結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

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本編

三十二話 ありえるかもね

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「つまり、なんです? まず初夜に寝室を出て行こうとして、そしたら魔法で拘束されて止められたと」
「そうそう」
「そしてベッドに押し倒されて服破かれ噛まれて」
「あぁ」
「ベッドから蹴り落された、と」
「やっぱあいつやべぇ奴だよな」
「貴方も大概ですよ」
「は?」

 ライナルトの言葉を聞いたジークは、たっぷり数秒かけて情報を咀嚼する。
 一体何があったのか、否、聞いたけど、聞いた上でちょっと理解が追い付くまでに時間がかかったのだ。
 そんで、単語ごとに区切って聞きなおし、情報を整理した上で、ジークがまず思ったのは、ライナルトが噛まれた側なのかだった。
 あと気に入らないから初夜に寝室出ていく方も、だからってその相手を拘束する方も、普通にどっちも大概酷い。

 そしてこの二人、間違いなくそのことを一切反省してない。
 相手の行動に思うところはあっても自分の行動を悪いとは全く思ってないだろう、賭けてもいい。

 なんせこの二人、反省とか謝罪がもうびっくりするくらいできない。
 否、カイルはまだ反省とかは出来るかもしれないが、謝罪は出来ないし、ライナルトは本当に反省も謝罪もできない。

 例えば少し前に、何故かクーデターの制圧で一人で歩いてたり、襲撃される可能性を考慮してたくせに城内の人間を無断で避難させたりした時。
 そう、この間のクーデターの時だ。
 なぜそんな危険を冒したのかとか、ちょっと色々問い詰めた時の話。

 目が覚めて、なんか周りの人間が床に寝息立てながら転がってるのに、自分だけベッドに寝かされている時点でちょっと、あれだなってなったけどさ。
 その寝かされてる空間をざっと見て、崩れた瓦礫が転がるそこが、地下っぽいなとアタリを付けて、そのまま外に出た。
 後から聞いた話だが、その時に目覚めた順番に誤差があったのはどうも、その遺物は使う人間によってかかり方に違いがあるらしい。
 使用者の欲求の強さによって、眠らせる深さが違い、そしてライナルトに遺物を使われたジークはカイルに遺物を使われた他の連中より眠りが浅かったらしい。

 そのために、遺物が壊れて直ぐに目が覚めたジークは、遺物が壊れた後も普通に眠ってた連中の横を素通りしてその部屋から出て地上に向かった。
 そしてなんか、大分血に塗れて向かい合ってるライナルトとカイルの二人を見つけることになる。
 あの時の驚きと言ったらもう、本当に心臓に悪かった。

 否だってほら、あの二人は何というか、間違ってもケガとかしそうにないって思ってたので。
 結構本当に焦って、急いで駆け寄ったジークの姿を見たカイルが、こちらも目を見開いて駆け出して。
 そのままジークを通り過ぎて行った後ろ姿は大変に元気そうだったし、その後は遺物の残骸を見て元気に嘆き悲しんでいたから、元気だったんだろうな。
 ライナルトの方は様子が大分おかしかったけど。

 そんな状態でも、流石にその場で直ぐに問い詰めたりは出来ないし、ひとまずちょっと様子がおかしい二人を引きずって上まで向かい。
 色々と後始末とか、処理とかを終わらせたっけか。
 そこまで前じゃないが、今日までが結構怒涛の勢いで過ぎていったからか、懐かしむような感情になったジーク。

 急いで終わらせないといけない事、例えばなんか武装して城内にいる連中を捕縛したり、ライナルトが置いてきた連中を呼び戻したりを終わらせて。
 それから、今ライナルトが座ってるソファに並べて二人を座らせて話を聞いたのだ。

 その時の二人は本当に、なぜ自分たちはこんなことにって顔をしていた。
 あと、もしやジークはちょっと怒ってるのか?とも。
 そこら辺が理解できてないっぽいこの二人は、当然ながら何が悪かったのかも一切思いつかず、訳分からんって顔しながら座っていた。
 ジークとしてはその、何が悪いかっていうのを二人が自分で辿り着くまで解放するつもりがなかったので、その時間はおおよそ三時間ほど続いた。

 マァそのうちの一時間ちょいは無言の時間だったし、四十分ほどはカイルがひたすらでもって言い訳するから伸びたわけだが。
 ライナルトの方は流石にある程度の慣れがあったので、言い訳も言いくるめも、話をあやふやにするのも無理って理解して黙ってたけど。
 一時間ほどかけて、カイルの方もそのことに気付いたのか黙り始めて、その結果が無言が続く一時間ほどだ。
 だから欲しいのは無言じゃないんだが、自分が悪いとは一切理解してない二人は、なんかジークが怒ってるっぽいから黙って話を聞いてるって顔して黙ってた。
 最終的に、流石にこれ以上続けるのは駄目かと解放したが。
 多分あの二人には全く響かない数時間だったんだろうな。



