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ライオン傭兵団編
episode17
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正午を迎える数分前に、アルカネットは副宰相の執務室に到着した。
扉前には左右に衛兵が立ち、誰何することもなく、敬礼をしたあとすぐに扉を開いた。
「お邪魔しますよ」
扉を開けてくれた衛兵たちを労いながら、アルカネットは部屋の奥へと視線を向ける。
「ああん、アルカネット助けてちょーだい!」
内股で小走りに駆け寄ってきたオカマに、アルカネットは小さく息をつく。
「なんですかリュリュ」
「ンもう、今朝からずーっとあの調子なのよ、ベルったら」
秘書官のリュリュが、垂れ目を眇めて憤然と言った。
「……まだモフモフしているんですか、ベルトルド様は…」
リュリュの肩をポンッと叩いて、アルカネットはデスクの前まで行く。そして顔も上げず、デスクの上にある毛玉をいじっているベルトルドに、冷ややかな視線を注いだ。
「そろそろお時間なのではないですか?」
視線同様に冷ややかな声音を出すアルカネットに、ベルトルドはニコニコと笑顔を向けた。
「おう、そろそろだな」
言いながら、白い毛玉を両手に抱えて、モフモフ指を動かしている。
白い毛玉は桜色の前脚でベルトルドの指にしがみつき、墨色の耳をピクピクさせ、機嫌良さそうにヒゲをそよがせた。つぶらな丸い目が、スウッと細められ、頬がぷっくりと膨らむ。
「一体こんなの、どうしたのよ。ペットショップで買ってきたのん?」
「いえ、屋敷に紛れ込んでいたんですよ。今朝ベルトルド様を起こしに行ったら、ベルトルド様と一緒に寝ていました」
寝相悪くシーツを蹴飛ばして寝ているベルトルドの腹の上に、この白い毛玉が腹ばいになって寝ていたのである。
「いつの間に俺のベッドに潜り込んだんだ? 俺を襲いに来るとは、中々強気じゃないか。モフモフしているくせに」
いっそうニコニコと微笑んで、ベルトルドは毛玉をデスクに置いた。
「ところでコイツはなんていう小動物なんだ? ネズミ?」
「アタシが知るわけないでショ」
「私も存じ上げません」
「ふむ。じゃあネズミウサギでいいや」
いいのか!? とアルカネットとリュリュは、無言で顔に書き込んだ。
チェアの背もたれに深々ともたれかかると、ベルトルドはキョロキョロと室内を見回した。
「あと一人居ないな、シ・アティウスはどうした?」
「調査が終わらないから、戻ってこれないって嘆いていたわ」
「そっか。あいつも見たいだろうなあ。――しょうがない、中継してやってくれ、リュー」
「判ったわ」
「あいつらやっと、現場に到着したようだ」
先程までの幸せそうな笑みは潜み、険のある目を細めると、にやりと口の端を歪めた。
扉前には左右に衛兵が立ち、誰何することもなく、敬礼をしたあとすぐに扉を開いた。
「お邪魔しますよ」
扉を開けてくれた衛兵たちを労いながら、アルカネットは部屋の奥へと視線を向ける。
「ああん、アルカネット助けてちょーだい!」
内股で小走りに駆け寄ってきたオカマに、アルカネットは小さく息をつく。
「なんですかリュリュ」
「ンもう、今朝からずーっとあの調子なのよ、ベルったら」
秘書官のリュリュが、垂れ目を眇めて憤然と言った。
「……まだモフモフしているんですか、ベルトルド様は…」
リュリュの肩をポンッと叩いて、アルカネットはデスクの前まで行く。そして顔も上げず、デスクの上にある毛玉をいじっているベルトルドに、冷ややかな視線を注いだ。
「そろそろお時間なのではないですか?」
視線同様に冷ややかな声音を出すアルカネットに、ベルトルドはニコニコと笑顔を向けた。
「おう、そろそろだな」
言いながら、白い毛玉を両手に抱えて、モフモフ指を動かしている。
白い毛玉は桜色の前脚でベルトルドの指にしがみつき、墨色の耳をピクピクさせ、機嫌良さそうにヒゲをそよがせた。つぶらな丸い目が、スウッと細められ、頬がぷっくりと膨らむ。
「一体こんなの、どうしたのよ。ペットショップで買ってきたのん?」
「いえ、屋敷に紛れ込んでいたんですよ。今朝ベルトルド様を起こしに行ったら、ベルトルド様と一緒に寝ていました」
寝相悪くシーツを蹴飛ばして寝ているベルトルドの腹の上に、この白い毛玉が腹ばいになって寝ていたのである。
「いつの間に俺のベッドに潜り込んだんだ? 俺を襲いに来るとは、中々強気じゃないか。モフモフしているくせに」
いっそうニコニコと微笑んで、ベルトルドは毛玉をデスクに置いた。
「ところでコイツはなんていう小動物なんだ? ネズミ?」
「アタシが知るわけないでショ」
「私も存じ上げません」
「ふむ。じゃあネズミウサギでいいや」
いいのか!? とアルカネットとリュリュは、無言で顔に書き込んだ。
チェアの背もたれに深々ともたれかかると、ベルトルドはキョロキョロと室内を見回した。
「あと一人居ないな、シ・アティウスはどうした?」
「調査が終わらないから、戻ってこれないって嘆いていたわ」
「そっか。あいつも見たいだろうなあ。――しょうがない、中継してやってくれ、リュー」
「判ったわ」
「あいつらやっと、現場に到着したようだ」
先程までの幸せそうな笑みは潜み、険のある目を細めると、にやりと口の端を歪めた。
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