【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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32話

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「残るのは破壊と支配ですか。正直どちらも試したくはありませんが」

「でも、試さないとツバルアンナの薬に効果があるか分かりませんし」

 この2つは正直私も試すのが怖い。名前からして危険な感じがするもの。
 威圧みたいにアルバート神官長が怖がってもダメだし、そもそも破壊とか支配とかを人に試したくない。

「残りの2つは場所を変えましょう。セルジュでも呼んで、護衛をさせます」

「護衛? どこへ行くんですか?」

 連れてこられたのは山の中。
 私とアルバート神官長、セルジュとその護衛が数名居る。

「おいアル、ここで何をするつもりだ?」

「ここでは聖女様の能力の実験をする。お前は手ごろなイノシシやクマを捕えて来てくれ」

「イノシシやクマって、お前そんな簡単に出てくるわけがないだろう」

「セルジャック様! 大型のクマが歩いています!」

 護衛の一人が指さした先には、のそのそと歩くクマがいた。
 なんていいタイミング。これも山に来る前に祝福をした成果かな。

「行くぞお前たち!」

 護衛を引き連れてセルジュがクマと捕えに行った。
 クマを捕えるのって簡単だっけ? という私の心配は全く不要で、護衛と協力してあっさりと捕まえてしまった。
 セルジュって強いんだ……知らなかった。

「捕まえたぞ。これをどうするんだ?」

 手足を縛られて、身動きが取れないクマが目の前に置かれた。
 うわっ、暴れてる。いくら襲って来ないからって、目の前にクマが置かれてびっくりしちゃった。

「さあ聖女さま、このクマを支配してください」

「……え? クマにですか?」

「そうです。まさか人で試すわけにもいきませんから」

 そ、それもそうね、人に使って何かあったら大変だもんね。
 じゃあ少し離れてっと、支配、支配……支配ってなに? いう事を聞いてもらうって事?
 祈りを捧げながら支配とはなんぞや、と考えたけど分からない。
 言いなりにするって事かな、操り人形みたいな? 何かヤだな、せめてお友達とかになれないかな。

 私の体からは藍色あいいろの光が発せらると、クマが大人しくなる。
 セルジュやアルバート神官長がクマの側に行くけど、今までの様な荒々しさは無く、私をつぶらな瞳で見つめている。
 お友達に……なれたのかな。

 クマに近づいて顔の前で屈み、恐る恐る手を口の前に差し出す。

「何をしているアトリア! 危険だ!」

 慌ててセルジュが止めに入るけど、それを制して口の周辺を触ってみる。
 クマは何もせず、私の手を舐めてきた。
 敵意を感じない。むしろ頭を撫でてくれと手に頭を擦りつけてくる。

「これはどういう事でしょうか。支配とは相手の敵意を無くすことですか?」

「あ、えっと、神官長、実は祈りながら友達になれないかなって思って」

「友達? クマと友達にだと? 支配の力はそんな……いや待て、支配……精神支配……」

「なるほど、セルジュの言いたい事が分かった。聖女様はクマの精神を乗っ取り、友人であると認識させたのか」

「乗っ取った? 私がですか?」

「そう考えると名前と効果の意味が合う。だとすると、直接的な治療ではないが、ツバルアンナの薬に効果があるのではないか?」

「私もそれを考えていた。薬で改変された記憶を、支配によって元通りに、もしくは正しい記憶を植え付ける事が出来るかもしれない」

 相手の心を乗っ取って、私の好きな記憶を入れるって事?
 そんな事をしたら、その人の心はどこに行ってしまうの? それに記憶を作り替えられた人はどうなってしまうの?

「しかしこれなら犯罪者相手に実験しても良いだろう。改心できればそれに越したことは無いからな」

 そ、そういう考え方もあるんだ。 確かに改心させられるなら、この力は使ってもいいかな。
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