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20話 絶体絶命
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馬車の周りには、モンスターの群れが居ました。
人型や四本足のモノが、馬車を囲むように迫ってきます。
「ど、どうしてこんな場所に!?」
ここはシュミット辺境伯領の王都寄り、来るときはモンスターなんて見なかったのに。
外で金属音が鳴り響きます。
護衛が戦闘を始めたのでしょうか。
「魔法で支援する!」
「前衛に強化魔法を頼む!」
「馬車の上から矢を撃つわ!」
馬車がギシリときしみ、天井からゴトゴトと音がします。
上に登ったのですね。
馬車の屋根には濡れてもいい荷物が置いてあり、確か護衛の荷物も置いてあるはず。
確か護衛は六人居たはずですが、モンスターの群れを相手に持ちこたえられるのでしょうか。
小窓から外を見ると、護衛は一人で何体ものモンスターを倒しています。
ほ、護衛の方が強いのですね、これなら何とか……!!
小窓に人型モンスターの血吹雪がかかり、窓が真っ赤に染まります。
「キャー! キャー!」
ち、血だわ! 血が飛んでる!
たたかい、そうよこれは戦いなのよ、何をのんきにしているのよ私は!
外ではみんなが戦っているの、私は……私は……!
何をしたらいいのか分からない。
戦う? 馬にも乗れないのに?
逃げる? 逃げられるはずも無いのに?
じゃあ……ハンス……助けてハンス!
震える体を両手で押さえつけ、歯がカチカチと音を鳴らしながら別の窓から外を見ます。
メイド……そうよメイドはどこへ行ったの!?
出て行ったキリで、戦いなんて出来るはずが無いのに。
メイドは馬に乗って首に抱き付き、御者と共に必死になだめています。
ああ、みんなやる事を理解しているのに、私は何もできない……。
でも怖い……いま馬車の外では護衛とモンスターが戦っている。
ハンスは、ハンスはこんな戦いをしていたのかしら。
だとしたら私は、ハンスにとんでもない事をさせてしまったんだ。
私が呼び出したばっかりに、こんな危険な目に……!
馬車の外でモンスターの鳴き声が大きくなってきました。
さっきよりも随分と近くにいるのでしょう。
護衛は、護衛は大丈夫なのかしら。
窓から見てみると、モンスターは近づきはするものの、護衛によって次々と倒されていきます。
ああ、護衛は優秀なのですね、モンスターを沢山倒しています。
剣士らしき護衛が獣のモンスターを倒すと、その首が馬車にぶつかりました。
「ヒッ!」
顔を両手で覆ってしゃがみ込みます。
だ、大丈夫、大丈夫よシオン。
護衛は優秀だもの、きっとモンスターを倒してくれるわ。
顔を覆って震えていると、男の人の悲鳴が聞こえました。
「ぐあっ! くそ、こんな所で……!」
「ポーションを使いなさい! 出し惜しみは無しよ!」
「魔法と弓の回転を速くできないのか!?」
「これ以上は無理だ!」
だ、大丈夫……よね、護衛は優秀だもの、少しの怪我位ならポーションで治せるし、モンスターは薬は使わないって聞いたし、数が多くても護衛の方が強ければ……。
「アレを見ろ! シャーマンタイプがいるぞ!」
「クッ! 怪我を治しているわ、しっかりトドメを刺すわよ!」
シャー……マン? そういえばモンスターの中には知恵を持ち、魔法で治療をするものが居ると……。
そんな、それじゃあモンスターの数は!?
慌てて外を見ると、モンスターの数は半分を切っていた。
ああよかった、護衛は全員無事だから、この調子なら問題は……は!
護衛が傷だらけで、肩で息をしているわ。
このままだと……危険?
