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第11話 助け シュザンヌ視点(1)

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「……そんな……。佐々岡様が、いない……」

 おもわず、立ち眩みを覚えてしまいます。
 聖女が行う『祈り』の意味を、重々理解されているはずなのに……。引継ぎをせずに、祖国に帰ってしまうだなんて……。

「はい……。聖女様不在は、最悪と明言していい事態でございます……」
「悲劇発生を防ぐべくただちにシュザンヌ様の捜索隊が結成され、外遊のため動いていた我々も特命を受けて貴方様をお探ししておりました」
「鳥から届いた手紙によって――神殿所属の方々の情報により、隣国に渡られていた――コザレイティア侯爵家を目指されているであろうことは、分かっておりました。ただ……」
「把握していても……。コザレイティア侯爵家に、協力を要請することはできませんでした」

 聖女が祈りを捧げないと、ラクリナルズに悲劇が起きてしまう――隣国からしてみれば、それは格好のチャンス。同盟を結んではいるものの好機があれば利益のために嬉々として見捨てる可能性が充分にあり、やすやすと声をかけられませんよね……。
 コザレイティア家の方々は人格者であると、ご存じないのですから。

「そのためコザレイティア侯爵家を頼らない形で、シュザンヌ様に接触できる探し始めましたが……。見つかることは、ありませんでした……。あまりにも準備不足で、そもそもあなた様の所在すら掴めませんでした……」
「もう、猶予がない。他意なく協力をしていただける、という可能性を信じて動くしか道はなくなってしまった。……そこで我々の独断でコザレイティア侯爵家に助けを求め、ありがたいことに、シュザンヌ様の所在を快くお教えていただけたのです」
「そう、だったのですね。……でも、よかったです。こうして無事お会いできましたので、間に合う――…………」

 浮かんでいた安堵の微笑みが、独りでに消えていってしまいました。
 ……祈りは一週間に一度捧げるため、3か月間も『聖女』から離れていても行う日は簡単に把握できます……。
 ですので、気が付いてしまいました。今は、想像以上に危険な状況なのだと……。

「そう、なのでございます……。期限は7月10日…………4日後、でございます……」
「「……よっか……」」

 クロヴィスさんとわたしの、緊迫含みの声が重なりました。
 ……この方々が一種の『捨て身』に出たのは、納得の判断でした……。
 4日と聞けばかなり余裕があるように見えますが、実際はそうではありません。なぜならば今いる場所から神殿までは、最もよい条件が揃った状態で進んだ時のみ、4日で到着できるのですから……。

((全日晴れで、お馬さんが万全で動ける温度と湿度が続くなど、最低でも7項目をクリアする必要があり……。それでも、ギリギリで到着できるタイミングです……))

 これでは……。
 今から急いで動いたと、しても…………。

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