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21話 ハンス・約束を守る為に
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「シオーン!」
聞き覚えのある声がして、私は顔を上げました。
この声はまさか……ううん、あり得ないわ、だって今朝モンスターに襲われたばかりで、こんな所に居るはずがないもの。
でも、もしかしたら……。
馬車の小窓から外を見ると、騎士が一騎突っ込んできます。
ヘルムをかぶってるし、馬上だから揺れてはっきりとはわかりませんが……ハンス……!?
「ハンスー!」
馬車内で叫び声をあげましたが、その声はモンスターの声でかき消されました。
モンスターの背後からひき殺す様に突っ込み、剣でモンスターを斬りまくります。
ハンス、ハンス! 助けに来てくれたの? 私達を!
ハンスの後ろからは更なる騎士達が現れ、モンスターの群れは混乱して群れとしての活動が出来なくなりました。
でもダメ! シャーマンを倒さないと……そう思ってシャーマンを探すけど、どこにも姿が無い。
逃げたのかしら。いいえ、後ろから襲われて逃げる事なんて、ああ、あそこで倒れているわね。
考えてみれば私が気にする事でもなかった。
モンスターとの戦いに慣れた騎士達が、シャーマンの事を気にしないはずがない。
ハンス達が来たことで護衛達も士気が上がったようで、うまく連携を取ってモンスターを倒し始める。
騎士達は馬を降りる者と馬で駆け回る者に分かれ、モンスターに統制を取らせないようにしてる。
ハンスは騎士と護衛に上手く指示を出し、段々と馬車からモンスターを離してくれた。
「ブモーーーー!!!!」
耳をつんざくような、ひと際大きな鳴き声が聞こえた。
思わず耳を押さえて目をつむったけど、なに? 一体何なの?
外を見ると、ひときわ大きな牛型のモンスターが、馬車目がけて突っ込んできた!
……え? 馬車よりも大きいじゃない、なによそれ、そんなのにぶつかられたら、私……。
止めようとする騎士達が吹き飛ばされ、炎の魔法や矢が当たっても止まらない。
そ、そうだ逃げないと! 戸を開けようとしたら目の前に牛の顔があった。
ハンス……。
「とーまーれぇ!!!!」
炸裂音が鳴り響いた。
目をつむったままの私は、きっと走馬灯を見ているんだと思う。
だってハンスの背中が目に前に現れて、巨大な牛モンスターを宙に舞わしたのだから。
……え? これは走馬灯とは言わないわよね。
牛型モンスターは地面に落ちると同時に騎士に囲まれ、体中に剣が突き刺さる。
た、助かった……の? !!!! ハンスは!?
「ハンス、ハンス!」
馬車から降りると、ハンスは片膝をついてしゃがみ込んでいた。
「やあシオン、ひさし……ぶりだね」
「ハンス! 怪我をしてるのね、今ポーションを持ってくるから待ってて!」
馬車の中にあるポーションを取りに戻ろうとしたら、手を引っ張られた。
「きゃ!」
「シオン……やっと、約束を守れた」
背中から抱き付かれ、耳元でそう囁かれた。
約束? 何か約束なんてしていたかしら。
でも、助けに来てくれた、嬉しい。
「ハンス、ありがとう。助けてくれて」
「当たり前だろう、シオンを守るのは俺の役目だから」
「でもハンス、あんな危険な……なぁ!?」
後ろを見ると、騎士達や護衛、メイドがニヤニヤと見ていた。
あ、あれ!? モンスターは? 戦いはどうなってるの!?
「お嬢様―、そこで一気に押し倒しちゃえー」
「ヒューヒューハンス隊長! 熱いですね!」
凄く冷やかされてた!
あわわわ、ちょ、ちょっと待って、なによこの状況!
「待てお前達、シオンを押し倒すのは体をきれいにしてからだ」
なぜか盛り上げる見物客たち!
どうしてそこで盛り上がるの!
ちょ、ちょっと待って、私はハンスにフラれるために……!
「それよりも怪我! 血が出てるのよハンス!」
手を振りほどいて、額から流れ出る血を拭くためにヘルムを脱がせると、銀色に輝くクセのあるキレイな髪がフワリと舞う。
後ろは背中にかかる位に長くなってるわね、きっと任務ばかりで切って無さそう。
目つきは鋭いけど、今は微笑んでいてとてもやさしい目だ。
「これはかすり傷だよ、ほら止まった」
腕で擦ると、本当に血が止まった。
あ、あら?
