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本編
二十一話 謝罪
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「大変申し訳ございませんでしたッ」
血を吐きそうな声を出して、ジークが頭を下げる。
上半身と下半身がほぼ直角、九十度に曲げられた腰。
「かくなる上は、単身突入してこの命と引き換えにして……!」
とんでもない覚悟と悲哀の滲んだ言葉に、カイルもライナルトもちょっと困った。
どうにか下がった頭上げられないかなって肩を押してみたり、腰に抱き着いて引っ張ったりしているのに、一向に姿勢が変わらない。
勿論二人はジークの体を痛めない方に細心の注意を払っているが、それでもびくともしない。
素晴らしき筋肉と体幹である。
「別に気にしてないから、頭上げな?」
「本当に、どう償えば……」
左からちょっと困惑した顔で肩を押すカイルの言葉を、けれど一切効かないジーク。
「いいから、お前に責任なんざ問わねぇから」
「かくなる上はこの命で……ッ」
右から腰を抱えながらの宥めるようにライナルトの言葉も聞こえていないかのようだ。
そんなジークに、二人は顔を見合わせ、取り敢えず気絶させるかと意見を一致させた。
これ以上は話を聞けそうにないし、寝て目が覚めたら冷静になってるかもしれないし、あと寝てる間に問題を解決したら夢ってことにして誤魔化そう。
無言で頷き合った二人は、ライナルトがみぞおちを狙い、カイルが首元に手を添える。
手慣れた二人の連携により、秒で落ちたジークは静かにソファに寝かせられた。
さて、ではなぜジークがあんなことになっていたのか。
きっかけはちょっとなんというか。
一言で結論だけいうなら、クーデターが起こった。
その事実を聞いた時、カイルはただ、等々起こったかぁ……と思った。
いつかそうなると思ってた、だって先代の皇帝も皇后も、その間の子供も殺してるんだから。
そりゃライナルトを、消してやろうって画策する人間だって少なくない。
ただちょっと、今まで動くためのわかりやすく、都合のいい理由がなかったってだけで。
何かしらきっかけとか、理由が出来たらすぐに攻め込んできそうな一派がいたのだ、今回事を起こした中心である先代の皇后の実家とかね。
後はほら、王国が気に入らない人間とか、戦争の終結が気に入らない連中とか。
嫌われてんなぁ。
そして今回、その理由というか、名分というか、ちょうどいい神輿が見つかったのだ。
それが、先帝の隠し子。
先帝がばら撒いた種で、見事一発ぶち当てて出来ちゃった子供は、母親がちょっと平民だった為に表に出すのは気が引けて。
息子も既に二人いたし、さらに一人増やして話をややこしくするのは良くないって、考えられたらしい。なら手ぇ出すな話だけど。
因みに、その相手はαで、子供もαだった。
凄いな、分かってるだけでα率六割越え、素晴らしい成果。
血筋が、良いんだろうな。
そりゃ勿論皇族だもの、生まれからして他のβとは違うんだよな。
そんなワケだから、余計に表に出せなくなっちゃったその子供に、けれどちょっと思うところがあったのか、先帝はこっそりと色々援助とかしていたらしい。
家を与えたり、生活費とか諸々与えたり。
けれどこっそりだったとはいえ、金の流れがあれば察する奴はいる。
そのうちの一人が、ジークだった。
隠し子的な、そういう人間がいるって事実に気付いたジーク、色々考えた結果こっそり見付け出そうとしたのだ。
ライナルトにバレたら殺そうとするかもしれないし、というか確実に殺すと確信してた。
確かにそれも、一つの手ではあるだろう、手っ取り早く脅威を取り除くという目的なら素晴らしい方法だ。
けれど、ちょっと、ね。
