結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

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本編

二十二話 襲撃

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 最小限の、出来る限り高速で移動できる程度の人数を集めて出発しようとしたライナルト。
 今回はジークが目覚める前に問題解決を目的としている為、つまり迅速な対応が必要だった。
 勿論ジークの眠りに関しては、ライナルトが城の宝物庫からとっておきの遺物を持ち出して、特定の条件下以外では目覚めないようにしているが。
 けれども、あんまり寝たきりというのも体に良くないし、さっさと終わらせたいから準備に時間なんてかけてられないのだ。
 なのでこう、兵を集め武器を集め、色々な派手な演出とかはせず、というか皇帝が出ているなんて事実は隠している。

「そうだ」

 そうして、いざ出発ってなったライナルトを見て、カイルがつぶやいた。

「これ持っていきな」
「あ?」

 そんな言葉と共に、何か、きらっと光るものを投げ渡されたライナルトは、反射的にキャッチし何だこれと首を傾げる。

 それは、透明な水晶、のような何かだった。
 とんでもなく透明度が高い、手に持ってなきゃ一見、そこに何かがあると気付けないほどくっきりと、それを握りしめた手を透かしていた。

「なんだ、これ」
「ちょっとした、あれ、とても珍しい遺物」
「どれだよ」
「おまもりというか、保険というか、そこら辺の何か」
「要領を得ない説明だな」
「一回限り使い捨て転移装置」
「おぉッ、わかりやす」
「ちょっと気になるから、使ってみてよ」
「……これは、使って安全なヤツか?」
「ハハッ」
「誤魔化すな」
「普通なら」
「普通じゃないなら安全じゃないのか」
「ハハッ」
「笑うな」
「さっさと行きなよ」

 手をひらひら振って、そのまま城内にもどるカイル。
 因みに、先ほど渡した遺物は対となる水晶の近くにしか転移が出来ないという条件があり、なので対が海の底に沈んでたら海の底に出て普通に死ぬ。
 そして、ライナルトに渡した物の対となる水晶は当然カイルが所持した。
 保管場所はいつも通りに遺物が作り出した異空間。
 そこには本来生きている生物は入れることが出来ないんだが、もし遺物の力で入ることになったら、果たしてどうなるのだろうか。
 その疑問がちょっと前からあり、けれど自分で試すのは色々躊躇していたので今回ライナルトに渡してみた。

 もし、向こうで何かあったら是非とも使ってみて欲しいというちょっとした優しさと、知的好奇心による行動だった、悪意は全くない。

***

 ライナルトの出立から暫く経った頃。

「あの……」
「……」
「あの!」
「……」
「あの、ちょっといいですか?」
「好きに言ったらいい、興味があったら聞いてやる」
「はい」

 玉座。
 国のトップ、帝国の皇帝が座すための席、その席の上に座ったカイル。
 玉座の上というのはつまり、背もたれの枠だ。
 その枠に座って、足をぶらぶらさせているカイルに、近くに控えていたライナルトの側近が恐る恐る声を掛けた。
 話しかけていいのか迷ったけど、流石に言いたいことがあったのだろう。
 なんで玉座の背もたれに座ってるのかとか、城の人間を眠らせて地下に転がしたり、城全体に色々細工したり。
 国家転覆でもしようっていうのだろうか、今この城の主いないし、狙い目だものな。
 もしそうだったら、ライナルトとカイル、どちらの側に付くべきか考える必要があるので、真意を聞き出したい。
 側近の個人的な意見としてはどっちも死ぬ程怖いが、まだ運営している国で実際生活したことのあるライナルトの方がいいかなって感じ。

 なのでホント、一体何がしたいのだろうかと聞こうとして、でも答えてくれるか分からないから黙ることにした。

「あの……」
「……」
「外が、騒がしくないですか?」
「そうだな」

 なのだか外に違和感を感じて、もう一度、気を取り直して声を掛けてみた。
 そしたら案外、あっさり返事が返ってきたもので、ちょっと驚いて馬鹿みたいに目を開いてカイルを見る側近。
 カイルはそのアホ面を見て、それから外を見て、床を見て、厄介だなぁ呟いた。

