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1章
朝霧②(ステファン視点)
しおりを挟む【それからは、実の“きょうだい”でないと子孫を残せず、血筋を絶やそうとした者には極度の性衝動と体を突き刺す痛みを与える呪いの核に朝霧はなったんだ】
【呪いを無視して別の人と初夜を迎えたら、二人とも悲惨な姿で発見される事も多々あったんだよ~。だから椎名家は未来永劫、呪いに怯えながら子孫を残し続けるってわけ】
ちらっとたまきから話は聞いていたが、朝霧の事は初耳だった。
こんな酷い仕打ちをされていたら、 誰だって呪いたくなる。そんな酷い話、この世界でだって聞いた事はない。
【椎名家はそれ故に外との接触をしない。もし外で思いを寄せる人ができても叶う事は絶対にないからな】
【だから子供の時から夜伽を教えて、きょうだいでシても満足するように叩き込まれるんだよ。もちろん、たまきもそうだった】
【後は破瓜していないかも一族にとっては重要な事だった為、定期的に破瓜をしていないか確認をしたり……本当に歪な一族だった】
一番最初に、たまきが男性を悦ばせる為の装飾品だと言っていた事を思い出す。
あの時は軽く聞き流したけど、本当はノヴァのように重く受け止めるべきだったのではないか。
今更、そんな後悔が押し寄せる。
【誰よりもあの家から出ていきたいと願っていたのは主だ。だから自分の話を聞いて、重い雰囲気になるよりもステファン殿のような明るさに主は救われていた】
【そうそう。主の夢は恋がしたい、だからね】
「それで思ったんだが、俺とは既に身体の関係はあるのに俺達は何も起こってない。その話通りなら、俺達は死んでいるはずだ」
初夜が結婚後の話をしているなら、まだ当てはまらない。
けれど、話の流れ的には“きょうだい”以外で身体の関係を持ったら即刻アウトに感じる。
【そう、本来はステファン殿の想像通りの事が起こる】
【じゃあ、ここでステファンにこんな物を見せてあげるね】
紫苑の手元に先程まではなかった大きな丸鏡が現れた。
そこに映し出された一人の女性。
【誰でしょう?】
「たまきに似てるけど、たまきじゃないな。纏ってる雰囲気がたまきとは真逆だ」
【ご名答です】
「……は?」
たまきに似た女性が、鏡の中から話しかけてきた。今の俺は、団長らしからぬアホ面を晒しているはず。
【はじめまして、私は朝霧】
「……は?」
【訳あって、この鏡の中に住んでおります】
「いやいやいや、どういうことだ?」
朝霧は間違いなく、あの話に出ていた朝霧だ。
だが、彼女は呪いの核になったはず。
今存在しているわけがない。
【私の身体は今も呪いの核として、椎名家を呪っています。私は所謂、年月が経って当時の私の人格が思念体として独立した状態、とでも言いましょうか】
【主が産まれた時、私と紫苑は主の強すぎる陰陽道の力を受けて九十九神として顕現した。その時に主の強すぎる力を制御していたのが彼女、朝霧だ】
【私もどうして彼女が産まれた時に傍にいたのかは分かりません。でもあの時は咄嗟に守らなくてはと思ったのです】
守れなかったものが多かった彼女は、それらを思い出すかのように少し遠い目をした。
【思念体とは言え、主にどのような影響を与えるかは未知数だった。それもあって朝霧の同意を得た上で紫苑の鏡に封印した】
【年月が経つにつれて主は朝霧に似てくるし、境遇も朝霧に聞いていたような屋敷での暮らしになって、無い者扱いされ始めるし……】
【いよいよ、その可能性を疑わざるを得なくなった時、主が自暴自棄になった一族の者に襲われたんだ】
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