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第17話 逆監視最終日 監視スタート (3)

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「「「「「……………………」」」」」

 なぜここにエリーナいるのか? なぜこの姿を見ても驚かないのか? そしてなぜ、ラズフ様が私の隣にいるのか?
 恐らくは、疑問が同時に多数生まれたからなのでしょう。聖女の特権を使って王宮内の大広間にお邪魔すると、5人全員が唖然呆然となりました。

「「「「「…………………………」」」」」
「衝撃が少ないものから順に、ご説明しましょう。まずは、一つ目です。私はラズフ様の映鏡を通して、毎日貴方がたの変化を目視しておりました」
「「「「っっっ!? なあっ!?」」」」
「ラズフ……!! 貴様……っ。俺達を裏切っていたのか……っ!!」
「いえいえ、裏切ってなんていないっスよ。そんな真似、するはずないっスよ」
「「「「「だったら!! だったらどうしてっ、聖女側に――」」」」」
「俺は利害の一致で、力を貸していただけ。そもそも、信用とか裏切りが発生する関係じゃないんスよ?」

 ラズフ様は肩を竦め、そのあと周りをグルっと見回します。

「俺は――俺の一族は、この国と民を守ることが目的。王族と手を組んでいたのは、そのためっス。だからそっちがウチの目的からズレることをしたのなら、『提携』は自動的に解消されるんスよ」
「「「「「な……っ。っっっっっ……!!」」」」」
「長年自分を犠牲にしてくれている人を疑って、しかもその人を殺そうとする。こんなの放っておけないっスよ。なのでミウヴァ様に全てをお見せして、溜飲を――」
「愚か者がっ!! 貴様はなぜ聖女を信じている!? 何を確証としている!? こちらには紛れもない証拠が――」
「紛れもない証拠があるのは、ミウヴァ様の方っス。ご説明を、お願いしますっスよ」

 畏まりました。二つ目を、皆さんにお伝えしましょう。

「貴方がたは直近の不幸を『聖女の怠け』と決めつけましたが、それは的外れです。聖女が祈りを怠った場合、そのような不幸は置きません。発生するのは、心身の変化――獣人化、なのですよ」
「「「「「じゅ、獣人……。けもの……」」」」」」

 彼らは一様に、自分の体を見下ろしました。
 ええ、そうです。その状態の事ですよ。

「殿下が仰られたようにかつて邪神が存在し、その邪神は大量の恨みを残して死にました。その結果国内には怨念が漂うようになって、徐々に異常が表れるのですよ」

 加護がなくなって一日経つと、自己治癒力や新陳代謝が獣寄りになる。
 加護がなくなって二日経つと、食生活が獣寄りになる。
 加護がなくなって三日経つと、体毛(髪の毛)が獣寄りになる。
 加護がなくなって四日経つと、性格が獣寄りになって攻撃的になる。
 加護がなくなって五日経つと、言語が獣寄りになり始める。
 加護がなくなって六日経つと、姿が獣になる。

 そしてその後丸一日は1~5日目の変化は消えて元通りとなり、姿のみ獣人な人間となる――『邪神からのプレゼント』という『通常の理性となって、やがて再来する心身の異常に怯える時間』が訪れ、それが終わると急激に獣人化が進行。その十三分後には、心も体も獣になってしまう。

 以前ラズフ様にお明かした内容を、懇切丁寧に細説しました。

「皆様、これが真実なのです。ご理解いただけましたか?」
「…………ああ、しかと理解したぞ。聖女エリーナ。貴様は聖女失格であり、生かしておくべき人間でない事をな!!」

 静かにゆっくりと頷いた殿下は――残りの4人も、同じです。歯が砕けそうな程に歯噛みをして、王宮内にいた兵士さんを揃って呼び集めました。

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