改造王女の後継争奪記

ユズキ

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35話:異世界送還魔法

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 身体の表面が炭化するほどの雷に撃たれた3人のソティラスは、煙を噴き上げながら絶命していた。
 あまりの壮絶なシーンに、謁見の間が静まり返る。しかしその静寂を破って、王の笑う大声が広間に木霊した。

「実に愉快ではないか。余のエセキアス・アラリコが、あれほどあっさりと殺られてしまうとはな」

 あはははは、となお笑う王に、カエは首をすくめた。

(さっすがアールシュ……手加減ナイわあ…)

 相変わらず音声は聞こえないので、何を話していたのかは判らない。

「クソッ!!」

 大声で毒づき、突然アルジェン王子が立ち上がる。そして召使たちが制止する声にも耳を貸さずに、謁見の間を出て行ってしまった。

「え、ちょっと…」

 中継はまだ続くし、王は静止する素振りも見せない。
 思わず立ち上がってしまったカエは、アルジェン王子の出ていったほうを見つめ、途方に暮れてしまった。

(なんなのよ…アイツわ…)

 椅子に座り直そうとしたとき、アルジェン王子が幾人かを伴い戻ってきた。
 灰色のローブをまとった老人とドゥルーヴの≪分身トイネン≫が、ニシャを連れている。

「ニシャ!?」
「ひ、姫様…」

 ニシャはカエに気付いて涙を見せた。

「ちょっとアンタ!! ウチのニシャになにしてくれてんの!!」
「黙れブス!」
「ブっ」

 カエの口の端が引き攣る。

「いいか! この勝負は無効にしろ! 俺は認めないぞこんなつまらん勝負!!」
「はあ? そっちが負けまくってるからって、なに逆ギレしてんのよ、バカなの? アホなの?」
「こんな遊びはどうでもいい、年齢順で俺が次期国王だ!!」

 玉座を見上げてアルジェン王子は叫ぶ。しかし王は何も言わず、ただジッとアルジェン王子を見据えていた。
 王の無反応に、アルジェン王子は顔を真っ赤にした。

「やれ! 妖術師レヤンシュ!!」
「御意」

(妖術師??)

 カエが訝しんで妖術師レヤンシュを見ると、彼はニシャの背後に回り、ニシャを抱きすくめた。

「いやあっ」
「なにすんの変態ジジイ!!」

 身をよじって逃れようとするニシャを、妖術師レヤンシュは硬く抱きしめ、そしてニシャの身体に溶け込み始めた。

「ええ!?」

 妖術師レヤンシュの身体がドロドロと溶け出し、ニシャの身体に滲みこむように入っていく。
 生肉と腐った油のようなモノが、華奢な身体に入り込んでいく様は、グロテスクにもほどがある。

「助けて姫様いやだああ」

 大声で泣き喚くニシャを助けようと、カエは弾かれたように飛び出そうとした。しかしカエの手は、バークティ妃に素早く掴まれてしまう。

「ニシャを助けないと!」
「あれでは助からない、一旦様子を見るのよ」
「でも!!」

 やがてニシャの泣き叫ぶ声が止む。

「ニシャ…?」

 俯くニシャに、カエはそっと声をかける。そして、

「成功です、王子よ」

 顔を上げたニシャの白目が黒く染まり、老人の声が愛らしい口から洩れていた。

「よし」

 アルジェン王子は不敵に笑い、再び玉座を見上げた。

「今すぐ俺を、後継者にすると言え。さもなくば、この国を俺のいた世界へ落としてやる!!」
「ほう…」

 ようやく王は言葉を発したが、さして興味もなさそうな声音だった。
 感情の伺えないエメラルドグリーンの瞳が、アルジェン王子をひたと見据える。そのあまりに不気味に見える王の目を見返し、アルジェン王子は生唾を飲み込んだ。
 暫し沈黙が下りた。
 アルジェン王子は歯をギリギリ噛みしめ、ニシャを振り向いた。

「やれ!!」
「はい」

 妖術師レヤンシュは頷き、両手を上げて呪文を唱えだした。
 やがて小さな地鳴りが始まり、徐々に大きくなっていく。
 ゴゴゴゴゴッと音を立て、スーリヤ宮が揺れ始めた。

「何をする気なの!」
「異世界送還魔法だ」
「……送還? 召喚じゃなくて??」
「無知め」
「カッチーン!!」

(アルジェンに言われると、余計ムカツク!!)

「どうやらテメーも、俺と同じ世界から召喚されたクチみてーだな。だからちょうどいい、俺たちのいた世界へ、この国ごと凱旋帰国しようってことさ!!」
「はあ? なにそれ!?」

 腕を組み、アルジェン王子は高笑いする。

(ど、どうすんのこれ!? マジなわけ? 駄々っ子よりたち悪すぎ!)
(つか、私たちのいた世界へって…いやいや、国ごと無事に飛べる保障なんてナイんじゃない?)

 なんとかせねばとカエはバークティ妃のほうを振り向く。しかし、バークティ妃は玉座を見上げたまま硬直していた。

「バークティ妃…?」

 カエも玉座を見上げて目を見張る。
 アイシュワリヤー妃が、王に剣を突き立てていた。
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