 外には空から、光るベールのような物が上から被され、地面は分かりづらいがほんのり魔力の気配。

 攻め込まれたな。

「お前」
「はいっ」
「逃げるぞ」
「はい?」

 返事を聞く前に玉座から飛び降り、駆けだしたカイルに側近は驚いて。
 けれど驚きながらもその後に続いて走る、命令を聞いたら、考えるより先に体が動くようになってるんだな。
 皇帝の傍に仕える近衛なだけはある、素晴らしき忠実さ。
 目的地すら知らんけど、走れと言われれば倒れるまで走るし、殴れと言われれば相手が死んでも殴る、それが出来たのでライナルトの近くに置かれていたんだろうな。
 なので、カイルの行動に少し疑問を抱いたが、真意を問いただすなんてことは一切せず、理解できないながらも黙って走る。

「お前、魔法は使えるか?」
「いえ、恥ずかしながら魔法はあんまり」
「誰が魔法をどのくらい使えるって聞いたんだ、今魔法を行使できるか聞いてるんだ」
「すみません!」

 走りながら、確認するカイルは魔法が使えなかった。
 正確には、体内には魔力があるが、体外に放出すると一瞬で霧散して魔法という形がとれないって方が正しいか。
 これに関しては既にある程度予測は出来ていたが、外に出て空がしっかり見えるようになったことで、残念なことに原因が特定できてしまった。

「パクフェルトゥス」
「何です? それ」
「有名な、遺物の名前だ、完璧な平和って意味だったかな」
「へぇ、そうなんですね」
「かつてとある種族との争いにおいて、劣勢に立たされた人間の、勝利に貢献した、遺物の一つとされてる」
「平和?」
「敵対者を無力化すれば平和に殲滅できるだろ」
「平和……」
「存在だけは知られていたが、今までどこにあるか不明だった」
「へぇ」
「お前、頭の回転が足りないって言われないか?」
「突然酷い」

 何の事を言っているのか全く理解していないらしい返事に、こいつにこれ以上説明しても無駄かもしれないと思ったカイル。
 でも全く理解しないままというのも問題がありそうなので、仕方なく続けてやった。

「あの遺物は、効果範囲内での魔法の使用を封じることが出来る」
「それは、凄いですね」
「今この城に、それが使われてんだよ」
「……マズくないすか?」
「とてもマズい」

 とてもマズい状況だった。
 カイルの戦闘能力は魔法依存だ、勿論遺物とかも使えはするが、自分で魔法を使った方が応用は効くし便利だ。
 そんなカイルが魔法を封じられた、襲撃に備えて城の人間は地下に転がしてるが、つまり現状真面な戦力が隣の馬鹿しかいないことになる。
 でも、それだけなら別にいいのだ。

「けどマァ、同時に有名だから対策手段も知られている」
「どうするんすか?」
「許容量を超える魔力で押し切る」
「荒業だ……」
「つまり、当時争っていた相手はそんな荒業が出来たってことだな」
「今の状況だと?」
「ちょっと、厳しいかな」
「そんな……ッ」

 勿論だが、許容量を超える魔力は、普段のカイルならどうにか出来る。
 けれど今難しいと言っているのはつまり、ちょっと魔法だけでなくカイルの魔力にも問題があるってことだ。

「この、地面に浮かんでる魔法陣あるだろ」
「ありますね、滅茶苦茶デカいのが」
「まずはコレをどうにかする必要がある」
「ほへぇ」
「アホみたいな返事をするな」
「はいっ」

 問題がこの遺物だけなら、カイルは対抗できる。
 そう、出来るのだ、本来なら。
 この足元の魔法陣さえなきゃ。

 カイルの魔力は大地から直接くみ取ってるからこそ、ある種無尽蔵だ。
 つまり、今どうしようもないのは、その大地から魔力をくみ取れないってことで。
 その原因がこの魔法陣だった。
 魔法がそもそも使えないから分からんが、多分この陣の中だと土属性の魔法も使えなくなってる。

 魔法を封じる遺物に、大地との繋がりを発つ陣。
 なんというか、誰への対策かが一発で分かってしまうのは、カイルの自意識過剰じゃないだろう。
 つまりは。

「内通者がいるな」

 それも、かなり身近に。
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