「心配してくれてありがとう。でも俺は、こんな事じゃ死なないよ」
そういってまた私を抱きしめた。
聞き覚えのある声がして、私は顔を上げました。
この声はまさか……ううん、あり得ないわ、だって今朝モンスターに襲われたばかりで、こんな所に居るはずがないもの。
でも、もしかしたら……。
馬車の小窓から外を見ると、騎士が一騎突っ込んできます。
ヘルムをかぶってるし、馬上だから揺れてはっきりとはわかりませんが……ハンス……!?
「ハンスー!」
馬車内で叫び声をあげましたが、その声はモンスターの声でかき消されました。
モンスターの背後からひき殺す様に突っ込み、剣でモンスターを斬りまくります。
ハンス、ハンス! 助けに来てくれたの? 私達を!
ハンスの後ろからは更なる騎士達が現れ、モンスターの群れは混乱して群れとしての活動が出来なくなりました。
でもダメ! シャーマンを倒さないと……そう思ってシャーマンを探すけど、どこにも姿が無い。
逃げたのかしら。いいえ、後ろから襲われて逃げる事なんて、ああ、あそこで倒れているわね。
考えてみれば私が気にする事でもなかった。
モンスターとの戦いに慣れた騎士達が、シャーマンの事を気にしないはずがない。
ハンス達が来たことで護衛達も士気が上がったようで、うまく連携を取ってモンスターを倒し始める。
騎士達は馬を降りる者と馬で駆け回る者に分かれ、モンスターに統制を取らせないようにしてる。
ハンスは騎士と護衛に上手く指示を出し、段々と馬車からモンスターを離してくれた。
「ブモーーーー!!!!」
耳をつんざくような、ひと際大きな鳴き声が聞こえた。
思わず耳を押さえて目をつむったけど、なに? 一体何なの?
外を見ると、ひときわ大きな牛型のモンスターが、馬車目がけて突っ込んできた!
……え? 馬車よりも大きいじゃない、なによそれ、そんなのにぶつかられたら、私……。
止めようとする騎士達が吹き飛ばされ、炎の魔法や矢が当たっても止まらない。
そ、そうだ逃げないと! 戸を開けようとしたら目の前に牛の顔があった。
ハンス……。
「とーまーれぇ!!!!」
炸裂音が鳴り響いた。
目をつむったままの私は、きっと走馬灯を見ているんだと思う。
だってハンスの背中が目に前に現れて、巨大な牛モンスターを宙に舞わしたのだから。
……え? これは走馬灯とは言わないわよね。
牛型モンスターは地面に落ちると同時に騎士に囲まれ、体中に剣が突き刺さる。
た、助かった……の? !!!! ハンスは!?
「ハンス、ハンス!」
馬車から降りると、ハンスは片膝をついてしゃがみ込んでいた。
「やあシオン、ひさし……ぶりだね」
「ハンス! 怪我をしてるのね、今ポーションを持ってくるから待ってて!」
馬車の中にあるポーションを取りに戻ろうとしたら、手を引っ張られた。
「きゃ!」
「シオン……やっと、約束を守れた」
背中から抱き付かれ、耳元でそう囁かれた。
約束? 何か約束なんてしていたかしら。
でも、助けに来てくれた、嬉しい。
「ハンス、ありがとう。助けてくれて」
「当たり前だろう、シオンを守るのは俺の役目だから」
「でもハンス、あんな危険な……なぁ!?」
後ろを見ると、騎士達や護衛、メイドがニヤニヤと見ていた。
あ、あれ!? モンスターは? 戦いはどうなってるの!?
「お嬢様―、そこで一気に押し倒しちゃえー」
「ヒューヒューハンス隊長! 熱いですね!」
凄く冷やかされてた!
あわわわ、ちょ、ちょっと待って、なによこの状況!
「待てお前達、シオンを押し倒すのは体をきれいにしてからだ」
なぜか盛り上げる見物客たち!
どうしてそこで盛り上がるの!
ちょ、ちょっと待って、私はハンスにフラれるために……!
「それよりも怪我! 血が出てるのよハンス!」
手を振りほどいて、額から流れ出る血を拭くためにヘルムを脱がせると、銀色に輝くクセのあるキレイな髪がフワリと舞う。
後ろは背中にかかる位に長くなってるわね、きっと任務ばかりで切って無さそう。
目つきは鋭いけど、今は微笑んでいてとてもやさしい目だ。
「これはかすり傷だよ、ほら止まった」
腕で擦ると、本当に血が止まった。
あ、あら?
「心配してくれてありがとう。でも俺は、こんな事じゃ死なないよ」
そういってまた私を抱きしめた。
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