わりませんでした。

 そのあと、すぐ――

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