結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

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本編

二十三話 特定

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「内通者っすか?」
「そー」
「それってどういう……」
「お前、名前なんだ?」
「フィンっす!」
「よしフィン、疲れた、物陰に隠れるぞ」
「はいッ」

 外に出て確認した後、近くの建物に向けて走り飛び込むように壁を背にし、座り込んで息を吐くカイル。
 体力が、あんまりない。
 あぁそうだとも、体力はない、そして付ける気もない。
 じゃなきゃ移動に空飛んだりしないさ、今までそれでどうにかなっていたんだから仕方ないじゃないか。

 さっきまでは無理矢理体を動かして走ってたが、正直足は痛い、喉の奥から鉄の味がする、魔法がないとかマジで無理だ。
 早急にどうにかするしかないと、地面に細々と霧散しない程度の魔力を流し込んで、解除を試みているが、時間がかかりそうだ。
 もうこの魔法を発動してる魔導士を探し出して、殺した方が速いんじゃなかろうか。
 そうだ、殺そう。

 殺意に燃え滾るカイルに、フィンは怯えたような反応をする。
 とてもカタギには見えなかったので、裏稼業の人間を通り越して、正直殺人鬼とか飢えた狼とかに分類されるような目だので。おっそろし。
 目を逸らしてスーッと息を吸ってから、フィンはカイルに向き直って問いかける。

「それで、内通者って?」
「この城のこれは、間違いなく俺対策だろ」
「マァ、確かに、魔法封じはそれっぽいですけど」
「この地面の奴もだ」
「へぇ、凄いっすね」

 あっさりと、危機感とかそういうのが全くない返事。
 ちょっとイラっとしたカイルは、こいつの腹の中に詰めれるだけの爆弾をねじ込んで、敵の真ん中に放り込んでやろうかと一瞬思った。
 一瞬だけね、人間爆弾よりも有用な使い方はあるもの。
 自爆特攻させるのは最終手段でいいだろう。

「俺とあいつ、あの、ライ、ライナルト」
「一瞬名前忘れてました?」
「兎に角、ライナルトとはどっちがクーデター鎮圧に向かうかはじゃんけんで決めたんだよ」
「じゃんけんっすか……」
「そしてあいつがいない間も、あいつの姿を模して、いないことがばれないようにしてた」
「ですね」
「つまり、ある程度内部に詳しい人間が今回の指揮をしている可能性が高い」
「指揮してる側っすか? 情報流しただけじゃなく?」
「上の遺物があれば、下の魔法陣はいらない、なのに張ってるってことはそういうことだろ」
「なるほど」
「つまり、明らかに俺個人を狙って対策してる」
「魔法封じしてるのに、陛下は違うんすか?」
「あいつは物理攻撃も強いだろ」
「確かに……!」

 ようやく納得したらしい様子に、カイルはめんどくせぇなぁってなった。
 なぜこんな、一から百まで全部説明しなきゃいけないんだ、察しろよ頭付いてんだろ、もの考える能力がないのか。
 叩いたらカランコロンって音が鳴りそうな軽い頭しやがって、泥を代わりに詰めて重くしてやろうか。
 イラついて色々言いたい言葉を、ギリギリのところで押しとどめた、これ以上は会話が面倒だし。

 なお、これに関しては今まで真面に会話しないか、相手が全部言わなくとも察する相手だったってだけで、これが普通なのだが。
 世間一般の普通とか平均とか、カイルにとってはそんなのどうでもいいので考慮することはない。

「これからどうするんすか?」
「一番やりたいのは、この陣を術者を殺すこと、陣の解除が難航して苛立ってきた」
「それは流石に、難しいんじゃないすかねぇ」
「だから、別の方法としてひとまず遺物をどうにかする」
「どうするんすか?」
「この陣の範囲と、あの遺物の範囲とじゃ、この陣の方が狭いから、ひとまず範囲外を目指したい」
「それでどうにか出来るんすか?」
「出来る」
「なるほど、でも囲まれてますよ」
「見りゃわかる」

 だから、無理矢理突破する。

 左腕に付けている遺物の腕輪、それに魔力を流し中からものを取り出す。
 魔法は使えなくても、この程度なら出来るらしい。
 取り出した赤い透き通った球体、一見堅そうだが、握りしめると簡単に歪む何とも不思議なソレを手に持つ。

