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7.商売敵からのスパイ、スルギの巻3
しおりを挟む俺はあれから一層仕事に励むようになった。あの店に通うことになり、出費がかさむようになったからである。断じてNo.1に成り上がろうと頑張っているわけでは今はない。のだが、何故かいくら稼いでも、いくら客に鞭を打ってもロウソクを垂らしても、No.1には届かなかった。
奴も最近、俺に負けず劣らず馬車馬のように働いているのだ。一体そんなに稼いでどこに使おうというのだろうか。あいつも俺くらい、醜い顔をしているのに。
さて、ということで最近の俺は宿敵の相手(No.1)に勝つことができず、苛々としている。それに加えて、スパイの方も全く収穫はなく、入ってくるのはナナミの良い評判だけで非常に苛立っているのであった。
モモという最年少のキャストからは悪質な嫌がらせを受けているなどという言質を取れると思っていたのだが、実際には『めちゃくちゃ格好いい』と惚気のような話を聞かされたし、他のキャスト達からもそう大差ない話を聞かされた。
キャストによっては途中でヒートアップしすぎて鼻血を出してしまう者もいた。俺は始終シラケた目つきで見つめていたが。
今日は、最年長だというシノというキャストから話を聞こうと思っている。そんな、『格好良い』や『仲間思い』、『マジイケメン』だけで済むと思うなよ。
「え、身体がヤバい・・・・・・?」
「うん!ナナミは身体がヤバい!とにかくマジで」
確かこいつ、最年長だったよな・・・・・・?と不安になるほどのはしゃぎぶりに、俺はやや引く。シノは店で一番と言ってもよいほどの不細工顔で、彼ならば僻みも合わさり愚痴を零してくれると期待していたのだ。が、やはりそれは難しいようである。
シノはカウンターの方を見つめて頬を薔薇色に染めた。カウンターでは店長に並んで立つ、バーテン服を着こなしたナナミの姿が見える。今日は急用のため抜けた分を、ナナミが補っているらしい。しゃかしゃかとシェイカーを振る姿が、なんとも様になっている。カウンター席には俺くらいの背丈の奴が二人――双子だろうか――が座っていて、構ってくれとナナミにちょっかいをかけていた。どちらもかなりの不細工だ。でもナナミはとても愛おしそうに彼らを見つめ、時折頭を優しく撫でていた。
「服着てるとあんま筋肉なさそうって思うじゃん?」
シノが、うっとりと彼を眺めながら話す。
「でもね、脱ぐとけっこう筋肉付いてるんだよねぇ。ほら腕とか、わかる!?少しムチってなってるでしょ!?それだけじゃなくてね、胸筋もすごいし、腹筋も割れててすっごくセクシーなんだ」
「へ、へぇー、そうなんだ」
彼の裸の姿を想像してしまい、自然と喉が渇いてくる。
「それにね、乳首の横に、ホクロがあるんだ」
「ち、ちくびのよこに、ほくろ・・・・・・」
ゴクンッ、と思わず唾を飲み込んだ。
『なんだそれ、エロすぎんだろ!!!』
俺はその日、店を出てから奴の裸しか考えられなかった。盛り上がった胸筋、筋のある腕は逞しく、割れた腹筋に垂れる汗・・・・・・。そして極めつけは、乳首の横にあるホクロ。一体どっちの乳首なんだ。それに、乳首は何色なんだろうか・・・・・・
『っていかんいかん!!何を考えているんだ俺はっ!!』
シノというエロ魔神によって、俺の頭は汚染されてしまったのだった。
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