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5話(6)

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「フィアナ様とルシアン様には、そんな出来事があったのね。いい夫婦で、あたし達もそうなりたいわ」

 お話を終えるとすぐ、メリッサさんの目が柔らかく細まりました。
 途中からなんだか、人様に語るのが恥ずかしくなってきていたのですが……。(そことそこを参考にしましょう)と呟いていたので、やめないで正解だったようです。

「…………主導権を握りつつも、時々は握られる的な流れはいいわよね…………。ソフィア、一点質問をさせて頂戴」
「ど、どうぞ。なんでしょう?」

 猛獣が出現しないエリアに入ったからなのか、はたまた火がついてしまったのか。メリッサさんが、ズィィッと顔を近づけてきました。

「ルシアン様をからかう頻度は、どのくらいだったの? 1日1回くらい? それとも2日に1回くらい?」
「そ、そうですね……。わたしがフィアナの時は、1日に3~4回はやっていましたね。チャンスだと感じたら、即実行しちゃっていました」

 フィアナ時代は『からかい=愛情表現の一種』と考えていて、結構積極的にやっていました。あの後は少しだけ頻度は減ったのですが、やっぱり物足りなくって。結局そのペースを守ってしまいましたね。

「3から、4。……ライアンに対しては、その数は多すぎるかしら……?」
「いえ、適切だと思いますよ。ライアンさんはメリッサさんを前にするとデレちゃいますし、そもそも。すでにメリッサさんは、結構弄ってますしね」
「えっ!? あたし弄ってた!?」
「はい、バッチリ弄ってましたよ。恐らくは、幼馴染だから自覚がなかったのですね……」

 一緒にいる時間が多く、それが当たり前になっている。わたしは意図的に弄っていましたけど、メリッサさんには天性のものがあるようです。

「その調子で過ごし続けていたら、独りでに理想的な形になりますよ。元々お二人は困難を乗り越えている――絆が強いですしね。絶対に幸せな関係を築けますよ」
「そ、そう? それなら、安心だわ。……やっぱりどうしても、結婚となると不安になってしまうのよね」
「その気持ち、よく分かります。フィアナも婚約前後、結婚前後も、色々と悩んでいたんですよ。たとえば――」

 ここからわたし達は所謂ガールズトークを行い、それは無事お城に戻るまで続いたのでした。
 ……安堵もあって途中で少々羽目を外してしまいましたが、ともかく、です。材料は全て揃いました。
 今日手に入れたものは発酵させたあとメリッサさんに丸2日間天日で乾燥してもらって、その後焙煎などを行い粉末状にして、丁寧に混ぜ合われば完成です。
 なので――。予定通り4日後には、全て解決します。

 アシル様の殺害をもくろむ、不届きものの王子様。覚悟、していてくださいね?

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