「ア、その遺物は知ってる、フルェゴっすよね」
「よく知ってたな」
「昔読んだ図鑑に載ってて、かっこよかったんで」
「爆弾っていいよな、派手で、俺も好き」

 さてこの遺物は、とてもわかりやすく派手な爆弾の遺物だ。
 比較的簡単に見つかる、多分昔は普通に量産されてた類の物、扱いが簡単で威力も高いので、一定の需要があり広く知られている部類。
 建物の取り壊しとか、鉱山でも使われてる、そしてもちろん一番活用されてるのは戦場である。

 使い方は簡単、魔力を籠める、投げる、爆発する。
 以上。

 壁から顔を出し、取り囲む連中に向かって一切の迷いなく投げる。

「よし道が出来た」
「あんた悪魔すか?」

 ドゴンッというデカい爆発音の後、黒い煙と衝撃、負傷者の呻き声や混乱してるらしき叫び声を聴いたカイル。
 けれどそんなもんは一切気にせず、上手い事道が開いたと上機嫌で立ち上がって再び走り出し、後ろからはフィンガちょっと引いたような声をあげながらもついていく。
 そんなフィンも、途中で人間の部位っぽいものを踏んでも一切気にせず進むので、正直カイルに何か言えるほど善良ではないが。

***

「話を戻すが」
「それこの状況じゃないとダメっすかねッ!?」
「俺が話したいと思ったタイミングが最良なんだよ?」
「そーですか!」

 現在、カイルが守護の遺物を発動させ身を守り、フィンが剣を抜いて周囲を囲む敵を制圧してるところだ。
 残念ながらこの遺物は一人用なので、フィンは自力で攻撃を防ぎ、そしてカイルが進むための道を作る必要があった。
 そのために四方八方から斬りかかられてはその件を弾き、防ぎ、そして隙を見ては相手を切り伏せる。
 素晴らしい腕前だが、流石に相手が多過ぎて劣勢だった。

 皇宮の敷地内の、大分端の方までは来れたが、流石に爆弾が尽きた。
 というか、流石に広すぎはしないか、もっと狭くていいだろ。
 無駄に広いから必死に走り回ることになるんだよ、全部終わったら犬小屋くらいに縮小してやる。
 そう決意したカイルは、ゆっくり進みながらフィンに声を掛ける。

「内通者だが、特定はそこまで難しくはない」
「と、いうと?」
「まず考慮すべきは俺の能力を封じれるくらい知っていること、ある程度関りがあった相手ってことになる」
「魔導士とかに限定しなくていいんすか?」
「魔導士じゃなくとも魔法を勉強することはできるし、勉強すれば知識は身に付くだろ」
「確かに……」
「その上で、この城の中を自由に動くことが出来て、ライナルトが出発したことを知っていて、まだ地下で寝てない人間」
「大分限定されますね」
「だから言ってるだろ、あとこれは条件に含むには当てはまる人間が多過ぎるけど、ライナルトに恨みがある奴」
「いっぱいいますよ?!
「いっぱいいるんだよなぁ」

 ライナルトが恨みを買い過ぎて、この条件だけじゃ特定できないのが一番の問題なのかもしれない。
 やはり即位の仕方が良くなかったんだろうな。
 そそのかした本人であるカイルは、そんな自分の過去を棚に上げてライナルトの行いに難色を示した。

 そんなカイルの言葉を聞いて、何か思い当たる相手がいるような気がしたフィンがちょっと思案するように顔を伏せる。
 前見て無くても的確に攻撃を避けるのは、一体どんな特殊な技能なのだろうか、魔法は使えないから、違うとは思うんだが。

「ルイス!」

 ハッとしたように顔を上げたフィンは、思い浮かんだのは人物の名前を叫ぶ。
 今朝に地下に寝かせてない人間で、カイルの能力を知ってるくらい近くに居て、そしてこの城で自由に動き回れて、ライナルトに不満がある人物。
 その条件を聞いたフィンには、その一人しか思い浮かばなかった。
 なので叫んだわけだが、対してカイルは怪訝そうな表情を浮かべる。

「誰だそいつ」

 全く心当たりがなかったので。
 というか他人の名前を覚えてないだけだが。
 なのでそんな、名前をいくら叫ばれたところで脳内で特定の人物とイコールで結ばれない。
 もっと、こう、特徴とかそういうのを言って欲しいんだよ。

「侍従長っすよ! あんたが来たばかりのこと連れまわしてた!」
「あぁ、そいつか」

 ようやく腑に落ちたカイルは、すっきりとしたような顔で頷いた。
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