あんなことをしたのですから、何をされても文句は言えませんよね?

柚木ゆず

文字の大きさ
16 / 26

第7話 アンジェリクが去ってから~9日後~ 俯瞰視点(1)

しおりを挟む
「なんですの!? なにがありましたの!? 死神!?」
「死神なんているはずがないだろう!! ゴキブリだっ!! 巨大なゴキブリが現れたのだっ!!」

 2人に続いて慌てて食堂に入り扉を閉めて鍵をかけ、縋るように十字架を囲んだあと。セザールは自分達がさっきまで居た方向を指差しました。

「巨大なゴキブリ!? そんなものこそいるはずありませんわ!!」
「いたから慌てているのだろうが!! 2メートル――いや3メートルあるゴキブリが現れたのだ!! なあっ、クリステル!」
「………………あなた、なにを言っているの……?」
「? ど、どうしたのだ……?」
「巨大なゴキブリなんて、いないわよ。いたのはピエロっ! 血の付いたナイフを持ったピエロが追いかけてきたんじゃないの!!」

 クリステルは激しく首を振り、自分達がさっきまで居た方向を指差しました。

「……なんだって!? お前はっ、巨大ゴキブリを見て逃げ出したのではないのか!?」
「そっちこそ!! ナイフを持ったピエロを見て逃げ出したんじゃなかったの!?」
「見ていない! そんなもの知らん! この目で見たのは巨大なゴキブリだっ!!」
「私だってそんなものは知らないわ! 私が見たのは血の付いたナイフを持ったピエロよっ!!」
「………………。どう、なってますの……!?」

 2人は同じ場所に居たはずなのに、ひとりは『ゴキブリ』もうひとりは『ピエロ』を見たと言っている。どちらも違うものが見えていた。
 明らかにどちらかは間違っている。でもどう見ても、どちらも実際に目の当たりにした表情をしている。
 ますます、ブランディーヌの心音が早くなり始めました。

「死神、だけじゃなくて……。他にも、おかしなものが……化け物か何かがいるんですの……!?」
「この目で見たのだ!! 巨大ゴキブリが必ずいる!! だ、だがっ! 大丈夫! 大丈夫、なはずだ!!」
「居るのは、ピエロよ!! ピエロが殺そうとしてきてるの!! でっ、でも大丈夫! おこにいれば大丈夫に決まってるわ!!」
「ご、ゴキブリとピエロは、分からないけど……。そ、それは、そうですわ! ここにいたらっ、大丈夫っ、ですわ!!」

 4代前の当主が購入したと言われている、歴史ある十字架があるから入って来れない。追い払ってくれる。
 3人は自分に言い聞かせるようにその言葉を繰り返し――ていましたが、その僅か5秒後のことでした。3人の口から『大丈夫』は消え去り、大絶叫が出ることとなるのでした。

「ぎゃあああ!! 死神が入ってきたぁあああああああああああああ!?」
「ぎゃあああ!! 巨大ゴキブリが入ってきたぁああああああああああぁ!?」
「ぎゃあああ!! ピエロが入ってきたぁああああああああああああああああああ!?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?

氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します!

柚屋志宇
恋愛
「お前を愛することはない」 『氷の騎士』侯爵令息ライナスは、伯爵令嬢セルマに白い結婚を宣言した。 セルマは家同士の政略による契約結婚と割り切ってライナスの妻となり、二年後の離縁の日を待つ。 しかし結婚すると、最初は冷たかったライナスだが次第にセルマに好意的になる。 だがセルマは離縁の日が待ち遠しい。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

【片思いの5年間】婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。

五月ふう
恋愛
「君を愛するつもりも婚約者として扱うつもりもないーー。」 婚約者であるアレックス王子が婚約初日に私にいった言葉だ。 愛されず、婚約者として扱われない。つまり自由ってことですかーー? それって最高じゃないですか。 ずっとそう思っていた私が、王子様に溺愛されるまでの物語。 この作品は 「婚約破棄した元婚約者の王子様は愛人を囲っていました。しかもその人は王子様がずっと愛していた幼馴染でした。」のスピンオフ作品となっています。 どちらの作品から読んでも楽しめるようになっています。気になる方は是非上記の作品も手にとってみてください。

今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?

水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。 メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。 そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。 しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。 そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。 メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。 婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。 そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。 ※小説家になろうでも掲載しています。

処理中です...