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22話 シュミット辺境伯邸にて
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ハンス達騎士隊に助けられた私達は、そのままシュミット辺境伯の屋敷へと戻る事になった。
少ないながらも怪我人がいる事と、ハンスが手を離さなかったからです。
……馬に二人で乗るのは久しぶりですが、ハンス、背が伸びていませんか?
背中に鎧があたり、脇の下からハンスの腕が伸びてきて、私はハンスの腕につかまっています。
「ねぇハンス、背が伸びた?」
「え? どうだろう、ここ最近は測って無いからなんとも」
そういえば前に二人で馬に乗ったのはいつだったでしょうか。
もう何年も前……学院にいる時に何度かあったかしら。
「それよりも、どうして俺に会いに来たのに帰ったの?」
「ご、ごめんなさい! 私、ハンスに迷惑をかけてばっかりで、今日なんて私のせいでモンスターに襲われちゃって、私なんかがハンスに会う資格はないって思ったの!」
迷惑をかけてばっかりだったので、思っていたことを一気に言ってしまいました。
あ、こんなにまくし立てたって、ハンスには迷惑なだけかしら。
「会う資格……か。その資格こそ、俺には必要だったんだぞ」
「え?」
ハンスに資格が必要? 何の資格でしょうか。
あ、今ってちょうどいいタイミングではないでしょうか。
フラれたらそのまま馬車に飛び乗って逃げれるし、ハンス達はシュミット辺境伯の屋敷に戻ればいいです。
……す~は~す~は~……よし!
「ハンス、聞いてほしい事があるの」
「なんだい?」
「わた、私ね……はっ! ハンスの事が好きなの。ハンスとずっと一緒に、生涯を共に過ごしたいと思ってるわ」
ああ、終わりました。
伝えたい事は伝えたので、後は返事を聞くまでもありませんね。
「そうか……その返事は申し訳ないけど、屋敷に戻ってからさせてもらうよ」
「え? いえ、その気はないと一言言ってもらえれば、ただの幼馴染に戻れるわ」
馬から飛び降りて逃げ出したいほどに恥ずかしいのですが、ハンスの腕が私のお腹のあたりを押さえ、馬から降りられないようにされています。
こ、このまま生殺しは嫌です!
なんとか振りほどいて……ん、ふり……ダメです、力の差があり過ぎます。
そうこうしている内に、シュミット辺境伯の屋敷に戻ってきました。
ああそういう事ですか、ナタリー様との婚約発表をするから、私にも聞いて行けと。
私は居間に連れて行かれると、シュミット辺境伯や夫人に心配され、ナタリー様には抱き付かれました。
「シオン様! よかった、本当に良かった。モンスターがあちこちに現れたと聞いて、本当に心配しました」
「全くだぞシオン嬢。この時期はモンスターが多いとはいえ、今回はいつもより報告が多く上がっていたのだ。それにしても、あれほど内地にまで現れるとはな」
「申し訳ありません、ご心配をおかけしました」
「それでシオンさん、ハンス君とはどうだったの? 感動の再開を果たして、告白したのかしら?」
辺境伯夫人が興味津々に聞いてきました。
あ、いえ、辺境伯もナタリー様も興味津々です。
「それがその、告白はしたのですが、少し待っていてくれと言われました」
「ふむぅ? ハンス君がそんな事を言ったのか?」
「はい、リビングルームで待っていてくれ、と」
それを聞いてシュミット家は首をひねりますが、言われたのなら待っていようと、皆さんでリビングルームに集まります。
あの……私がフラれてナタリー様との婚約発表ですよね?
しばらくして現れたハンスは、黒い軍服に赤い帯を肩から掛け、胸にはいくつも勲章を付けていました。
黒い軍服に銀色の髪が映えますね。
ああ、やっぱりハンスは素敵です。
「シオン、待たせたね。おや? シュミット辺境伯一家もお揃いですか」
「うむ。なにやらここで待っていろと言ったのだろう?」
「そうですね、シオンだけのつもりでしたが、丁度いいでしょう」
そういってハンスは私の前に立ちます。
あ、お風呂に入ったのかな、石鹸の香りがするわ。
ハンスは私の前で片膝をつくと、私の右手を取り、顔を上げます。
「シオン、君の事を愛している、私と結婚して欲しい」
少ないながらも怪我人がいる事と、ハンスが手を離さなかったからです。
……馬に二人で乗るのは久しぶりですが、ハンス、背が伸びていませんか?
