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9.商売敵からのスパイ、スルギの巻5
しおりを挟む『ちょちょちょちょ聞いてないんだけど』
羨望の眼差しの中姫抱っこで上の部屋へと連れて行かれ、ベッドの上へと座らされた俺。抱っこされたまま階段を上がっていくとき、顔から彼我でそうなほど恥ずかしかった。強がって自分から服を脱ぎだし、『お前も早くぬっ、脱げよ!』とケンカ越しに命令を下すと、ナナミはそれに静かに従いシャツを脱ぎ始めたのだった。
彼は今俺の目の前でシャツを脱ぎ、そのほどよく筋肉の付いた美しい身体を惜しげもなく見せびらかしてきた。
『いや、シノから聞いてはいたけど・・・・・・こんな色気ダダ漏れって、やっぱ聞いてねぇしっっ!!』
色気が、半端ないのだ。シャツがゆっくりと肌から取り去られていく。滑らかな首筋が見え、今度は逞しくやや盛り上がった胸筋が見える。服を脱ぐ手を止めた俺が恥ずかしがっていると思ったのか、そこで奴が後ろを向きながら残りを脱いだ。
『クソッ・・・・・・乳首の色とホクロ、見えねぇじゃねぇか』
と毒づきながら、俺も潔く上半身の服を全て脱ぎ去った。
「ほらっ、だ、抱けよっ」
ベッドに上がり、俺はナナミに言い放つ。本当は緊張で心臓がバクバク言っているのに、去勢を張っている自分が滑稽に思えた。ナナミがボタンに手を掛けたまま振り返ると、俺の姿を見てその動作を止めた。開いたシャツの間からは、ギリギリ胸の頂は見えない。じっと俺のことを見たまま微動だにしないため、俺は今までしていた緊張が一気に馬鹿らしくなった。
「なんだ、ここで怖じ気づいたのかよ」
『やっぱ、言うだけか。こんな不細工、抱く気なんてないんだ』
悪い評判のネタを得られたはずなのに、何故か残念な気持ちが襲ってくる。喜ばしいはずなのに、先ほどまで期待を抱いていた自分が哀れに思えてきた。
ベッドから降りよう、そう思って身体を支えていた手に力を込めたとき、ナナミがベッドに上がり込んできていきなり俺の足を広げてその間に入った。
「っは!?え、ちょっ、何してっ」
いきなり何をされるのかわからず、バタバタと足を動かす。ナナミは表情を変えず、バタつかせる俺の足を掴んで静止させる。
「いきなり前からとかっ何考えてっ――!!」
「暴れないで」
「ひっ!」
手で退かせようと腕を伸ばすと、すぐに手首を掴まれベッドに縫い付けられてしまった。顔を近づけられ思わず悲鳴を上げてしまう。
掴まれた腕を振りほどこうとするも相手の方が力が強く、抵抗を諦めるとしばらくして手が離れていった。何をされるのかわからず、恥ずかしさと恐怖に目を瞑っていたら、ナナミの手が足に触れ、次の瞬間足先がふっと軽くなった。
「えっ、靴・・・・・・?」
目を開けて足下を見ると、彼はなんと俺の靴を脱がせていただけであった。
「俺のベッド、土足厳禁ですから」
そう言って紐を解いてもう片方の足からもブーツを抜きとられ、重い靴で覆われていた足がすぅすぅした。それに一人称が“私”から“俺”へと変わり、言葉遣いも少しだけ崩れたことに、またまた心臓がどきっとしてしまった。
靴を脱がせ終わったナナミが俺の上に覆い被さり、顔の両横に手を付かれて閉じ込められる。真正面から見つめられ、まるで心臓が身体の皮を突き破って鳴り響いているようで、すごく鼓動が煩い。シーツを握る手の平には、汗も滲んできた。あまりにもじっと見つめられることに居心地が悪くなり、顔を横に向けて目を逸らす。
「あっ・・・」
ナナミの手がするりと俺の手の平に滑り込み、シーツの上でやんわりと握られた。驚いて逸らした目をナナミに向けると、鼻で笑われ、挙げ句の果てには『かわいい』とさえ言われた。
「うわっ!」
上から見下され、加えて笑われたことにプライドが刺激され、俺は上半身を思いきり起こすと突然の動きに油断していたナナミに馬乗りになった。
「あんた知らないと思うけど、俺SMクラブでSのNo.1なんだよね。だから――」
『覚悟してよね』と舌なめずりをしながら押し倒したナナミを見下ろした。見上げられることに、ぞくぞくと背筋に電気が走る。これだよこれ。この感じ。しかも押し倒されて俺を見上げているのは、一生に見れるかどうかの美しい男。快感で一瞬、漏らしそうになってしまった。
するり、と手を胸に滑らせ脱げかけのシャツをはだけさせる。そして手を肌の上に滑らせながら、その薄いピンク色の乳首をかすめた。
確かに。シノの言っていた通り、左の乳首のちょうど斜め下辺りにホクロがあった。その存在がなんとも言えないエロさを醸し出している。
ごくり、と無意識の内に唾を飲み込む。何をされるのかわからず不安そうに見上げてくるナナミを見て、興奮が股間を刺激してきた。
動かないように両腕を押さえつけ、顔を乳首に近づけていき、ぺろっと一舐めすると、彼はくすぐったそうに顔を顰め、小さく呻いた。反応を覗きながらぺろぺろと左乳首を嘗めていく。『んん、んっ・・・・・・』と低い吐息を聞きながら左乳首を舐め続け、俺は腕を押さえていた左手をナナミの右乳首へと滑らせた。
「イッ!」
ぎゅっと摘まむと頭上で小さな悲鳴が上がる。俺は気分が良くなり、再び左手に力を入れた。
その時はまだ信じていた。俺がこの場を支配しているのだと。俺は、生粋のSなのだと――・・・・・・。
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