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第6話 ショーの始まり 俯瞰視点(1)
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「今回いただいた依頼は、あまりにも難易度が低いもの。報酬不相応の内容でした故、愉快な前座をご用意しております」
「ほう。なにを用意しているのだ?」
ちょうど、建物の玄関部を通過している時。殺し屋から思わぬ発言があり、エクトルは――残りの2人も、興味津々で首を向けました。
「楽しみが半減してしまいます故に伏せさせていただきますが、ソレは2人の死体を使ったものとなっております。どうぞこちらへ」
「夫と子の死体、か。期待しておるぞ」
「殺しのプロと拷問のプロが用意した、お楽しみ。お手並み拝見ね」
「想像もつきませんわね。楽しみですわ」
3人にとってジェルヴェもランベールも、酷く不愉快な存在。そんな者達が更に酷い目に遭うことが嬉しくて仕方がなく、エクトル達は嬉々としながら広い部屋へと――かつてはリビングスペースとして使用されていたであろう一室へと、足を踏み入れました。
「ん? 中央にある、あの布はなんだ……?」
「お楽しみを隠す、まか不思議な布。あの中に、2人の死体が入っております」
「アレを外すと、全貌が明らかになる仕組みとなっております。どうぞご確認を」
「なるほど、理解した。せっかくだしな、全員で開けるか」
「そうね」
「そうですわね」
3人で部屋の真ん中に置かれている真っ黒な布へと近づき、それぞれ一辺の右側、真ん中、左側を持ちます。
「……メリザンド、ナタリー、いくぞ?」
「ええ」
「はい」
「3、2、1、どん!!」
その状態でカウントダウンを行い、一斉に布を捲り上げ――
「なっ!?」「なあ!?」「ひぃ!?」
――布の下から現れたものを目にした3人は、思わず悲鳴を上げながら後ずさりました。
なぜならば、
「な、なんで……。私が雇った2人が、いるのだ……!?」
現れ出たのは、殺し屋と元傭兵――死体ではなく、意識を失っている殺し屋と元傭兵。真後ろにいる2人がそこに居たため、3人は身体を震わせながら向き直りました。
「2人が、2人……!? ど、どうなっている……!?」
「どっ、どっちが、本物なの……!?」
「こっちが、偽者……!? あっちが、偽者……!? どっちなのよ……!?」
「…………全員からリクエストを受けましたので、お教えしましょうか」
向かって右。殺し屋がクスリと口元を緩め、自身の顔を指差しました。
「偽者は、こちら。僕らは、ニザールとロード――ああ、貴方がたは彼らの本名を知らないのでしたね。僕らはそちらが雇った殺し屋でも元傭兵でもありません。2人に変装している別人ですよ」
「ば、かな……。な、なに、ものだ……!? お前は……お前達は……。なに、もの、なんだ……!?」
「そちらについても、ちゃんとお教えしますよ。隣の彼は僕の部下で、僕はこういう者ですよ」
ベリベリベリと。言われなければ本物と見まごうほどの、精巧なマスクを外すと――
「「「ジェルヴェ!?」」」
――レベッカことマルスリーヌの夫が、現れたのでした。
「ほう。なにを用意しているのだ?」
ちょうど、建物の玄関部を通過している時。殺し屋から思わぬ発言があり、エクトルは――残りの2人も、興味津々で首を向けました。
「楽しみが半減してしまいます故に伏せさせていただきますが、ソレは2人の死体を使ったものとなっております。どうぞこちらへ」
「夫と子の死体、か。期待しておるぞ」
「殺しのプロと拷問のプロが用意した、お楽しみ。お手並み拝見ね」
「想像もつきませんわね。楽しみですわ」
3人にとってジェルヴェもランベールも、酷く不愉快な存在。そんな者達が更に酷い目に遭うことが嬉しくて仕方がなく、エクトル達は嬉々としながら広い部屋へと――かつてはリビングスペースとして使用されていたであろう一室へと、足を踏み入れました。
「ん? 中央にある、あの布はなんだ……?」
「お楽しみを隠す、まか不思議な布。あの中に、2人の死体が入っております」
「アレを外すと、全貌が明らかになる仕組みとなっております。どうぞご確認を」
「なるほど、理解した。せっかくだしな、全員で開けるか」
「そうね」
「そうですわね」
3人で部屋の真ん中に置かれている真っ黒な布へと近づき、それぞれ一辺の右側、真ん中、左側を持ちます。
「……メリザンド、ナタリー、いくぞ?」
「ええ」
「はい」
「3、2、1、どん!!」
その状態でカウントダウンを行い、一斉に布を捲り上げ――
「なっ!?」「なあ!?」「ひぃ!?」
――布の下から現れたものを目にした3人は、思わず悲鳴を上げながら後ずさりました。
なぜならば、
「な、なんで……。私が雇った2人が、いるのだ……!?」
現れ出たのは、殺し屋と元傭兵――死体ではなく、意識を失っている殺し屋と元傭兵。真後ろにいる2人がそこに居たため、3人は身体を震わせながら向き直りました。
「2人が、2人……!? ど、どうなっている……!?」
「どっ、どっちが、本物なの……!?」
「こっちが、偽者……!? あっちが、偽者……!? どっちなのよ……!?」
「…………全員からリクエストを受けましたので、お教えしましょうか」
向かって右。殺し屋がクスリと口元を緩め、自身の顔を指差しました。
「偽者は、こちら。僕らは、ニザールとロード――ああ、貴方がたは彼らの本名を知らないのでしたね。僕らはそちらが雇った殺し屋でも元傭兵でもありません。2人に変装している別人ですよ」
「ば、かな……。な、なに、ものだ……!? お前は……お前達は……。なに、もの、なんだ……!?」
「そちらについても、ちゃんとお教えしますよ。隣の彼は僕の部下で、僕はこういう者ですよ」
ベリベリベリと。言われなければ本物と見まごうほどの、精巧なマスクを外すと――
「「「ジェルヴェ!?」」」
――レベッカことマルスリーヌの夫が、現れたのでした。
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