 マァそんな感じで、反省しましたごめんなさいが言えないし、言わない為にあらゆる手段を取れる二人なのだ。
 当然その初夜の件だって、気付いたら二人の間で有耶無耶になって今の関係になっているのだろうと察したジークは、どうしたもんかと悩んだ。

 ジークは自分は結構、カイルを理解できてると思っていたので、そんな理解から分析してみると。
 多分、間違いなくカイルの中ではこの婚姻の重さは文字通り紙切れ一枚程度しかない。
 あれは何かあったら離婚するだろうな、そもそも一体どんな事情があってこの婚姻話を受けたのかすら想像が出来ない、レーヴェンハイトの国王がどうにかしたのかな。何か出来そうだな。
 ジークはカイルの事は、国家間の事情とかそういうの本心からどうでも良さそうだと思っていたので。最悪再開して両国滅んでも笑ってそう。

 マァ実際、カイルは国家間の事情とかはどうでもよかったけど、ジークのことは結構気に入ってるので帝国を出ていく気はまだないので、ひとまずは安心していいが。
 もしカイルが帝国を出ていくときはジークを持っていこうとするだろう。
 その場合はライナルトとの間でガチの殺し合いが始まるし、ジークが選ぶのがライナルトだってカイルは知っているので、帝国で過ごす方がマァいいかなって感じだ。
 自国に帰っても楽しくないし。

 そんなカイル側の事情なんざ一切知らないジークは、ライナルトの恋の行く末というものに不安を感じた。
 このまま現状維持で、進展があるとは一切思えなかったし、むしろ放置したら後退しそうだ。

「行動」
「あ?」
「行動しましょう」
「行動?」
「もう何でもいいので、無理矢理迫る以外は多分大体受け流すなりしてくれると思うので、何か行動して、まずはちょっと特別な人間のカテゴリに入るところから始めましょう」
「は?」

 こうして、本人よりも危機感を抱いたジークに急かされることで、ライナルトとカイルの恋路は進展する。かもしれない。
 しないかも。
 しない可能性の方が高いかも。
 だが確実に何もしないよりはマシだろう。



***



 なお、この会話は壁一面が大変解放的な部屋で行われ、その癖防音を怠っていた為。
 いつの間にかカイルに手懐けられていた暗部の人間が、実は盗み聞いていたりした。
 そいつは面白い話を聞いたって感じでそのままカイルのもとに向かい、ちょっとした世間話感覚でぽろっとこぼし。

 けれど話を聞いていたカイルは、寝不足と疲労で脳がポンコツになっており、会話に思考を割くことができなかった為、もうひたすら聞き流した。
 暗部のそいつも聞いてないのかなと思って、そのことは早々に忘れた。

 けれどポンコツながらも大変優秀なカイルの脳は、何も考えずストレートにライナルトはカイルが好きらしいという事実を記憶しており。

 しばらくの時間を置いた後、ふと思い出したその時の会話を理解したカイルが、ライナルトにドストレートにお前俺の事好きなの?って聞くことになり。

 結果。

 パニックになったライナルトにより皇城が半壊する、なぁんて未来があるかもしれない。
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感想 14

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みんなの感想(14件)

ごまもち
2026.01.06 ごまもち
ネタバレ含む
2026.01.06

感想ありがとうございます!
そしてこの二人に対して深く理解していただいてるようで、嬉しいです♪
確かにこの二人はちょっと恋愛とかそういうのとは遠い位置にいるので、自分としてもどうやって恋愛関係にすべきか、ほもそも恋愛感情が湧くのか?と色々考えてました
多分ここからライナルトが色々頑張ってくれると思いますので、恋愛関係はその頑張り次第ですね

解除
トーン
2026.01.04 トーン

いつも楽しく読ませていただいてます!
カイルもメンタルつよいですが、ライナルトもメンタル強くて面白いです!
あと、だいたいオメガバースはオメガが色々不遇な目にあって(カイルも不遇だけど)アルファに助けてもらうというストーリーが多いですが、どうにか一人でやってるので新鮮で面白いです!

2026.01.04

感想ありがとうございます!
メンタルの強いキャラが一般的に見たら悲惨な状況で折れず曲らず我が道を行くのが好きでして
オメガバースだと不遇なオメガがアルファに出会って幸せになるっていうのが多いけど、でも不遇な状況でも自力でどうにかして好き勝手生きていくオメガ主人公がいてもいいじゃないかって思いから実は書きました
なので、そんなカイル面白いと思っていただけて良かったです♪

解除
はなさな
2026.01.03 はなさな
ネタバレ含む
2026.01.03

感想ありがとうございます!

まず首と体っていうのは書いていただいた通り繋がっていないです、首と体を別々に地割れに入れてます
その後に探して切り落としてるっていうのは、どうしてルイスの首と体が別れたのかという回想です
時系列的に、ルイスを探す、首を落とさせる、*後の二人の会話、首と体を地割れに入れる、その後の二人の会話
となっています
わかりずらくて大変申し訳ないです

解除

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