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第17話 逆監視最終日 監視スタート (1)

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《今日の祈りは、すでに終わっている……っ。なのになぜ、治らない……!?》
《今日の祈りは、済んだはずだ……っ。どうして治らないのだ……!?》
《今日の祈りは、終わってる時間よね……っ? どうなってるの……!?》
《今日の祈りは終わっています……っ。一体どういう事なのですか……!?》
《今日の祈りは終わったはずよね……っ!? なんで治んないの……!?》

 おかげ様で無事に戻って祈りを捧げ、ラズフ様と共に馬車に乗り込んだ直後。午後の2時6分頃でした。各私室で、慌てふためく大声が響きました。

《祈りは、正しく行われていた……。だとしたら…………チィッ。聖女の祈りは対象外っっつ! 役立たずというわけか……っ!》
《この状況には、効かない……。くそっ、信じて損をしたではないか……!》
《あの役立たず女……! よくも期待を持たせたわね……っ!》
《出来ないなら出来ないと言うべきですよ……!! 常識のない女です……!!》
《このアホ!! 能無し!! 税金の無駄遣い!! 信じた僕がバカだったよ!!》

「……アイツら、言いたい放題っスね。理不尽極まりないっス」
「そうですね。滅茶苦茶な言い分です」

 勝手に決めつけて疑っておいて、本当に困ったら下手に出て縋って、希望が叶わなければ罵り恨む。ちゃんと教育を受けた人間、そして人の上に立つ人間とは思えない有様ですね。

《※※※※!! クオス!! 今夜※※※※※※!! 出発※※※※考えろ!!》
「今のは獣言語が多くて、チンプンカンプンっスね。今夜は…………確かどうしても外せない予定があるらしいっスから、それまでに治す方法を考えろ、って感じっスかね」
「そのようですね。ですがもうすぐ、そんな場合ではなくなります」

 今の時間は、午後2時9分5秒。あと12秒で、最も大きな変化が発生します。

「17秒までは……。あと7秒、6秒、5秒、4秒、3秒、2秒、1秒、0。なったスよ」

 懐中時計を見ていたラズフ様が、顔を上げると――。映鏡内では、悲鳴が上がりました。

《《《 》》》

 全身から黒い煙がのぼるようになって、ぐにゃりぐにゃりと不気味な音を立てて肉体が変貌、変質。殿下はライオン、陛下はマントヒヒ、妃殿下はヒョウ、ヴァン様は犬、ロイ様はネズミ。人間の体型にそれらの動物の特徴が合わさった、奇妙かつ恐ろしい姿の獣人となりました。

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