ヤクザは喋れない彼女に愛される

九竜ツバサ

文字の大きさ
5 / 9

5 甘い

しおりを挟む
 たどたどしく絡まってくる律の舌は不慣れではあるが、必死に蓮を受け入れようとしていた。照明が消えた室内。くぐもって響く雨音に、混じる唾液の混ざる音。蓮の胸にしがみつく、湿った両手が震えている。

 律の、片手で締め上げられそうな細い首筋を吸う。
 シャワーを浴びた彼女の肌は、ミルクに似た柔らかな味がした。

 蓮のペニスは素直に硬さを増していた。

 その変化を感じると、律は困ったような表情で、しかし慈愛に満ちたマリアのように蓮の後頭部を撫でた。
 律の繊細な表情の動きを、都合よく『了承』と取った蓮は、律のショーツに手を入れて、湿った窪みを時間をかけて解した。

 柔らかではあるが、きつく窄まっているそこを、優しく時間をかけて撫でてていく。徐々に広がっていくにつれ、体を強張らせる律にキスをして、口を開かせても、彼女は声を上げなかった。――否、彼女は上げられない。

 律が、苦しそうに呼吸を乱して身をよじる。目尻の涙を舌で拭ってやると、蓮の肩に、甘えるように額を摺り寄せた。
 
 蓮ははち切れそうな己の一物を晒すと、ズボンのポケットに入れていた財布からコンドームを取り出し、慣れた手つきでそれに被せた。

 いつの間にか雨はやんでいた。

 律が目を丸くしているのが、暗闇に慣れた視線の先にあった。

「そんなに珍しいもんじゃねえだろ」

 小さく笑うと、今度は不思議そうに瞬きをした。

「痛かったら言えよ?」

 掠れた連の声に頷いた律は、安堵と恐れが混ざったような頬笑みを浮かべ、優しく髪を撫でる彼を信頼して体を預けた。

 激しい雨が甘やかな戯言を掻き消してゆく。



 連はぎょっとした。
 ペニスを抜くと、コンドームが鮮血でまみれていた。

 声も出せず律を見る。
 彼女は肩を曝したまま、毛布の中で健やかな寝息を立てていた。
 
 蓮は最小音量で呻き、後悔の念に苛まれたままコンドームを外した。
 ずしんと重い物が双肩を潰した。

 翌朝、何事もなかったかのように卵のサンドイッチを用意した律と食事をし、シャワーを借りてから部屋を後にした。

 シャワー上がりに律は、男の上半身を見るのが珍しかった――前夜は暗くて細部までは確認できなかったのだろう――のか、あるいは蓮の上腕に入った丸いすじぼりに興味をもったのか、剥き出しの体を熱心に観察していた。

 移動するたびに付いてくる視線に呆れ、仕返しとばかりに彼女の両目を塞いで軽いキスをしてやれば、律は顔を朱に染めて恥ずかしそうに視線を逸らした。

 外は、昨晩の大雨が嘘のような秋晴れだった。
 濡れた緑が陽の光を浴びてキラキラと光っている。

 足早にアパートを遠ざかってから、携帯が新たに記憶した、律のメッセージアプリのアカウントを視認した。これでいつでも連絡を取り合えると思うと胸が弾んだ。
 裏社会に生きる自分が関わっていい女ではないとわかっているのに、育ってしまった気持ちを抑えることができなかった。
 律の優しい笑顔が忘れられない。

 もう二度と、離すことなんてできないと思った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

ヤクザの組長は随分と暇らしい

海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ 店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた 目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして―― 「リカちゃん。俺の女になって」 初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ! 汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

義弟と一夜の過ちを犯したら過ちじゃなくなった

無色
恋愛
 義理の姉弟として出会ったミレイアとラルフは、時を重ねる中で禁断の恋に落ちる。  貴族社会のしがらみを乗り越えて駆け落ちし、共に新しい人生を築く物語。

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

【完結】深く青く消えゆく

ここ
恋愛
ミッシェルは騎士を目指している。魔法が得意なため、魔法騎士が第一希望だ。日々父親に男らしくあれ、と鍛えられている。ミッシェルは真っ青な長い髪をしていて、顔立ちはかなり可愛らしい。背も高くない。そのことをからかわれることもある。そういうときは親友レオが助けてくれる。ミッシェルは親友の彼が大好きだ。

処理中です...