背中に鎧があたり、脇の下からハンスの腕が伸びてきて、私はハンスの腕につかまっています。
「ねぇハンス、背が伸びた?」
「え? どうだろう、ここ最近は測って無いからなんとも」
そういえば前に二人で馬に乗ったのはいつだったでしょうか。
もう何年も前……学院にいる時に何度かあったかしら。
「それよりも、どうして俺に会いに来たのに帰ったの?」
「ご、ごめんなさい! 私、ハンスに迷惑をかけてばっかりで、今日なんて私のせいでモンスターに襲われちゃって、私なんかがハンスに会う資格はないって思ったの!」
迷惑をかけてばっかりだったので、思っていたことを一気に言ってしまいました。
あ、こんなにまくし立てたって、ハンスには迷惑なだけかしら。
「会う資格……か。その資格こそ、俺には必要だったんだぞ」
「え?」
ハンスに資格が必要? 何の資格でしょうか。
あ、今ってちょうどいいタイミングではないでしょうか。
フラれたらそのまま馬車に飛び乗って逃げれるし、ハンス達はシュミット辺境伯の屋敷に戻ればいいです。
……す~は~す~は~……よし!
「ハンス、聞いてほしい事があるの」
「なんだい?」
「わた、私ね……はっ! ハンスの事が好きなの。ハンスとずっと一緒に、生涯を共に過ごしたいと思ってるわ」
ああ、終わりました。
伝えたい事は伝えたので、後は返事を聞くまでもありませんね。
「そうか……その返事は申し訳ないけど、屋敷に戻ってからさせてもらうよ」
「え? いえ、その気はないと一言言ってもらえれば、ただの幼馴染に戻れるわ」
馬から飛び降りて逃げ出したいほどに恥ずかしいのですが、ハンスの腕が私のお腹のあたりを押さえ、馬から降りられないようにされています。
こ、このまま生殺しは嫌です!
なんとか振りほどいて……ん、ふり……ダメです、力の差があり過ぎます。
そうこうしている内に、シュミット辺境伯の屋敷に戻ってきました。
ああそういう事ですか、ナタリー様との婚約発表をするから、私にも聞いて行けと。
私は居間に連れて行かれると、シュミット辺境伯や夫人に心配され、ナタリー様には抱き付かれました。
「シオン様! よかった、本当に良かった。モンスターがあちこちに現れたと聞いて、本当に心配しました」
「全くだぞシオン嬢。この時期はモンスターが多いとはいえ、今回はいつもより報告が多く上がっていたのだ。それにしても、あれほど内地にまで現れるとはな」
「申し訳ありません、ご心配をおかけしました」
「それでシオンさん、ハンス君とはどうだったの? 感動の再開を果たして、告白したのかしら?」
辺境伯夫人が興味津々に聞いてきました。
あ、いえ、辺境伯もナタリー様も興味津々です。
「それがその、告白はしたのですが、少し待っていてくれと言われました」
「ふむぅ? ハンス君がそんな事を言ったのか?」
「はい、リビングルームで待っていてくれ、と」
それを聞いてシュミット家は首をひねりますが、言われたのなら待っていようと、皆さんでリビングルームに集まります。
あの……私がフラれてナタリー様との婚約発表ですよね?
しばらくして現れたハンスは、黒い軍服に赤い帯を肩から掛け、胸にはいくつも勲章を付けていました。
黒い軍服に銀色の髪が映えますね。
ああ、やっぱりハンスは素敵です。
「シオン、待たせたね。おや? シュミット辺境伯一家もお揃いですか」
「うむ。なにやらここで待っていろと言ったのだろう?」
「そうですね、シオンだけのつもりでしたが、丁度いいでしょう」
そういってハンスは私の前に立ちます。
あ、お風呂に入ったのかな、石鹸の香りがするわ。
ハンスは私の前で片膝をつくと、私の右手を取り、顔を上げます。
「シオン、君の事を愛している、私と結婚して欲しい」
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