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第6話 ソフィア視点(1)

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「アシルの回復を祈って、乾杯」「アシル兄様の回復を祈って、乾杯」「アシル兄さんの回復を祈って、乾杯」「アシル兄の回復を祈って、乾杯」
「父上、ヤウヘル、サザレ、ベルス、ありがとうございます。乾杯」

 四日後の、午後7時。城内にある大きな食卓で食事が始まり、グラスの音が軽やかに響き渡りました。
 国王陛下と第2~第4王子殿下、そして今日はアシル様も『堪えて参加』という体で椅子に座っており、予定通り家族全員での夕食が幕を開けました。
 ちなみにこれは家族でのみ行われるので、ライアンさんと私は不参加。申し訳なさそうにしてくださった皆さんに笑みを返し、介抱係であるわたし達はアシル様の後方で控えています。

「噂というものは、実際に起きているが故に広まるものだ。きっとこの席が切っ掛けとなり、元気な姿を見せてくれることだろう」
「そうですね、父上。アシル兄様は、間違いなく復活します」
「兄さんほど真っすぐに生きてきた人間に、不幸が訪れるのはおかしい。そうじゃないと困りますよ」
「アシル兄は、明日起きたら元通り! アシル兄、明日が楽しみですねっ!」
「あはは、そうだね。家族がここまで言ってくれているのだから、翌日は気持ちよく起きられるはずだ」

 5人は和気あいあいと牛肉のサイコロステーキやコーンスープ、彩り豊かなサラダやふっくら焼き立てのパンを食べ、四十分ほどでお料理の時間は終わり。ここからは、デザートのお時間となります。

「今夜はわたしが、腕によりをかけて作りました。どうぞ召し上がれ」

 国王様、アシル様、ヤウヘル様、サザレ様、ベルス様の順に、丸くて黒い小さな塊が5つ載ったお皿を置きました。

「「「「「? これは……?」」」」」
「こちらはとある国で生まれた、トリュフ、というお菓子です。甘さと苦みの調和をお楽しみください」
「ふむ…………異国のものか。いただくとしよう」

 ぱくり。ぱくり。ぱくり。ぱくり。ぱくり。それぞれ神妙な面持ちで口へと運び、咀嚼をするとその表情は一転。等しくパッと笑顔が咲き、2つ目3つ目と口内に放り込んでゆきます。

「確かに甘さと苦みが混ざり合っていて、未経験の至福がもたらされる。これは、うまい……!」
「ええ……っ。美味です……っ」
「こんなものが、存在していたとは……。驚きだ……」
「ウマっ。ウマいよこれっ。いくらでも入っちゃうっっ!」
「うん。魅了されてしまう、味だね」

 国王様を筆頭に全員が同様の感想を浮かべ、あっという間に完食。皆さんのお皿は白一色となりました。

「ソフィア君、素敵なものをありがとう。おかげでいい時間を過ごせた」
「俺も、一瞬にして虜になりました。ありがとうございます」
「大袈裟ではなく、感動しました。感謝、します」
「こんなお菓子があったんだねーっ。ありがとうっ!」
「ソフィア、美味しかったよ。元気になったら、また食べたいな」

 食した5人は等しく満面の笑みを浮かべ、暫くはトリュフ――前世で教わったお菓子の話題で、持ちきりになります。
 ですが。楽しい時間は、いつまでも続きはしません。

「「「……ぁ。れ……?」」」

 アシル様と陛下を除く3人――ヤウヘル様、サザレ様、ベルス様が、急に不安げな様子で胸を押さえ始めました。

(ソフィア様)
(はい。そうですね)

 隣から聞こえた小声に同じボリュームの声を返し、わたしは一歩前に出ます。
 やっと、御三方に効果・・が出てきました。なのでいよいよ、本番の始まりです。
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