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第14話 1年後~ジェラールSide~ ジェラールは 俯瞰視点
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「今日でちょうど、1年か。予想以上に上手くいったな」
「ああ、父上。何もかもが上々。作戦は大成功だ」
かつて伯爵家当主親子が急逝した国『マリトル』の隣にある、『オズレーガ』。その北部にある、落ち着いた雰囲気を持つ街『ランズ』。そこにある一軒家の中では、2人の男性がワイングラスを軽快にぶつけ合っていました。
彼らは投資家である、父リックと息子ジョエル。そう名乗っていますが、本当の名前はケヴィンとジェラール。
2人は究極の選択から逃れるべく事故を装って名前や地位を捨て、その後この街へと移動。貴族時代のツテを使って――換金により生まれたお金を使って違法な手段で新たな身分を用意し、ここを拠点として新たな人生をスタートさせていたのでした。
「俺達は、由緒正しき伯爵家の血を引く者。本気を出せば、僅か1年でここまで回復させられるんだよなぁ」
1本十数万ギルもする赤ワイン、分厚くカットされたステーキ。広くはないものの狭くもない、自分達の持ち家。それらを順に見回し、親子揃って自賛の息を吐き出します。
ジェラール達に投資の才、センスはないものの、持ち出してきた金品は非常に高く売れました。そのため軍資金が大量にあり、リスクもリターンも少ない勝負を続けていてもそれなりの利益が出ていました。
実際は、さして誇れるものではありません。
ですが名前が変わっても、中身は同じ。2人は相変わらず自己肯定力だけは高く、上機嫌で再度乾杯。親子仲良くワインを飲み干しました。
「1年でしっかりとした土台を作る。そのミッションは、予想通り達成できた。そろそろ、女に関するものも始めるとしようか」
これまでは慌ただしく、恋をする暇はありませんでした。そこでジェラールはペロリと舌なめずりをして、親指で後方を指さしました。
「実は、目をつけてる女がいるんだ。ミッション達成を祝し、明日から接触しようと思う」
「うむ、知っておるぞ。果実屋の……ジェシーという女だろう? お前の目線を見ていたら瞭然だとも」
「なんだ、バレていたのか。ああ、そのジェシーだ。絶対、俺のものにしてやる」
「今のお前ならばますます、簡単に落とせるだろう。なにせ一からここまで築いた者の一人なのだからなっ」
2人は改めてお互い、自分自身を絶賛し、仲良く大笑いします。そうしてたっぷりと笑った後は再びグラスになみなみとワインを注いで、みたび乾杯。また上機嫌でグラスを傾け――
「「…………は?」」
――その動きはピタリと止まり、石のように固まってしまいます。なぜならば――
「こんなところにいらっしゃったのですね。探しましたよ、ジェラール様、ケヴィン様」
玄関の扉がこじ開けられ、見覚えのあるキツネ目の男が――マリエットの父・アドンが、5人の大男と共に乗り込んできたのですから。
「ああ、父上。何もかもが上々。作戦は大成功だ」
かつて伯爵家当主親子が急逝した国『マリトル』の隣にある、『オズレーガ』。その北部にある、落ち着いた雰囲気を持つ街『ランズ』。そこにある一軒家の中では、2人の男性がワイングラスを軽快にぶつけ合っていました。
彼らは投資家である、父リックと息子ジョエル。そう名乗っていますが、本当の名前はケヴィンとジェラール。
2人は究極の選択から逃れるべく事故を装って名前や地位を捨て、その後この街へと移動。貴族時代のツテを使って――換金により生まれたお金を使って違法な手段で新たな身分を用意し、ここを拠点として新たな人生をスタートさせていたのでした。
「俺達は、由緒正しき伯爵家の血を引く者。本気を出せば、僅か1年でここまで回復させられるんだよなぁ」
1本十数万ギルもする赤ワイン、分厚くカットされたステーキ。広くはないものの狭くもない、自分達の持ち家。それらを順に見回し、親子揃って自賛の息を吐き出します。
ジェラール達に投資の才、センスはないものの、持ち出してきた金品は非常に高く売れました。そのため軍資金が大量にあり、リスクもリターンも少ない勝負を続けていてもそれなりの利益が出ていました。
実際は、さして誇れるものではありません。
ですが名前が変わっても、中身は同じ。2人は相変わらず自己肯定力だけは高く、上機嫌で再度乾杯。親子仲良くワインを飲み干しました。
「1年でしっかりとした土台を作る。そのミッションは、予想通り達成できた。そろそろ、女に関するものも始めるとしようか」
これまでは慌ただしく、恋をする暇はありませんでした。そこでジェラールはペロリと舌なめずりをして、親指で後方を指さしました。
「実は、目をつけてる女がいるんだ。ミッション達成を祝し、明日から接触しようと思う」
「うむ、知っておるぞ。果実屋の……ジェシーという女だろう? お前の目線を見ていたら瞭然だとも」
「なんだ、バレていたのか。ああ、そのジェシーだ。絶対、俺のものにしてやる」
「今のお前ならばますます、簡単に落とせるだろう。なにせ一からここまで築いた者の一人なのだからなっ」
2人は改めてお互い、自分自身を絶賛し、仲良く大笑いします。そうしてたっぷりと笑った後は再びグラスになみなみとワインを注いで、みたび乾杯。また上機嫌でグラスを傾け――
「「…………は?」」
――その動きはピタリと止まり、石のように固まってしまいます。なぜならば――
「こんなところにいらっしゃったのですね。探しましたよ、ジェラール様、ケヴィン様」
玄関の扉がこじ開けられ、見覚えのあるキツネ目の男が――マリエットの父・アドンが、5人の大男と共に乗り込んできたのですから。
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