馬車が大きく揺れました。
「いやっ! イヤー!」
「こんのぉ! 離れろ!!」
悲鳴を上げる事しか出来ない私は、護衛に頼るしかありません。
でも、でも今のは多分モンスターがぶつかってきたのでしょう、だとしたら……。
ああ……ダメなのかもしれません。
ごめんなさいみんな、私のわがままのために危険な目に会わせて。
ごめんなさいお父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。
そして……ハンス、あなたに会いたかったわ。
覚悟を決めた時でした。
「シオーン!」
遠くから聞き覚えのある声がしました。
人型や四本足のモノが、馬車を囲むように迫ってきます。
「ど、どうしてこんな場所に!?」
ここはシュミット辺境伯領の王都寄り、来るときはモンスターなんて見なかったのに。
外で金属音が鳴り響きます。
護衛が戦闘を始めたのでしょうか。
「魔法で支援する!」
「前衛に強化魔法を頼む!」
「馬車の上から矢を撃つわ!」
馬車がギシリときしみ、天井からゴトゴトと音がします。
上に登ったのですね。
馬車の屋根には濡れてもいい荷物が置いてあり、確か護衛の荷物も置いてあるはず。
確か護衛は六人居たはずですが、モンスターの群れを相手に持ちこたえられるのでしょうか。
小窓から外を見ると、護衛は一人で何体ものモンスターを倒しています。
ほ、護衛の方が強いのですね、これなら何とか……!!
小窓に人型モンスターの血吹雪がかかり、窓が真っ赤に染まります。
「キャー! キャー!」
ち、血だわ! 血が飛んでる!
たたかい、そうよこれは戦いなのよ、何をのんきにしているのよ私は!
外ではみんなが戦っているの、私は……私は……!
何をしたらいいのか分からない。
戦う? 馬にも乗れないのに?
逃げる? 逃げられるはずも無いのに?
じゃあ……ハンス……助けてハンス!
震える体を両手で押さえつけ、歯がカチカチと音を鳴らしながら別の窓から外を見ます。
メイド……そうよメイドはどこへ行ったの!?
出て行ったキリで、戦いなんて出来るはずが無いのに。
メイドは馬に乗って首に抱き付き、御者と共に必死になだめています。
ああ、みんなやる事を理解しているのに、私は何もできない……。
でも怖い……いま馬車の外では護衛とモンスターが戦っている。
ハンスは、ハンスはこんな戦いをしていたのかしら。
だとしたら私は、ハンスにとんでもない事をさせてしまったんだ。
私が呼び出したばっかりに、こんな危険な目に……!
馬車の外でモンスターの鳴き声が大きくなってきました。
さっきよりも随分と近くにいるのでしょう。
護衛は、護衛は大丈夫なのかしら。
窓から見てみると、モンスターは近づきはするものの、護衛によって次々と倒されていきます。
ああ、護衛は優秀なのですね、モンスターを沢山倒しています。
剣士らしき護衛が獣のモンスターを倒すと、その首が馬車にぶつかりました。
「ヒッ!」
顔を両手で覆ってしゃがみ込みます。
だ、大丈夫、大丈夫よシオン。
護衛は優秀だもの、きっとモンスターを倒してくれるわ。
顔を覆って震えていると、男の人の悲鳴が聞こえました。
「ぐあっ! くそ、こんな所で……!」
「ポーションを使いなさい! 出し惜しみは無しよ!」
「魔法と弓の回転を速くできないのか!?」
「これ以上は無理だ!」
だ、大丈夫……よね、護衛は優秀だもの、少しの怪我位ならポーションで治せるし、モンスターは薬は使わないって聞いたし、数が多くても護衛の方が強ければ……。
「アレを見ろ! シャーマンタイプがいるぞ!」
「クッ! 怪我を治しているわ、しっかりトドメを刺すわよ!」
シャー……マン? そういえばモンスターの中には知恵を持ち、魔法で治療をするものが居ると……。
そんな、それじゃあモンスターの数は!?
慌てて外を見ると、モンスターの数は半分を切っていた。
ああよかった、護衛は全員無事だから、この調子なら問題は……は!
護衛が傷だらけで、肩で息をしているわ。
このままだと……危険?
馬車が大きく揺れました。
「いやっ! イヤー!」
「こんのぉ! 離れろ!!」
悲鳴を上げる事しか出来ない私は、護衛に頼るしかありません。
でも、でも今のは多分モンスターがぶつかってきたのでしょう、だとしたら……。
ああ……ダメなのかもしれません。
ごめんなさいみんな、私のわがままのために危険な目に会わせて。
ごめんなさいお父様、お母様、先立つ不孝をお許しください。
そして……ハンス、あなたに会いたかったわ。
覚悟を決めた時でした。
「シオーン!」
遠くから聞き覚えのある声がしました。
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