【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え？私って聖女なの？

２３話

　ヴァルプール国への制裁ともいえる決定がなされ、ハロルド王太子は呆然自失状態だ。
　昔はこんな人じゃなかったはずだけど……何かおかしい。
　
　ハロルド王太子とお父様が凄く上申してたけど、にべもなく追い出された。
　正直ここまで来ると、ハロルド王太子とお父様への感情はほとんど無くなったけど、逆に疑問に思えてくる。

　ハロルド王太子を、あんな状態にしたのは誰？

　場合によってはハロルド王太子は被害者かもしれないし、本当に操られているのなら助けてもいい。
　……お父様はどうでもいいけど。

　単純に考えて、私を蹴落として得をするのは誰？　考えるまでもなくマーテリー王太子妃だ。
　そういった意味ではお父様も被害者になる。私を王妃に出来なかったんだから。
　帰ってきたら垢抜けてたマーテリー王太子妃だけど、留学する前はもう少し地味だった。
　地味と言っても派手だったけど。

　もしも裏で操っている人が居るのなら、いまのヴァルプールの状態はその人のせい。
　
「すまなかったなアトリア。まさかあそこまで聖女を利用しようなどと思わなかったんだ」

「ううん、大丈夫セルジュ。ただ、逆に不思議に思えて仕方が無いの」

「うん？　なにがだ？」

「ハロルド王太子は今でこそあんな状態だけど、昔は……少なくとも愚か者じゃなかった」

「ほほぅ、アトリア聖女様もそう思うか。実はワシもそう思っておったのだ」

　国王陛下もそう思ってらした見たい。
　考えてみれば隣接してるん国なんだから、何度か会っていても不思議はない。

「父上も？」

「うむ、確か以前ヴァルプールに行った時は、アトリア聖女様と婚約できて幸せだとのろけられたものだ」

　それは聞いた事がある。
　会う人会う人すべてに言い回ってたらしいから。当時は恥ずかしくてやめてほしかった。

「それに他国の姫との婚姻話も沢山あった筈だ。それらを全て断っていたのに、突如としてアトリア聖女様との婚約を破棄された。それはもう驚いたものだ」

　そ、その話はしらない。
　じゃあ、それこそどうして、いきなり手のひらを返したんだろう。

「それでは父上は、ハロルド王太子が正気ではない、そうおっしゃりたいのですか？」

「その可能性もある、という事じゃ。聖女様が疑問に思うのも無理は無いからな」

「それでは私が開発した薬で自白させましょうか？」

「お、おやめくださいレオン長官。アナタの自白剤は要らない事までしゃべらせてしまいます！」

「なにを慌てているのだアルバート神官長。情報は多ければ多い程いいではないか」

「お、俺もやめた方が良いと思うぞ？　レオン長官」

「セルジャック王太子、あなたはアトリア聖女の疑問に答えたくは無いのか？」

　なんだろう、どうしてみんな凄く焦ってる。
　そんなに危ない薬なのかな。

「ごほん、レオンよ、お前の薬は最後の手段だ。こちらで調べても裏が取れなかった時、改めて頼るとしよう」

「そうですか？　それならばいいのです」

　こうしてヴァルプールへの調査がはじめられた。