ジークとしてはちょっと、ただの子供が、たまたま先帝の子供に生まれちゃったってだけで死ぬってのは、流石に可哀そうだなって思ったので。
いち早く秘密裏に見付け出して、どこか遠い国にでも行かせようかなって思って探していたのだ。
優しさっていうか、慈悲っていうか、憐れみというか。
そんな極々個人的な考えで動き。
結果ジークより先に見つけた連中の手で、その子供は神輿に担がれクーデターが起こったって事だ。
その事実を報告して、ジークは申し訳なさとか、わが身の愚かさとかで感情が滅茶苦茶になり、錯乱した結果が先程の行動だった。
もう責任取って単身乗り込み、件の隠し子を殺して自分も死のうと、ちょっと本心から殺意漲らせていたってわけだ。
マァ今回の件、ライナルトとしてはなっちゃったモンは仕方ないって感じだし、カイルもあ~ぁって感じ。
二人とも、別にジークを責める気は全くないし、そんな気にする必要もないし。
マァその隠し子は死ぬだろうけど、ライナルトたちが殺さなくとも、今回のこれが成功しても、死ぬまで飼い殺されるか傀儡か。
「行くか」
「仕方ない」
仕方ないので、鎮圧に向かう事にしよう。
迅速な鎮圧を行うため、どちらかが直接向かう必要がありそうだ。
だってほら、今この国でこの二人が間違いなく最高戦力だし、これが一番早いさ、間違いなく。
けれど、どちらかが向かうんならどちらかは留守番しなければならない、だってその間に皇宮攻められるかもしれないし。
なので、二人はどちらが向かおうかとちょっと考えて、拳を握りしめ見つめ合った。
「じゃん」
「けん」
ぽん。
と出したのはパーとチョキ。
ライナルトがパーで、カイルがチョキだ、つまりカイルの勝ち。
勝ったカイルはその手を天に向けて掲げ、ライナルトは五指を広げた手をジィっと見つめた。
「勝った、勝ち!!」
「グーの筈だった! グーの筈だったのに!!」
こうして、ライナルトはクーデターの鎮圧に向かい、カイルが留守番する事となった。
血を吐きそうな声を出して、ジークが頭を下げる。
上半身と下半身がほぼ直角、九十度に曲げられた腰。
「かくなる上は、単身突入してこの命と引き換えにして……!」
とんでもない覚悟と悲哀の滲んだ言葉に、カイルもライナルトもちょっと困った。
どうにか下がった頭上げられないかなって肩を押してみたり、腰に抱き着いて引っ張ったりしているのに、一向に姿勢が変わらない。
勿論二人はジークの体を痛めない方に細心の注意を払っているが、それでもびくともしない。
素晴らしき筋肉と体幹である。
「別に気にしてないから、頭上げな?」
「本当に、どう償えば……」
左からちょっと困惑した顔で肩を押すカイルの言葉を、けれど一切効かないジーク。
「いいから、お前に責任なんざ問わねぇから」
「かくなる上はこの命で……ッ」
右から腰を抱えながらの宥めるようにライナルトの言葉も聞こえていないかのようだ。
そんなジークに、二人は顔を見合わせ、取り敢えず気絶させるかと意見を一致させた。
これ以上は話を聞けそうにないし、寝て目が覚めたら冷静になってるかもしれないし、あと寝てる間に問題を解決したら夢ってことにして誤魔化そう。
無言で頷き合った二人は、ライナルトがみぞおちを狙い、カイルが首元に手を添える。
手慣れた二人の連携により、秒で落ちたジークは静かにソファに寝かせられた。
さて、ではなぜジークがあんなことになっていたのか。
きっかけはちょっとなんというか。
一言で結論だけいうなら、クーデターが起こった。
その事実を聞いた時、カイルはただ、等々起こったかぁ……と思った。
いつかそうなると思ってた、だって先代の皇帝も皇后も、その間の子供も殺してるんだから。
そりゃライナルトを、消してやろうって画策する人間だって少なくない。
ただちょっと、今まで動くためのわかりやすく、都合のいい理由がなかったってだけで。
何かしらきっかけとか、理由が出来たらすぐに攻め込んできそうな一派がいたのだ、今回事を起こした中心である先代の皇后の実家とかね。
後はほら、王国が気に入らない人間とか、戦争の終結が気に入らない連中とか。
嫌われてんなぁ。
そして今回、その理由というか、名分というか、ちょうどいい神輿が見つかったのだ。
それが、先帝の隠し子。
先帝がばら撒いた種で、見事一発ぶち当てて出来ちゃった子供は、母親がちょっと平民だった為に表に出すのは気が引けて。
息子も既に二人いたし、さらに一人増やして話をややこしくするのは良くないって、考えられたらしい。なら手ぇ出すな話だけど。
因みに、その相手はαで、子供もαだった。
凄いな、分かってるだけでα率六割越え、素晴らしい成果。
血筋が、良いんだろうな。
そりゃ勿論皇族だもの、生まれからして他のβとは違うんだよな。
そんなワケだから、余計に表に出せなくなっちゃったその子供に、けれどちょっと思うところがあったのか、先帝はこっそりと色々援助とかしていたらしい。
家を与えたり、生活費とか諸々与えたり。
けれどこっそりだったとはいえ、金の流れがあれば察する奴はいる。
そのうちの一人が、ジークだった。
隠し子的な、そういう人間がいるって事実に気付いたジーク、色々考えた結果こっそり見付け出そうとしたのだ。
ライナルトにバレたら殺そうとするかもしれないし、というか確実に殺すと確信してた。
確かにそれも、一つの手ではあるだろう、手っ取り早く脅威を取り除くという目的なら素晴らしい方法だ。
けれど、ちょっと、ね。
ジークとしてはちょっと、ただの子供が、たまたま先帝の子供に生まれちゃったってだけで死ぬってのは、流石に可哀そうだなって思ったので。
いち早く秘密裏に見付け出して、どこか遠い国にでも行かせようかなって思って探していたのだ。
優しさっていうか、慈悲っていうか、憐れみというか。
そんな極々個人的な考えで動き。
結果ジークより先に見つけた連中の手で、その子供は神輿に担がれクーデターが起こったって事だ。
その事実を報告して、ジークは申し訳なさとか、わが身の愚かさとかで感情が滅茶苦茶になり、錯乱した結果が先程の行動だった。
もう責任取って単身乗り込み、件の隠し子を殺して自分も死のうと、ちょっと本心から殺意漲らせていたってわけだ。
マァ今回の件、ライナルトとしてはなっちゃったモンは仕方ないって感じだし、カイルもあ~ぁって感じ。
二人とも、別にジークを責める気は全くないし、そんな気にする必要もないし。
マァその隠し子は死ぬだろうけど、ライナルトたちが殺さなくとも、今回のこれが成功しても、死ぬまで飼い殺されるか傀儡か。
「行くか」
「仕方ない」
仕方ないので、鎮圧に向かう事にしよう。
迅速な鎮圧を行うため、どちらかが直接向かう必要がありそうだ。
だってほら、今この国でこの二人が間違いなく最高戦力だし、これが一番早いさ、間違いなく。
けれど、どちらかが向かうんならどちらかは留守番しなければならない、だってその間に皇宮攻められるかもしれないし。
なので、二人はどちらが向かおうかとちょっと考えて、拳を握りしめ見つめ合った。
「じゃん」
「けん」
ぽん。
と出したのはパーとチョキ。
ライナルトがパーで、カイルがチョキだ、つまりカイルの勝ち。
勝ったカイルはその手を天に向けて掲げ、ライナルトは五指を広げた手をジィっと見つめた。
「勝った、勝ち!!」
「グーの筈だった! グーの筈だったのに!!」
こうして、ライナルトはクーデターの鎮圧に向かい、カイルが留守番する事となった。
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